外は闇に包まれていて
もうすぐ満ちる月が憎たらしい。

「政宗さん!」

が俺を追いかけてきた。

それだけの事にすら喜びを感じるなんて

「ごめんなさい…あの、怒ってる?」
「別に」

足りない

まだ足りない

ずっと隣にいて欲しいのに


いっそのこと光の届かぬ地下で
月の見えぬ牢で
枷をつけて閉じこめてしまえば

一緒にいられるのだろうかとまで考えるように


そんな事できるはずないのに

「ま、政宗さん」

が俺の前に回り込んだ。
月光だけに照らされるの顔はいつもより大人っぽく見えた。

「あの…今度は、笑って、またねって言って、お別れしたい」

「…」

こいつ、俺と同じ事…

「そうだな」

の頭に手を乗せて、ぽんぽんと軽く叩いた。

「そういえば、ちゃんと言ってなかった」
「何を?」
「俺がお前を城につれてきた理由」

が数度瞬きをした。

「(小十郎さんに聞いたなぁ…でも…)どうしてつれてきてくれたの?」
「連れてきたかったからだ」
「え…」

面食らったような顔。
何をそんなに驚いてるんだ?

「納得いかねぇか?」
「うぅん、十分」
「そうか」

手を退けて、しばし沈黙すると
が俺の手を握った

?」
「…ありがとうね」
顔が火照っている?

繋いでない方の手で
の頬に手の甲を当てた

「なっ…なに!?」
「熱くなってんな…照れたか?」

あんな一言で?

「なん…でもない…」

嘘付け

「なぁ、教えろって言ったじゃねぇか。お前のこと…。何考えてやがる」

「う…ただ…嬉しいだけ…」

なんだよ

「…単純」

そういうところがいいんだけどな…

「寒いから、風邪引いちゃう…中入って…ご飯食べよ?」
「a little more・・・」
「?」

「・・・Could you be a little more together?」

二人で、もう少し一緒に

「…Yes, with pleasure・・・ 」








片倉殿がさっきから同じ文を見つめている。
もう読み終えてるだろうに。

「何見てるの?片倉殿」
「…政宗様への見合い話が」
「やだよ。俺は殿とちゃんの間の邪魔になる奴は斬るよ」
「成実様…」
ちゃんには、殿のそばに居て欲しいんだ…」

殿は今絶対、毎日を楽しく過ごしている。

それが変わるのは怖い。

結婚なんかしたらどうなる?


「…成実様、政宗様との関係をどう思いますか?」
「見てて飽きない」
「いやそういうことじゃなく…は個人で多少なりとも上杉、前田、武田、もしかしたら豊臣とも友好関係を持つかもしれない」
「うん。みんなちゃんのそばに居るときはすぐにでも殺せるぐらい無防備だよね」
「そういうことを言わないで下さい…。その話を出せば、正式に婚約することは出来ないだろうかと…」
「義姫様や家臣に認められるかどうかって話?」
「…あぁ、身元は明かさずとも・・・」

小次郎様に家督を継がせたいと思う者はまだ少ないとは言えない。
輝宗様のことを根に持つ輩だっている。
政宗様は下手な事はできない。
しかし、譲れないものはある。

「大丈夫かもね」
「そう思いますか?」
あまり考えたくないが、利用価値があるなら皆認めるだろう。

「うーん、けどね、片倉殿、殿はどう思うかな?」
「殿が…?」
「一番大切な人を結婚なんて形で一番近くに置くかな?」
「それは」
バサッと読んでいた書を机の上に置いた。
その風でろうそくの火が揺らいだ。

ちゃんが、公に殿の弱点になる。交友関係の広さが裏目に出る。それは今の状況じゃやばくね?」
「…確かに。は、消えては現れ、消えては現れ…もし、敵対した軍の領地に現れたら…」
「人質」
「友が多ければ、それを理由に婚約するなら、外交に関係することになり…それだけ顔も知られてしまう…か」
「…ただでさえどこかの勢力の忍がうちに偵察しに来れば当然知られるんだし。…まー、そう簡単にはさせないけどさー…」

成実が壁にもたれ掛かった。

「殿の、ちゃんの気持ちは、どうなんだろ…」

は、そんなこと考える余裕はないと思うが…」

「だよな…殿だって…ちゃんはいつか帰るから、一線置いてただろ…?それがこんな事になって…」

確かに政宗は、最初はに踏み込もうとはしていなかった。

と笑い合ってただけだ。

どうすればいいのか、自分の抱いている気持ちがなんなのか、悩んでるのは政宗も一緒だ。

「政宗様は優しい方だ…を守ろうとするだろう…」
「ならビビッてちゃんを隠して守んのか?」
「そういう言い方もあるかもしれません」
「…怒れよ片倉殿。冗談だぜ?」
「承知しておりますよ?」

余裕を見せる小十郎に、成実は苦笑いを浮かべた。

「ま、殿がビビんなら俺がちゃんもらえば解決だよ。ならずっとここにいられるし?」
「成実様が!?」
「もちろん子は作らせてもらうけど〜?なんだよ、反対かよ?殿が望むならばって話だよ!…あ?もしかして片倉殿もちゃんのこと…」
「何を言いますか!!俺はそんな…」
「ぎゃははは!片倉殿顔赤い―!なんだよみんなして!!」
「成実様!!」
「怒った!怖ぇ怖ぇ!!逃げよ―っと!!」
「成実様―!!」

夜中にばたばたばたと、騒がしくなる。

政宗ももいない城で








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うちの政宗様は素直じゃない上、本命に弱い

そして成実、発想が昼ドラの見過ぎだよ…お前夢はドロドロ話になるよ…

政宗はCould youなんて使わねえ!!って思う方にはすいませんなお話。