改めて連絡をとってもらい、が居るらしい部屋に案内してもらった。

「ここ、ん〜…ああ、あれ、居るじゃん、窓際の席」
案内してくれた男は指を差しての居場所まで教えてくれた。

が、友達らしき人間と仲良く喋っている。
周りは全て女。

「礼を言う」
男に向き直って、政宗がそう言った。

「…い、いえいえ、なんだ、あんた、外見によらず礼儀正しいな」
「おう、育ちがいいからな」
「はは!!そりゃあいいや!!」

未来の人間といってもそれほど変わりはないのだと感じた。
むしろ、敵意も何も持っていないから、接しやすい方かも知れない。

明日、今日話をした人間に刀を向けられるかも知れないという危機感は全く無いのだろう。

「お主の、名前を聞いても宜しいか?」
「…あんた、歴史オタク?」
「…おたく?」
「あ、ああ、失礼、気にすんな。俺は
「「お前がっ…!?」」

この男が…!?
今日ここへ来た目的はすでに達成されていたのか…

二人はの素行調査に来たのでも、驚かせようと大学に忍び込んだわけでもない

の口から出た名の男を見に来た

ろくでもない男だったら、それなりの対処をしてやろうと考えていた。

「お二人さんは?」
「…伊達だ」
「さ、真田」
「伊達に、真田ね。縁があるかどうかわかんねえけど、まあよろしく」
下の名までは聞いてこない。
二人は密かに安堵した。

「んじゃ、おれはここで」
軽く手を上げて、が階段のある方向へ歩みを進める。

「え、あの、に、会いはしないのか?」

予想外だった。
仲が良い所を見せ付けられるかと思っていた。

「おいおい、俺は真面目なの。次の講義始まっちまう。によろしく〜」
「は、はあ…」

呆気なく去っていってしまった。
幸村は拍子抜け。
政宗は微妙な顔をしていた。

「…余裕のあることで…明日、が居なくなっちまうかもしれないとか、そんな心配はねえんだな…」
「…そうかもしれぬ…が、うむ、それなりに、良い奴でござった」
「…見た限りではな…」

がしゃん!!

「!?」
「何事!?」
音がしたのはの居る部屋の中から。

敵襲かと、中に踏み込んだ。
まず目に飛び込んだのは

絶句している

口をぱくぱくさせている。
「…不細工だぞ、

の後ろに何かが落ちている。
が氏政へ文を書くのに使っていた筆だ。散乱している。
先ほどの音はあれを落としたものだったのだろう。

「な、ななななな何してんの…」

「え、…知り合い…?」
「ちょ、紹介してよ…」
周りの女は色めきたった目でこちらを見ている。


「ah−…俺たちのことは、まあ、気にすんな」
「すまない…あの、迷惑かけるつもりでは…」

が出していた荷物を片付け始めた。
「え…?」

「腹痛!!」

そういって元気よくこちらに走ってきた。
女友達は驚いた様子でに向かって叫ぶ。

「ちょっと!サボり?」
「下痢!便秘!!」
「どっちだよ!?」
「生理!!」
「堂々と言うな!!」

かばんを肩にかけて、二人の腕を掴んで教室を飛び出した。



階段を駆け上がり、誰も居ない小さな教室に入った。
「…ぜーはー…」
息を切らしているのはだけ。

「す、すまない、、あの、邪魔する気ではなく…」
机に両手をついて俯いて息を整えるの表情は見えない。

「よ、よく来れたね…」
「後ろ、つけてたからな」
「気がつかなかった…」

が顔を上げると、口を結んで、困っているような顔をしていた。
「悪かったよ…勝手に来てよ…」
政宗も素直に謝った。

判っている
は怒っていない

俺たちのことが心配なだけだ

「子をはじめてのおつかいに出す母親って、こんな気持ちかしらね…」
「??」
「何で居場所…あ?さっきのメール…に会ったの?」
「ああ、案内してくれた」
「そっか、うああ、もう、ちゃんと来れてよかったなあ!!偉い偉い!!」
は二人の腕に自分の腕を絡ませて引き寄せた。

