「……」
目覚めると朝の5時。

幸村がまだ起きてなくて安心した。

昨日寝たままの体制で目覚めた。

政宗に抱きしめられたままで。

みるみる顔が真っ赤になって

が政宗を起こさないように、腕の中から離れようとした。

「…う」

寝てるくせになかなか腕が持ち上がらない。

何でだ

「…んん…」

もがいてると政宗の眉が動いた。

「…枕…」

寝言が
…………………私枕!?

「…だ、めだ…こじゅ、ろ…」

私枕に小十郎さんが寝てるのか!?

「引きちぎっちゃ…」

怖っっ!!!!!!!!!!

「おれの…おれの…枕…」
「ひゃ…!!」

政宗が腕に力を込め始めた。

やばい

これはときめき通り越して

殺される

「……おやかた、さまぁ…」
「え」
幸村も寝言。
ホームシックだろうか。

幸村が何度も寝返りをうって

「え」

身体がゆっくり

と政宗の上に

落下。

「ぎゃああああああ!!!!」
「んあ…?枕重い…」
「さすけぇ…柔らかいお団子…おっきい…」
「ちが…幸村さん!!団子じゃねえ!!私だ!!うわああああちょ…それ背中…摘むな!!痛いそれ皮膚!!こらああああ!!!起きろおおおおおおおお!!!!!」

の怒鳴り声で、二人はやっと目を覚ました。




!!申し訳なかった!!」
「…悪かった」
そして起きると同時に謝りだした。

朝食の準備をするの背に向けても謝り続ける。

「怒ってません…寝てたんだから仕方ない…」

幸村は安心したが
政宗はまだ難しい顔をしていた。

…この展開は無いだろう俺…
朝、いつだったかしたように、より先に起きて、の寝顔を眺めて
起きて目が合って赤面するをもう一度見て…

お、お互い照れくさくてぎこちなくおはようって言い合って…

だってそういう展開を期待していたはずだ!!(いえ、別に

なのにこんな痛い思いさせるなんて…!!(い、いえ…だから私は別に…

申し訳なくなってきた。

「っ…!今日は大学行くな!俺と一緒にいよう!!」

幸村がぶはっと飲んでいた茶を吹いた。

「なんでござるかいきなり!!」
「道場は今日はやめだ!!!!一緒に居よう!!」
政宗がに向けて両腕を伸ばした。

「な…俺だってと居たいでござる…!!〜!!」
幸村も両手を伸ばした。
「真似すんな!!」
「真似ではない!!」
「ちょ…こらこら…」

二人が取っ組み合いを始めてしまった。
でもにはライオンの赤ちゃんがじゃれ合ってるような、それに近いものを感じて少し笑った。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、大学には行くよ。もう少しでまた戦国へ行くんだし…」

政宗と幸村がぴたりと止まった。

「そりゃ…」
殿に、会いたいからでござるか?」
「へ?」

がきょとんとした。

「ああ、まあ、友達とも会いたいけど…何より、私は知識蓄える事しかできないから…」

今度は政宗と幸村がきょとんとした。

「知識?俺らの時代のか?」
「必要ないでござる。判らなければ俺たちに聞けばいい」
「違うよ、私は戦えないから…せめて二人が怪我したら、少しでも良い治療が出来るように…」

が少し自信なさげに微笑んだ。

「怪我しないのが一番だけどね。行ってくる!!」

そう言って、は大学へ向かった。

「政宗殿」
「おう、幸村」

「俺たちはこれからのために、強くなることしか出来ぬ」
「判ってる」

二人は道場に向かう。





講義が終わって教室でノートを片付けていると、後ろからぽんと肩を叩かれた。

「よっ」
「よー!!」

お互い笑顔で挨拶。
は朝から元気だ。

「ちょっと時間、いい?」
「もちろん」

友達がにやにやしていたけど、気にしなかった。



ラウンジで向かい合って座る。
が缶コーヒーを投げてきたので、受け取ってお礼を言って飲みながら話した。

「もうすぐ2週間だな。あの2人、行っちゃうんだろ?」
「うん」
「遠いのか?」
「遠いよ。仙台と山梨…長野かな?」
「そうでもないじゃん。新幹線使えばすぐだ」
「そうだけどさ」

そう言って口ごもるに、は不安そうな顔をした。

「…最近、元気ないよな」
「え?」
「いや、なんだか…何か、悩んでるみたいだから」
「うーん、えっと…」

は言葉を選んで話し出す。

「もしさ、自分の居場所が二つあって」
「ん?」
「どちらか一方にしか居る事ができなくなってしまいます」
「うん?」
「そのどちらにも、自分の大切なものがあるんです。失いたくないものがどっちにも、たくさん」
「…」
「けど、どちらかを選ばなきゃならなくて、選んでしまったら選ばなかったほうにはもう一生行く事が出来なくなってしまうんだ。だったら、はどうやって選ぶ?」
「んー…」

が真剣な顔で悩みだした。
いきなりのこんな訳判んない質問に。
…そうなるって、決まったことじゃないのに
時々不安になるんだ。
いつか、今の生活が変わったら、私はどこにいるんだろうって。
どこに、居たいんだろうって。

「天秤にかけるっきゃないだろ」
「少しでも重いほうを?」
「そうだ」
「でも、目に見えない」
「見えなきゃわかんねえのか?」
「…」

つい下を向いてしまった。

「後悔したくなくって、慎重になったら、判んなくなって…頭、痛くなる…」
「…、それ、意味判んない」
「え…?」

の顔を見ると、意外なことに優しい顔をしていた。

「どっちも大切なものがいっぱいあるんだろう?だったら後悔する事があるのは当然だ。どっちを選んだとしても。」
…」

「後悔する覚悟もないんじゃあ、選ぶな。そのまんま悩んでろ。」
「…」

缶をぎゅっと握った。

「…後悔しても、前に進んじまえ。そうすることしか出来ないんじゃねえの?」
「…そうだね…」

…どうしてこの男は、こんなに親身になってくれるのだろう

不思議なほど暖かい。

「…とかなんとか偉そうに言っちゃうけどさあ……心臓に悪いぜ…」
心臓に悪いとか言いながら、彼は頭に手を当てた。

「なあ、そりゃさ、俺の前から居なくなるかもしれないって言ってる?」
「…あの…」
「それは今は、…つらいわ」
「…え?」

そのまましばらくは目をあわすことなく沈黙した。

残っていたコーヒーがぬるくなるまでそのままだった。











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破廉恥叫びの目覚め期待してた方、すいませんっっ…!!
次で逆トリップ編は終了です!!