「慶次が…慶次が…」
戻ってきてしまった。
どうなってしまった?
戻りたい…
戻って、慶次のところに駆け寄りたい

「落ち着け」
大きな手が頭を撫でてくれる。
涙を指で拭ってくれる。

「慶次殿は、大丈夫でござる。急所をやられたとは思えなかった」
優しい声で、言葉を発してくれて


…………え?


「ま、政宗さん…幸村さん…」

あれ…?ここ…マンションですよね…

「まさか、来れるとはな…」
「ここが、未来?」

連れてきてしまった…

ちょ…

ちょっと待て…

マンションの玄関に三人で座り込んでいた。

「どうなって…」

触れるから、ちゃんと体がある。

!!!』
窓には変わらず爺さんが張り付いていた。

「爺さん!!」

急いで駆け寄って、窓枠に貼っていたお札を剥がした。
近くの神社で買ったものだが、効果があるようなので貼っていた。
爺さんが入ってくる。

『何…何事じゃ…?』
「こっちの台詞だ!!何で二人がこっちこれるの!?」
『お主の力としか、言えぬだろう!?』

視線を二人に向けると、こっちを不思議な顔をして見ていた。
殿、どなたと、会話を?」
「ジイサンがそこにいるのか?」

二人には見えていないようだ。

「い、いる、ここに…」
指をさしてみた。

それで、それで…

「爺さん!!今すぐ戻して!!」
『無理じゃ!!』
「頼んで!!お願いだよ!!私のせいで、私のせいで慶次が…!!」
「お前のせいじゃない!!落ち着け!!っ…!!」

政宗さんが立ち上がったと思ったら、頭に手を添えて倒れこんだ。
「ぐ…政宗殿もか…」

二人して、頭が痛いようだ

「二人ともっ…!!」

とりあえず武器を外して、肩を貸して立ち上がってもらって、ベッドへ運んだ。
といってもシングルベッド一つ…
きついでしょうが、我慢してください…

「頭、痛いの?」
「…ガンガンするぜ…」
私は大丈夫だ
こっちに来てしまった事による症状だろうか

『…そやつらは、のおかげでここにいるのだろう』
「!!」
『それに、、お主の力が、明らかに強くなっている』
「どういうこと?」
『それは…』

ジリリリリリ

「わ!!」
目覚ましが鳴った。
慌てて止める。
「うるせ…」
「ごめん!!」
!ひとまず大学じゃ!!』
「な」
二人の様子を見る。
顔色はそれほど変わっては居ないが、呼吸は少々荒い。
痛そうだ…

「二人の事、放っておけない」
『休むのか!?』
「一日くらい、平気」
『お主らしくない!二人の事はワシが見ている!だから…』
「こんな状態で、大学行ったって、身が入るわけ無いじゃん!!」
考える事が多すぎて、頭が混乱して

「…行け」
「!」
政宗さんが、小さいけれど凛とした声でそう言った。

「俺たちのこと理由にして、やるべきことを放棄するな」
強いまなざしで、そう言われては、反論の言葉が思いつかない。
「でも…」
「大丈夫でござる。一眠りすれば治るでござる。よく判らぬが、やらなければいけないことがあるなら、行って下され。」
「…」
…』

着替えを持って、シャワールームに入る。
急いで、準備して

冷蔵庫開けて

「政宗さん、幸村さん、この箱開けると、飲み物あるから、のど渇いたら、こう空けて、飲んでて!」
ペットボトルの説明。
いいかげんだなあと思ったが、空けて見せると政宗さんがOKサインを指で出した。

「朝ごはんは…」
「腹減ってないから平気だ…」
「そ、そっか。爺さん、じゃあ、何かあったら私に伝えに来てよ!!」
『任せろ!』

家を出て、しっかり鍵をかけた。

慶次のことは、きっと佐助と小太郎ちゃんが助けてくれる…
でも、でも、

心配だよ…




がちゃりと音がした。
何の音だろうかと疑問を持ったが、後でに聞けばいいかと思い、目を閉じる。

「政宗殿…」
「何だ」
「来てしまったな…」
「ああ…」
「あの、闇。避ける気になれば避けれたな…」
なのに、まんまと飲み込まれて
「…あんな、放って置けるか…」
「確かに…それに、正直、興味もあった…」
「まあな…」

