「さすがウチの馬だねぇ!元気だ!」
こくり

とある民家の庭先で、佐助と小太郎が馬の世話をしていた。
「さて、んじゃ、宿戻るか!」
「???」
小太郎が歩き出した佐助の肩を掴んで止めた。
「馬見てなくて良いのかって?大丈夫、ここの家主は俺の部下だよん」
「…」
「しっかりしてるだろ?さて、今夜は旦那待望の枕投げするからな!体力蓄えとこうっと!」
「…」
腕をぶんぶん回して佐助が宿へ向かう。
小太郎も真似して腕をぶんぶん振ってみた。





「恋とは難しいのでござるな…」
書で学ぶことは諦めた幸村は、ふらふらしながら宿に戻る。

慶次殿や政宗殿に聞けば判るでござろうか…
しかし、まともに取り合ってくれなさそうでござる…!!



「…」
殿は

いつも政宗殿と一緒に

「武田に…」

いつか武田に
未来から武田に
そうすれば一緒に

「想い…か」
慶次殿の言葉を思い出す

殿は願うでござろうか

政宗殿のそばにいたいと、願ってこちらに来るのであろうか

「某は…」

とても苦しい



「あ、旦那!今戻ってきたの?」

いつの間にか宿の前に着いていた。
同じく戻ってきた佐助と小太郎殿と入り口の前で合流した。
「この町はどうよ?」
「あ、あぁ、なかなか、良いところだ」

無理やり笑顔を作った。

「さてさっさと…!?」

突然、ドゴォ!と宿から音がした。
「何っ…」


「しぎゃー!!宿っ…壊れる!助けて!止めて―!!」
「キー!!」
殿と夢吉が飛び出した。


小太郎殿がすぐさま中に入って行く。


「あぁ!小太郎ちゃん!しまったあ!判ってたはずじゃないか!小太郎ちゃんは私に甘いんだ―!ごめんよ―!!」
「はいはい、俺様も行くよ!安心しな!」

佐助も中へ入っていった。


「ごめんなさい!幸村さん!佐助さんまで…」
「大丈夫でござるよ。佐助は誰にも負けぬ。」
「だ、だよね、でも…」


殿は某の気持ちなど判らぬのだろうな…


「やっぱり、怒ってるのかな、政宗さん…城に残りたかったんじゃ…」

殿が俯いてしまった。
…なぜそんなことを
そんなわけ無いのに

「政宗殿は怒ってないでござるよ!顔を上げるでござる!」
「そうかな…でも私、迷惑かけてばっかり…」
「な、なにを言うでござるか!政宗殿は殿と関わることを望んでおられる!」

…なぜ某は政宗殿の味方じみたことを…

「そうかな…大丈夫かな…げばー!!」
殿!」
殿の後頭部になにかがスコーンと当たった。

それは

「枕?」
「はっ!そうだ!政宗さんと慶次が枕投げ始めちゃって…なんかもうビュンビュンと枕が…壁壊して…」
「政宗殿、慶次殿…」

修理費は誰が払うでござるかぁぁぁぁ!!

「文無しのくせに好き勝手するでないでござる―!!」
幸村も中に入っていく。

「あ、そうか、政宗さん…いきなりだったもんな」

文無し侍か…

口に出したら殺される





「うああ…」

一人で外にいるのもあれなので、戻ってきた。

部屋の中が巨大な蚊帳のようなもので囲まれて、その中で四人が枕投げを続けていた。
おそらく佐助さんと小太郎ちゃんが網を張ったのだろう。
投げる勢いは衰えていないが、枕が壁を破壊するのは免れている。

幸村 佐助 小太郎vs慶次 政宗 という構図が出来ていた。
枕がビュンビュン飛び交う。
「みんな楽しそう!」

良かった

みんな仲良しだ!!

それに幸村さんは枕投げやりたがってたし


「まつ殿と片倉殿に請求書送ってやるでござるぁ!!」
「と、利に!やるなら利にしてくれ!」
「てっ、てめえ真田幸村ぁ!余計な事しねぇでてめぇが払え!」
幸村さんの気迫に押され、政宗さんと慶次は防衛戦だ。

「悪いけど俺ら忍は旦那の味方だよ!」
こくり

「あ〜…」
そうでもなかった

「小太郎はうちの忍だろが!俺を守れよ!」
「…」

びしっと小太郎がを指す。
「え?」
お前なんて命令したんだ―!?」
「命令なんてしてない!二人止めてってお願い…」

「小太郎殿は殿を危険な目に遭わせる事自体に怒りを感じておられる!」
こく!

真田幸村が小太郎と意志疎通。
「小十郎の次は真田幸村に懐くのか小太郎―!?なんだその順番は!?というか」

一番を危険にさらしてんのは氏政だろうがぁぁぁ!!

