「とりあえず、車と電車には絶対気をつけて」
「くるま…でんしゃ?」
「そ。これが道路。ここを車が走るの。ああ、ほら、あれ」

ちょうど赤いスポーツカーがすごい速さで通ってくれた。
真昼間から国道でも無い道をスピード出してくれてありがとう。
二人が驚く速さで走ってくれて。
スピード違反だ死ね。

裏道を通って、コンビニではなく近くのデパートに向かう。
最低限周囲の環境は知らせておかねば。
私が大学のときはずっと家…って訳にもいかないからなあ…
そのほうが助かるけど

「な、ななななな何でござるかあの…箱…」
「車。馬みたいな、移動手段だよ!」
「どうなってやがる…?」
「ん〜…私車持ってないからなあ…そうだなあ…日曜日はレンタカー借りてどっかいこうか!」
「え、何?」
「乗せてあげます!楽しみにしてて!!」
免許取ったばかりだけど、まあ何とかなるさ!!

「へえ…それで、でんしゃ、というのは?」
政宗さんは幸村さんほど驚いてはいないけど、顔はいつもより真面目顔だ。
とにかく目に見えているものを頭に入れているようだ。
「ああ、家の近く通るよ。買い物したら、見に行こう。時間帯が合えば、帰り道見えるかも。」

キャンキャンキャンキャン!!
「ぎゃあ!!」
幸村が散歩中の犬に吠えられた。

「すみません…」
犬のご主人様は驚きすぎな幸村に驚いていた。

「な、なんでござるか…あの、足の短っ…」
「ミニチュアダックス!!可愛いですねー!!こちらこそ過剰反応してしまいすみません!!失礼します!!」
幸村の口を両手で塞いで、にっこり笑顔を向けて、そそくさと小走りで道を進む。


「幸村さん、あの、なんと言うか、思ったことを私以外の人の前で口にしないで…」
「す、すまぬ、普通にしている…」
「全くだ。田舎モンみたいだな」
政宗さんはなんか…大丈夫な感じだなあ…
何でだろ…

…あ

「そう、あと、言葉遣い」
「言葉?」
一番の違和感。

「ござる、は使ってないんだよ。あと、一人称は某じゃなくて、俺とか、僕とか…できる?」

「そうなのか、判った。俺といおう。」

あれ

「ねえ、幸村さんてもしや…」
「ああ、普段は俺と…」
「ええ!?」
違和感無く言うからもしやと思ったら…

「知らなかった…!!ずっと某だったじゃん…」
殿と会うときはいつも政宗殿もいらっしゃったので…」
「そりゃそうだ」

わああ、新たな発見…!!

「殿、もやめたほうがいいんじゃねえのか?」
「よ、呼び捨てで良いのか?」
「かまわねえよ。ここじゃ俺は殿じゃない。殿は他にいるんだろ?」
「い、居ません…」
「じゃあ誰が統治してんだ?」
「知事…とか、選挙で選ばれた人、とか」
うわ、説明って…どうすればいいんだ?
「へえ、まあ時代が変われば名称も変わるわな。」

おや、その程度で納得してくださった…?

「家に戻ったらたっぷり説明してもらおう」
「いいいいいやだー!!!」



デパートに着いたときは家に戻ったときの事を考え、すでにゲッソリしていた。
政宗さんと幸村さんは、不安がる事も無く違う方向に歩き出した。
思いのほか人が多くて
思いのほか二人の興味を示すものが違うので

「これなんだ?」
左の腕を政宗さんに引っ張られると

、あちらに色鮮やかなものが」
右側の腕を幸村さんに引かれ

「これの説明が先だ。どっかいってろ、幸村」
「断る!」

ピンポンパンポン…
迷子のお知らせをします…

「!!なんだ!?」
「あ、あそこから聞こえる…」

は、政宗と幸村が放送でフルネームで呼ばれるところを想像した。
…だめだ、それはだめだ…!!

「伊達。真田。」

いきなり名字呼びになったに二人が驚く。

二人の手をしっかり握って、歩き出す。

「離れたら、だめ。そんで買い物が先!!」
「あ、ああ…」
「それで、外でフルネームは絶対出さないで!!二人は嬉しい事に有名人ですから!!」
「そうなのか…」

二人の事は、私が守る!!