互いに、安易な行動を取ってしまった。
自分の立場を忘れたわけではないが

なぜか、逃れられなかった

「ここで、視野を広げれば、何か良い思考が浮かぶかもしれねえ」
「前向きに考えるか…何かを得て帰れば、佐助も怒るまい…」
「ちょっとした留学だな…」

何があるのか判らない未来
本当に戦は無いのか
ここにいて、何も心配はないのか
知らないことだらけだが

「政宗殿」
「な…んだよ…静かに…」

殿の、匂いがする…」

「そりゃ、そうだろ…」


信じられるものが、一つ。





…おぅい、なんて日だい今日は…

講義は1限から3限まで
早く帰れる

「2限休講!?」
掲示板を見て、うっかり声が

…家に、一度帰ろうか
だってここで二人のために出来ることはないし…
そうだ、冷えピタでも買って…
…熱出てる様子はなかったなでも…
えぇと…

「休講をそんなに悲しむのはくらいだぜ?」
肩をぽんと叩かれる。
…」
「な、車出すから、2限の時間遊ばない?」
「遊ぶって…」
そんな場合じゃない…
「といっても買い物付き合ってくれって、俺の勝手なお願いだから断っても傷つかないけど」
肩をすくめてが笑う。
「買い物?」
「ケータイぶっ壊れた。ついでに服でも買ってこよっかなと」
「服…」
そうだ、服…
洋服買わなきゃ、二人外歩くの厳しい…

「行く!行く!」
「おぉ!嬉しい返事!じゃあ1限終わったら、ラウンジで会おうぜ!」
手を振ってと別れる。

ナイスタイミングだぜ!!
サイズは、大体服見れば判るだろう。
政宗さんは何でも似合いそうだな…
幸村さんは赤が好きかな?
お金いくら下ろそうかな…

あれ、なんか少し元気になってきた。

とにかく、今出来る事をやろう




が連れて行ってくれたお店は、ありがたい事にそれほどお高い店ではなかった。
「…
「はい?」
「何でお前が男物買うんだよ…?」
「え?」
「しかもなんで俺がトータルコーディネートだよ?」
かっこいいからアドバイスをと…」
「棒読みじゃねえか!」
男の人の格好ってよく判らないから、とりあえず教えてもらって買った。
二人分はちょっと重い。
店を出て、車に向かう。

「授業、まだあるだろ。車にその荷物乗せたまんまでいいから」
「ありがとう。じゃあ、帰るとき取りに来る」
「送る」
「へ?」
「重いだろ」
「ま、まあ…わ、悪いね…」
「今度昼飯おごってくれ」
「了解!!」
優しいよ、こいつ…
心の底から感謝した。
後部座席に荷物を載せて、大学へ向かう。

「で、あれ誰の?お前彼氏いたっけ?にしてもあれは貢ぎすぎだろ…別れろよ」
貢ぐというのは、なんか間違っちゃいないな…
年貢だ、年貢。
殿、これで勘弁してください!!だ
想像して少し笑いそうになった。

「いとこのお兄ちゃんがうちに遊びに来るんだよ。手ぶらで行くから、金払うから着替え買っといてって言われて」
「そうなのか?じゃあ、俺ちょっとプレッシャー感じるぜ…」
「文句は言わせないよ」
「はは、頼んだぜ!」

薬局にも寄ってもらって、眼帯を購入して大学に戻る。

時間はギリギリだった。


3限に爺さんがやってきたから何事かあったのかと警戒したが、二人とも寝てしまって退屈じゃ〜と言ったので殴りたくなった。

『そのままで聞いてくれ、

爺さんが頭上から言葉を発した。
小さく頷いた。

『お主の力が強くなった、と言ったな。』
「?」
少し爺さんの顔を仰ぎ見た。
申し訳なさそうな顔。
すぐ首を戻す。

『原因はよく判らんが、やはり、今回の事が関係しているのであろうな…。考えてみれば当然かもしれぬ。そなたは直にご先祖様の力に触れて、第六感を駆使して存在して…』

開花というか、強くならなくてはいけなくなったから引きずり出されてる、ってことか?

『…これから、今まで見えなかった微量の魂まで見えてしまうかも知れぬな…』
「…」

しかし、そのおかげで政宗さんと幸村さんはしっかりと存在しているのだろう?
二人分なんて、今までの私の力じゃ、無理だったと思う。

『…すまぬな』
首を少し振った。

そんなのいいから、さっさと戻って二人の様子見てて!!

ノートの端に、すばやくそう書いた

『承知したぞ!!』

爺さんがふよふよと浮かび上がって、天井へと消えた。

私は、教授の話をメモしながら、今日の夕ご飯は何にしようか考えていた。














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友人の名前は
嫌いじゃない人でお願いしまっっ…!!
何とか皆さんの周囲に1人は居そうな人物にしたいと…!!

そんで、逆トリップ始まりました。
苦手な方には申し訳ない!!
そんなに長くはならないかと…!!