笛や太鼓の音が聞こえ始め

人通りが多くなり

店が活気づいてきて

それを眺めながら男たちはが出てくるのを待っていた

「いや〜、いいよなぁ、こういう時間!絶対綺麗になって出てくんぜ!すっげぇ楽しみ!」
「おい、前田慶次、本気で言ってんのか」
「ん?当たり前じゃん?」
「俺にはげっそりして出てくるの姿が想像できる…」
政宗が玄関先に座り込んで遠い目をした。
先ほどから、が準備してる部屋からは

「まままままつさんそんな気合い入れなくていい―!」
「だめです!このかんざしは絶対!!」
「ちょちょちょ…あ―!女中さん!チークは自分で…いや、もっと淡いの…薄化粧でいいですから―!!」

すごくネタバレしていた。


朝、は朝食が終わったと同時にまつに連れ去られていった。
はいつも通りで良いと何度も大声で主張したのだが、まつは全く気にしなかった。

そんなまつを見て、慶次はまさか俺らも…!?と危機感を露にしたが、まつは、男は勝手になさいませと爽やかに言い放った。

そのため男はいつもの格好だ。

慶次が、祭りにはいろんな奴が集まるから、そんなに目立たないし気にする奴も少ないから大丈夫だ、というのでいつも通り。

「政宗殿、ちぃくとは何でござるか?」
「頬紅らしいぞ」
「なるほど、うむ、殿は淡いのが似合う!良い選択でござる殿!」
「旦那、詳しくないのにそんな事言ってると、が照れ隠しで、幸村あんたも淡いのが似合うぜ!とかいって旦那の顔に化粧しだすよ?」
「ひ、否定できぬ!!やりそうでござる!言うのやめる!!」

幸村が本気で怯えた。



ガラ

「お待たせいたしました!完璧でございます!」
まつが非常にさわやかに扉を開けた。

まつの後ろからがひょっこり顔を出した。
「またせてすいません…あの」
「おぉ!」
「いいじゃん!」
「……(こくこく)」
「綺麗だぜ!うわ―やっぱいいなー!!」
「うぅ…恥ずかしい…言わせてるみたいでごめん…」
「本心でござる!」

髪はおだんごにして、首もとが少し空いて鎖骨が見える蓬色の着物を着ている。
メイクはナチュラルだが目や眉は人形のように整っていて、潤んだ唇には自然と目線がいってしまう。

「へぇ、可愛いじゃねぇか」
「!」
幸村は驚いて政宗を見た。

政宗殿…ついに殿に積極的に…

「政宗さんまで…あ、ありがとう」
「すげえ可愛い。10歳くらい若返って」
「嬉しくなかった!!10歳ってガキじゃねぇかお前はまたコラー!!」

…政宗殿

お主は本当に阿呆…

ああ、ほら小太郎殿が慰め始めているではないか…

小太郎殿に取られるぞ…

「……」
自分で言って、自分が嫉妬した。


「ようし!行こうぜ!そろそろ神輿も出てくるしな!」
「神輿!?見たい見たい!!」
が小走りで前に出た。
「おい、!走るんじゃねえ」

政宗が咄嗟に立ち上がっての腕を掴んで止まらせた。
「え、でも…私歩くの遅いし…コンパスの問題…」
「お前に合わせるっての!折角着飾ったんだから、乱すようなことするな」
「す、すいません。ありがと…」

おいおいおいおいおい
なんだかんだ言って
気に入ってるんじゃないか

「佐助…某だんだん、いらいらしてきた」
「まあまあ、本当は安心じゃない?旦那にも入る隙あるしさ」
「む…そう言われてしまうと…」
「俺にもあるし」
「な…佐助!?」
「ん?何?」
「佐助…殿のこと…」
「どうだろね?いい子だよね」
「うむ!良い子…でなく!!佐助!誤魔化すな…って、ああ!!睨まれてる!小太郎殿にすごい睨まれてる!!」
「あ!忘れてた!!…ってゆか、小太郎!お前は保護者か!!」
「……」
「お前に言われたくないとか言うな!!」