エスカレータに少々びびる二人が可愛くて、とにかく守らねばと思いました…。


靴を買って、下着とついでにスウェットを買って、なんかお母さんな気分になって帰路についた。
重くは無いけど政宗さんと幸村さんが荷物を持ってくれた。
環境の変化に余裕なくしてもいいだろうに、気遣ってくれるのは本当に嬉しい。

しかし、自販機とかにも興味を示すから、家に着くまでにやたらと時間がかかった…

家の近くに来るとちょうど電車が通ったので、あれだよ、と教えると、政宗さんと幸村さんは硬直した。
本当にわけが判らないのだろう。
ぷぷ、と笑ってしまった。



家に着いたらさっさと荷物を整理した。
「さて、今からご飯作るから、大人しく待っててね!これ、寝間着ね!着替えちゃっていいから!!」
スウェットを渡した。
「これはsimpleな服だな。肌触りも良い」
「うむ、暖かそうだ」

与えた物は素直に受け取ってくれるから助かる…
「さて…あの、政宗さんみたいに料理上手くないけど、そこは勘弁して…」
「あ、おい、、いつもお前が食べてるものでいいからな」
「え?」
政宗さんの言葉にきょとんとしてしまった。

「なんか…少ししか見てねえが、売ってた食物、あれだけ豊富なんだ。料理のレパートリーも沢山あんだろ?下手に気を使わなくていいからな」
「そうだな!ど…に負担はかけられぬ!!」

二人とも優しいからそう言っているのは判る。
判るが

「そ、そういうわけにもいかん…!!」

ここは甘えちゃいかんっ…!!

「…?」

「そりゃたった二週間だけど…だめ!!和食出しますからね!」
肉もそんなに食べないし、調味料だって少ないし、油だってめったにない…そんな食生活からいきなり現代の食事は…

「何言ってんだよ。折角の未来だ。食いたい。」
たしかに興味もあるのかもしれないが
私の普段の食事…
ハンバーグ、オムライス、パスタ、中華…か、カロリーが…!!工夫しないと…
健康なもので納豆、キムチ、煮物、サラダ…あと魚は…
…う、思い出すとかなり肉中心…

「ああ、わ、判ったけど、最初は我慢して…お腹、徐々に慣らそう」
「そんなに違うのか?」
「た、多分。怖いから、お願い、最初は…」

政宗さんと幸村さんが顔を見合わせてるよ…
ああ、やめて、ケチとか言わないで…
何言われるのか怖くなって、下を向いてしまった。

「…、そなたは、優しいな」
「へ?」
何でそうなるのか判らなくて、変な声を出してしまった。

「鵜呑みにすりゃあ良いのによ、俺に反抗とは良い度胸だな…今に始まったことじゃないが」
政宗さんがベッドに腰掛け、呆れたような声を出した。

「だって、だってさ、今ぐらい、二人の心配させてよ…」
「俺たちは心配かけたくないんだが?」
「ちょっとは、頼ってくれよ…心配、したいんだ…」

自分は頼りないかもしれないけど
でもどうしても二人の助けになりたくって・・・

「…心配したいなどと、初めて言われてしまった。承知した、、任せましたぞ」
「え」
「俺もだ。ったく、しょうがねえなこいつは。判った。気遣ってくれ。手伝いはさせてもらうけどな」
「う、うん!!」

自分の気持ちは伝わっただろうか
判らないが、とりあえず優しく笑ってくれているので、安心して胸をなでおろした。


そしてキッチンに立って、覚悟を決める
「うーむ、センスが問われるな…家族以外の人に作るなんて初めてだ…」
友達同士ならみんなでわいわい作るが…
献立から一人で…
「愛があれば、いいかしらね…」
アバウトに考えてみた。






政宗さんに手伝ってもらいながら、サバの味噌煮やらもみ漬けやら筑前煮やら、頑張って作ってみましたよ。
味つけは全て政宗さんにしてもらったんで心配は無いだろうけど
やはり恥ずかしいやら不安やらですっごいどきどきですが、覚悟して

