「おはよーございます、政宗さ…ん」
爆睡している。

「最近まともに寝ていなかったからな」
小十郎さんも来た。おはようございますと軽く頭を下げる。

「そんなに…忙しかったんですか?」
「誰のせいだ?」
「え?…あ」

もしかして私の心配を?

「政宗さん…」

ありがとう…

小十郎さんが、ふっと笑った。
「まあ、それだけじゃないがな」
「え?」
の頑張りを無駄にしないためにも、津軽と南部と戦をした。北の領土は頂いた。」
「え・・・ええ!?いつ!?」
「竹中半兵衛が来ると決まった後すぐにな。だから俺は行けなかったがな。」

ハードスケジュールだな…

「そ・・・それで、それは・・・」
「年貢徴収についてはこれから話し合いだ。幸い、あの一揆集には武将は混じっていなかったようだからな、それほど警戒せずに進められるだろう。政宗様のことだ、税率はできる限り農民の希望に沿うだろう。」

「仕事が早い・・・」

凄いよ、政宗さん・・・

よかったね、いつき・・・

政宗さんの枕元に行って正座した。

「へへ〜」

髪を撫でた。

「偉いぞ!梵天丸!」
「…呼んでみたかったのか」
「うん!可愛い名前!でも言う機会無かったから、今のうちに…」
政宗さんが寝返りをうった。
起きたかと思って驚いた。

「…」
起きない。

「おわ…びっくりした」
「やましいこともないだろうに」
「怒らせたくないもん…」
「怒らないさ、それぐらいで。むしろ…」

あ、
政宗様から殺気
起きてらっしゃる
余計なこと言うなと訴えている

「梵天丸〜」

が調子にのりだした

「可愛いなぁ…梵〜」
「…」

もしも

もしも幼少の政宗様のそばにがいたら

政宗様は

「……」
やめた

そんなこと考えたって仕方がない

「起きないなぁ…というか、なぜ眼帯をして寝ている?」
「政宗様はめったに眼帯をお取りにならない」
「お母様のことがあって?」
「っ…!!」

がびくりとして俺を見た。
怒鳴ってしまった。
は悪くないのだが
政宗様は起きているから…

が目線を政宗様に戻した。

「政宗さんは、すごいよね」

?」
が再び政宗様の髪を撫でる。

「私は一度だけだけど、お母さんに怖い目で見られたことがある」
「なぜ?」
「幽霊が見えたから」
は淡々と話を続ける。
「…そうなのか?しかし、別に迷惑かけることでも」
「普通じゃない事は、怖いことなんだよ」
「…」
「だから私は、自分の第六感を憎んで隠し続けることで、普通だと思おうとしてた。認めてもらえなくたって良いって、…逃げてたんだ」
が手を止める。
「…政宗さんは、私とは違うね。お母さんを憎んじゃえば少しは楽になるのに。…すごく、かっこいいと思う」

「…」

「ごめんね、軽々しくかっこいいって言葉でまとめちゃって」

「いや…」

は、愛されて育った人間だとばかり思っていた。

「あ!でも今はこの力に感謝してるよ!みんなに会えたし!」
「判っている」

政宗様、いい加減起きればいいのに

…まぁ、起きづらい雰囲気ですよね

「…政宗様、そろそろ起きてください」
を立たせて、少し下がってもらって、政宗様を揺すった。
「…ん、あぁ…」

少し演技臭いが、には判らないだろう。

「おはようございます、政宗さん」
「…あぁ、お早う」




「待て待て待て待てい!俺を倒してから進めー!!」
「やなこった!そんな時間ねぇんだ!」




政宗が起き上がって背伸びをした。
と目が合うと、そのまま動きを止めて、じっとを見つめた。
「?政宗さん、低血圧?元気ないよ〜?ご飯ここに持ってこようか?」
「お前は食べたのか?」
「まだ」
「…ふーん、じゃあ二人分持ってこい。いい天気だ。ここで食おう」
「賛成!持ってくるね!」

がぱたぱた去っていく。

「政宗様、聞いていましたよね」
「ああ」
政宗が着替えるのを、小十郎が手伝った。
「…なんだよ、感想は?ってか?複雑だ。あのヤロ…調べやがったな」
「はは、そうですね。知りたかったんでしょうね」
「…教えてやるって、言ってんのによ」

ああ、本当に複雑そうな顔だ。
自分に聞いて欲しかったような
知ろうとしてくれて嬉しいような

「あいつは、天下統一するのは誰か、知ってるんだよな」
「それは…」

触れないようにしていたこと。


「政宗様ぁ!!伝令…!」
庭に、家臣が走ってきた。
「何事だ」
「敵襲っ…!」
息を切らして単語だけ述べる。
「どこの者だ?現状は?」
「成実様が今追っております…しかし、馬に乗っているため…」
「う…馬…」
小十郎が眉間にしわを寄せた。
前にもこんなことが…
「すみません!道とも言えぬ場を通っていたようで気づくのが遅れ…奴は…」

「慶次何してんだてめー!!」
「あー!先に言うな!前田慶次まかり通るー!!」

声のする方を向くと
慶次がを抱えて、馬に乗って去っていくところ

「なっ…」

「小太郎!追え!!おい!鎧を!早く!」

屋根の上から小太郎が軽やかに飛んだ。
「政宗様…」
女中がやってきて、すぐさま武装を始める。
「追う!小十郎!しばし城をあける!任せた!」
「待ってください政宗様!ここは小太郎に任せて」
が小太郎に前田慶次を攻撃しろと言うか!?助けてくれと言うか!?」
「政宗様っ…しかし」
一国の主が、一人のために…

「もう嫌だ!あいつが俺の居ないところで消えるのは!!ちゃんと、またなって言って、見送って別れたいんだ!」
「…」
政宗が、片手で顔を覆った。
「知ってる…これは、俺のわがままだ」
小十郎が大きくため息をついた。

「冗談じゃありませんよ。政宗様…」
「小十郎…」
「また前のように、が気になって印の位置はでたらめ、誤字脱字だらけの書類」
「なっ…」
「一番厄介なのは表面上は冷静なふりをしてるところ…」
「そ…そんなの俺の勝手だろ!」
政宗が顔を赤くした。
「こちらとしてもそのような状況は避けたい。さっさと奪い返してきて下さい」
「…thank you…」

装備を終えて、政宗が外に飛び出す。

「行って来るぜ!!」
「政宗様!城の事はお任せください!!安心して、をっ…!!」
「ああ!判ってるぜ!!」

見送りながら、考える。

「何のつもりだ…前田慶次…」
を返して欲しくば、もっと野菜をくれと言われたらどうしよう…

小十郎は要らない心配をした。

















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すいません、ろくに奥州でまったりしてないじゃないか
ええ、あまり休まず先に進みますよ(開き直り

最大の問題は小十郎がアホになってきたことです。(お前…