「三人ともー!!何してるの?早く行こう!!」
が叫ぶ。
急いで駆け寄った。



神輿が多くの男達に担がれ、大通りを進む。
慶次が近寄ると、皆が慶次の名を呼び、さらに盛り上がった。
彼が男女問わず、多くの人に好かれていることは一目瞭然だ。
慶次が神輿によじ登る。
「おらー!!乗せろー!!」
「ぎゃはは!!慶次!!重いっての!!この目立ちたがり!!」
「今日は特別な人が来てんだ!!目立たせろー!!」
「本当かー!?なら話は別だー!!いっくぜー!」

スピードをあげ、大声を上げはじめ、皆が足を止めてその騒ぎを笑みを浮かべながら見ていた。

「わー!!慶次すごー!!目立ちすぎー!!」
が慶次に手を振って叫ぶ。
慶次もさわやかに笑って手を振り返す。

「じゃあ、前田慶次はあのまま置いていこう」
政宗の無情な一言。
「え!?酷い!」
そしての腕を引っ張る。
「竜の旦那!!勝手に進むな!!人が多いからはぐれる!」
「はぐれりゃ二人きりか?」
「おい!!…あ〜、もう…はぐれたら、あの木のとこに集合な!!」
佐助は町の中央あたりにある、大きな木を指差した。
慶次にも伝わったようで、両手で大きく丸を作っていた。
と、同時に
「よっと」
「あ」
「な…」
「佐助!?」
「!!」
政宗からを奪って、どこかに消えていった。

「あの…あの猿…はぐれるどころじゃねえだろ…あいつ…」
油断していたとはいえ、手にしていたものを奪われるとは
「佐助…何をしているっっ…ああ…小太郎殿も消えてしまった…」
「…まあ、いい」
「政宗殿?」
「行くぞ」
「…ど、どこに?」
「行くんだよ!!」
「ぎゃあー!!」
幸村の髪を引っ張って、政宗が人ごみの中を進む。




「佐助ー!!何よもう!!みんなで遊ぼうよ…って、わああああああ!!!!」
どこに来たかといいますと


空。


「高い高い高い!!!」
佐助はを片手で担いで、もう一方の手で黒い鳥に捕まっていた。
「空中視察。へえ、こんなにちゃんと見たのは初めてだ。京か…こんな形で来れるとはね」
佐助は至って普通に下を見ているが
は血の気が引いて、眼を開けられないでいた。

、しっかり見るんだ」
「ででででも…」
「ここが京。覚えるんだ。この地を踏んだら、前田の風来坊を探す。いいかい?」
「あ…そ、そうか、そうだね…情報は多いほうが…でも…た、高い…」
「うーん、仕方ないな、もう少し高度落とすか」
ゆっくり降りていく。
ここら辺でいい?と佐助がに話しかける。
が眼を開けると、下に華やかな京の町が見えた。
今度は人通りもきちんと見えるくらいの高さ。
「わ…綺麗だね…お祭りだからってだけじゃないね…」
「そうだね、ま、このくらい当然じゃないと。覚えた?」
「…うん、雰囲気は。」
「あらら、優秀だね、。後は、歩いて覚えましょうか。…よっと!!」
「え」
佐助が鳥から手を離して

「ぎゃああああああああ!!」
落下。
を両手でしっかり抱きかかえて着地。

「へーい、ただいま小太郎。」
「…」
着地した場は先ほど佐助が指差した木の近く。
小太郎が腕を組んで、壁に寄りかかって居た。
は口をぱくぱくさせていた。

「あれえ?旦那たちもすぐ来るかと思ってたけど…仕方ないな、じゃあ、三人でとりあえず…」
「俺が居なくてどうするよー!!」
慶次が勢いよく走ってきた。
この四人で行動というのは

……未知だ。








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そんなこんなで祭り開始