「「「いただきます」」」

一口

二口

「…うま」
最初に言ってしまったのは私。
やばい、美味いんですけど

「俺が手伝ったんだ。当然だ」
「うむ、美味い!!」

あれ
なんかすごい楽しいな…この雰囲気

「え、えへへ…」
「なんだよ、にやにやして気持ち悪ぃ」
「そういうこと無いであろう。が笑っているのは、よいことだ」
「すごい、なんか、嬉しい…」

一人じゃないって、すごく、思えた。

普段の生活になんの不自由があるというのだ
友達、いるじゃないか
だけどとっても落ち着ける

、明日の予定は?」
幸村さんからの呼び捨てにだんだん慣れてきた。

「明日も大学だ…でも、そんなに遅くはならないよ!」
「そうか、では明日はここで大人しくしていよう」
それはありがたい。

、どこかに道場みたいなところは無いのか?」
「あ、そっか、体なまっちゃうよね…」
公園で暴れさせるわけにもいかない…
「待ってね、明日、調べてくる」

パソコンで調べればいいのだが
パソコンは起動させない
もし、二人が使い方を覚えてしまい、自分の名前を検索したり、戦国について調べちゃったらなんか怖いから


夕食を済ませたら、シャワーの使い方と、シャンプーやらの使い方を説明して、入らせた。
狭いとか文句が出るかと思ったら、いろいろと香りが気に入ったらしく、むしろ嬉しそうだった。

そして最大の問題は寝る場所…

「んん…ベッド一つと、予備の布団一つ…ああ、ついでに買ってくればよかった…」
けどさすがに徒歩で布団はなぁ…

「この寝台に二人寝れるさ」
政宗さんがベッドに乗って、どかりとあぐらをかいて座った。
ギシッと音がした。

私はベッドの横に座って改めてベッドの大きさを見た。

「昼間、幸村さんを落としといてよく言うよ…」
「ah?何言ってやがる?俺とお前だよ」
政宗がの顎に指先を当て、少しの力を入れ、上を向かせた。

「ま、ままま政宗殿!!何をしてらっしゃる!?」

幸村さんが顔赤くしてテンパってるじゃないか。
そして殿付けじゃないか。
まあ、言葉の問題は外だけでいいか。

「政宗さんと私ですか…」
「照れる必要はねえだろ?初めてじゃねえんだから…」
「だったら、私と幸村さんのが、体格的に」
「…言葉を間違えた。俺のが体格がいいから、俺の上で寝やがれ。」
の言葉にうっかり納得してしまった政宗は無理矢理言葉を並べた。

「ううううう上とは何でござるか!!破廉恥な!!」
「ラッコと貝殻みたいなもんか…あ!怖っっ!!ぶち割られる!!」
「割らねえよ!!というか、何だ、らっこって…大事ーに扱ってやるよ!!」
「あああ扱うって…何…わああ!!政宗殿は歩く破廉恥でござる!!」
「それは酷ェな幸村ぁ!!訂正しろお!!」

困ったな、決まらない…

「まあ、私はどこでも寝れるけどね」
「お?俺の上か?」
「ここの上」
「え?」
「この、敷いてあるもの」

机を退かして、布団を敷いて、
あと毛布を取り出してラグマットの上に置いた。

「ベッドと布団に政宗さんと幸村さん、どっちでもいいから寝てね」
…お前そんなとこで寝るのか?」
「ちょっと、そんな畳の上じゃないんだから、大丈夫」
「しかし、世話になる身で…申し訳ない…」

そんな事言ってたら決まらないだろう…

「二人は慣れない環境なんだから、できる限り良く待遇してあげたい。なあに、ちょっと、お偉いさんが遠慮してんじゃないわよ。大体、私が勝手にやってるの!判ったら黙れ!!」
びしっと指を差して怒鳴ったら大人しくなった。

「ah―…しゃあねえな、様に従いまーすっと…」
政宗さんが目を伏せて、髪をかきあげながらそう言った。
「は、はい!従うでござる!!で、では、某…こちらの布団で…」
幸村さんはいそいそと、ベッドの隣に敷いた布団にもぐりこんだ。

「何だ、そこでいいのか幸村…じゃあ俺は遠慮なくここ使うぜ。、一緒に寝たくなったらいつでも来い」
「しゃあねえな、政宗様は寂しがりやだな」
「おおおおお前なんだ!?未来にきた途端その態度!!」

ここは私の城なんだよ!!




朝になると、幸村さんが一番に起きて、私を起こしてくださいました。
布団たたんで、
簡単に味噌汁を作って、魚を焼いて
政宗さんを起こして

三人で食べて

合鍵と、少しのお金を置いて

「いってきます!!」

そう言えば、おぅ、とか、待ってるでござる…あ、いや、待っている!!とか返事が来る。

自然と口元が緩んだ。












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あんまり一緒に居られねえ!!
大学生で逆トリップは無謀だったか!?
クソ真面目主人公ー!!