「な、んだよ…お前は!!過保護!!」
「はは、未来では立場逆転だな、政宗ど…伊達」
「うっせえな!ある意味小十郎二号だ!」
「光栄です!!」

離れると、今度はは笑っていた。

「んじゃあ一日大学生体験する?」
「だい、がくせい」
幸村がゆっくりと反芻した。
「そう、ここで、学問を学ぶの」
「ふうん、手ぶらだが大丈夫なのか?」
「問題ないよ。次は運動学だから、少しは興味あるかも…?」
「運動学?」
「骨とか、筋肉とか、神経とか力学とか…」
「よく判らぬが、と一緒なら、俺はやってみる」
幸村さんが拳を握り、やる気を見せた。
「あはは!やることなんて特にないけどね!話聞いてメモとるだけ!」
「そ、そうなのか?」
「…侵入して、平気なのか?」
「政宗さんは疑い深いなあ…大丈夫だよ!!」

二人の肩をぽんぽんと叩いた。

後ろの方でこっそり受ければ問題ない。
友達に見つかったら面倒な事になりそうだし…

…この二人、顔が良いからよ…



というわけで、次の時間は教室にこっそり入って

途中で二人は寝ちゃうかもなあ、と軽く考えてたんですがね

「はあ、なるほど…」
「運動と感覚を司る神経がそれぞれあって…脳とつながって…」
「え、ええ、はい…」
「このような解剖図は初めて見る…」
「…ふうん…中枢神経…やはり背骨の…脊髄?ここを折るのがいいのかね…?」
「ぶ、物騒な理解の仕方しないで!!」
「それより伊達、肩は思っていたよりも複雑な運動をしておる。鎖骨を折ることでも腕には…」
「真田までー!!?」

変な興味を持ってしまった…




お昼はラウンジの隅っこで三人で食べました。

一日三食の習慣には慣れていないようだから、政宗さんと幸村さんは簡単に飲み物とサラダを食べている。

ダイエット中のOLのようだと思ったのは秘密です。

私は購買で買ったパンをかじる。
一番食べる量が多いのが私というのは複雑だ…

「だいがくってのはなかなか面白いところだな」
「へえ、そう感じてくれるなら嬉しい!」
「うむ、活気に満ちている。衛生状態もよく、環境が整っていて、勉学に適した」
「…そ、それ以上言うな!真田はそれなりに優秀なんだろうけど、頭良いキャラじゃない!!」
「ええ!?」

名字呼びにはまだ慣れない。

「…、まだ食うのか?」
「え?」
政宗さんに指摘されても構わずガサガサとビニールから出す。
…プリンを。

「いやあ、買っちゃったし…食べなきゃ…ねえ?」
「ねえじゃねえよ。太るぞ」
「初めて会ったときに、俺はもう少し肉ついてるほうが好みって言ってたの誰かしら…」
懐かしい話題を出してしまった。
「ああ?そうか、俺好みになるよう頑張ってたのか…そりゃあ失礼なことをしたなあ…」
「そ、そんなこと言ってねえ!!」
政宗さんがにやにやして頬杖をついた…

「伊達は体格の良いおなごがお好きで?あちらのような?」
無礼千万で幸村がぽっちゃり系の女の子を指差した。
「真田馬鹿!!ええい!!これでも食らえ!!」
「むー!!!!?」
幸村さんの口にスプーンですくったプリンをつっこんだ。
「はばっ…っ!!やめてくだされ!!すごく美味しい!!」
「やめてあげない!!もう!!私これ大好きなのに!!ああ!私の分が無くなる!!」

「…、自滅してるじゃねえか…」
騒いでしまい、周囲の注目を浴びてしまった…




結局最後まで講義に付き合ってくれて、帰りに幸村さんが荷物を持ってくれるという素敵サービスが待っててくださいました。

キャンキャンキャンキャン!!
「ぎゃあ!!」
「ポメラニアン」

そしてどうも幸村さんは犬に吠えられる。

…テリトリーを奪われると思われてるのか?幸村ワンコは…









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一日大学生体験でした

ワンコも好きだがにゃんこも好きです(聞いてない)