びくっっ





みんなの熱が引いてきたので、タイミングを見計らって声をかける。
「みなさんお疲れ〜」

「おぉ…」
珍しく政宗さんの息が上がっている(心労かもしれないが)。

「枕投げ…楽しいでござる!」
幸村さんは途中から怒りを忘れていたようだ。

「まつ姉ちゃんは…まつ姉ちゃんだけは…」
慶次はぶつぶつ床に突っ伏して落ち込んでいる。

佐助さんと小太郎ちゃんが網を片づけだしたのでそれを手伝うことにした。

「凄まじかったね!あれは参加できない!みんなすごい!」
「俺様かっこよかったでしょ〜?」
「うん!!」
「良い子だなちゃんは!武田に居てくれたらさぞかし俺の癒しになるんだろうに…なんで竜の旦那のところかなぁ…」
「そ…そんなに疲れてるの?佐助さん…」
「だって旦那はいつもお館様お館様お館様!俺には団子買ってこい煎餅買ってこい!!どういうことよ―!!」
「あはは…幸村さんらしい…」

佐助さんが私をじっと見た。

「どうしたの?」
「使い分けの基準は?」
「何の?」
「呼び名。幸村さん、佐助さん、小太郎ちゃん、政宗さん、慶次」
「あぁ、なんとなく」

縄を外し終わった。
佐助さんが衣類の中にしまいこむ。

「旦那の事は判るけど、俺はさん付けしなくて良いよ?小太郎と同じ忍なんだし」
「でも…」
「ほら、言ってごらん?佐助ちゃん」
「断る。」
「冗談だよ〜、そんな怖い顔しない!!佐助って!」

佐助がの予想通りの反応に満足そうな顔をした。

「…佐助…」
「そうそう」
「照れるな〜!」
「呼び捨てくらいで何で!?照れなくて良いから!」
「さ、佐助」
「どもんないの!もう一回!」
「さすけ!」
「んん?まだ違和感…もう一度!」
「佐助!」
「良くできました!」

「…」
母子じゃねぇんだから

と小太郎はの頭を撫でる佐助に呆れの視線を向けた(自分のことは棚に上げて)

「じゃあ佐助!私のことも呼び捨てでいいよ!」
「え?いいの?」
「うん!小太郎ちゃんだって私のこと呼び捨てだし!」
「小太郎?え?何、あいつしゃべったの?」

佐助が小太郎を見る。
小太郎はふいっとそっぽを向く。

「ちょこっとね!」
「へ―…あいつが…」

そんなにちゃ…
の事を気に入ってるとは思わなかった

金で動く忍だったのに

って、すげぇ





いろいろと準備していてくれたらしい。

ここからは目立たない格好をしようということで、慶次が普通の鎧を忍以外に配った。

「…安っぽいな」
「うるさいな独眼竜!!大体一番お前が目立つんだよ!!なんだよ六爪流って!!」
「なんだと…!?幸村の真っ赤っかのが目立つ!!」
「ああもう、喧嘩しないの!!」
が畳をばんばんと叩いて威嚇する政宗を止めた。

慶次は落ち着きなおしてまた話を進めた。

「今日はここの宿屋の浴衣着て、明日はこいつを着て出発!風呂敷に包んで自分の装備は自分で管理しろよ!!」

慶次が幸村を見た。

「明日はは俺の馬な」
「なっ…」
「お前じゃ京につかねぇもん!破廉恥破廉恥言いやがって!逆にに失礼だってわからねえのか?」
「う…」

幸村は黙ってしまった。

佐助はフォローしない(というか出来ない)。

「ha!だからなんでお前の馬だよ!は俺の馬に乗り慣れてんだから」
「慣れてんなら譲ってよ!」

幸村が下を向く。
は幸村を見つめた。

「幸村さん」
「すまぬ…某が、殿を必要以上に意識してしまって…」

ぎゅう

「!!!はっ…」
「破廉恥でござる禁止!!」

が幸村にしがみついた。

「何してんの!?!」
「幸村さんが慣れればいいんでしょ!?慶次!そういう事言わなくても良いじゃん!幸村さんはこういうのダメなんだから!」
「…、それでその行動の意味は?」

政宗さんが口元ひきつらせてるが
今は幸村さんの味方だ!

「こうしてればそのうち慣れるかも!」
殿…」

小太郎が幸村を睨むが、それ以上は何もしない。

「いや―…大丈夫かね…女っつーか…だからあんなんなってんだし…」

佐助の予想とは反対に

ぎゅう

「「「「!!!」」」」

幸村がを抱きしめ返した。

「すまぬ、殿、某のために…もう大丈夫でござる。明日…また某と一緒に馬に乗っていただけるか?」
「うん!!」

政宗が立ち上がって部屋から出る。

「…shit!」
「政宗さん?」


なんでこんなにと距離が離れる感じを受けなければならないんだ…

予想以上にうまくいかない…

は明後日には戻ってしまうのに









■■■■■■■■
長い。
そして半端で切って申し訳ないです