このまま満月を迎えるわけにはいかない。
そう思っていたのはだけではない。
の部屋の前に来た。

「は、はい」
「…まぁ、予想はしてた」

小太郎が、何かを書いているに寄り添っていた。

「小太郎…ちと、貸せや」
「…」
迷っている。
…半兵衛への俺の女発言か?気にしてんのか?

「小太郎ちゃん、ちょっと行ってくるね」
「……」
こくり

小太郎は大人しくの持ってきた本に視線を落とした。

「まだ日は沈まねぇな」
「うん」
先に行ってしまう政宗を追いかけるように、急ぎ草履を履いて、外に出た。



「あのう…」
「んだよ」
手に持っているのは互いに短い木刀。

「二人で夕日を見てドキドキ青春的な何かでは…」
「ah?夕日が見てえのか?見えるじゃねえか」

…もういいです…ぐすん…

「足は踏ん張って腕だけ使え。かかってこい」
「え…」
「女は関節が柔らかいからな。それだけでもいけるだろ。腕だけだ。腰は使うな」
政宗さんが構える。
肩と肘を動かして動きを確認。

うーん…

取りあえず投球フォームのように腕を振る。

政宗さんが受け止める。

「軽すぎだ」
「知ってます!」
木刀を離して次は突き。

弾かれる。

手首を返して下から上に振り上げる。

政宗さんが上半身だけを後ろに少し倒して避ける。
「流れは良いな」
「流れに任せてますから」
「そりゃいいや」
互いに足は一歩も動かない。

何か懐かしく感じる。

大して時間経ってないはずなのに

変わってない、私相手の太刀筋

思い出してきた。

あの時の感覚。

政宗さんの言葉と

戻ったときに感じた、虚しさと

単純な自分の気持ちが


政宗さんが木刀を大きく振った。
隙が見えた。

躊躇うことなく、飛びついた。

今度は受け止めてくれた。

「oh〜…やるじゃねぇか」

背中をぽんぽんとたたかれた。
「足は踏ん張れって言ったのによ…負けず嫌いだな」
「…たい」
「ん?」

「政宗さんのことが知りたい」

勉強してきたんだ。
でも何か足りない気がした。

「…あぁ」

政宗さんの口から

私に向けた言葉で知りたい。

「近くにいて良い?」

「Of course」

政宗さんの着物をぎゅっと強く握った。
皺になったらごめんなさい。


「…俺にも聞かせろ。おまえのこと」

こくりと頷いた。


「あ、おい、夕日。沈んじまうぜ」

そう言われてゆっくり離れて空をみた。
小太郎ちゃんと見たときのような美しさはなかったけれど

政宗さんの隣で

政宗さんと同じものを見て

同じ事を考えてるのだろうと思うと

嬉しいような、泣きたくなるような感覚が全身を巡った

本当に、本当に、また会えて良かった


「一つ、聞かせろ」
「何?」

政宗さんは夕日を見たまま

「もし、こっちへ来るのが強制じゃなかったら、どうしてた」

「…同じ事してた。」
詳しく話していなかったね
戻ったときの、私の感情は
状況話すのにいっぱいいっぱいだったもん
伝えたい
もう一度、会いたかったって

「約束、したじゃん」
「お前は未来で頑張ると言っただろ」
「その時じゃない…勝手に消えるなって、政宗さん、言った」

忘れたとは言わせないかんな!

「…そうだったな」

政宗さんの瞳に私が映った

「絶対、果たしたかった…お別れの言葉と、ありがとう、言いたかった」
「…別れの言葉なんか、もう言わせねえからな」
「そりゃ今の状態にはありがたい!!」
二人でにやりと笑った。
その後政宗さんは穏やかに笑った。

「よく、戻ってきた・・・」
「わ、わ」
政宗さんが私の髪に指を通す
くしゃりと撫でられた

手つきが優しくて、顔が赤くなりそうだ
夕日に照らされてすでに赤いだろうが、この男は変化を見逃さないだろう
誤魔化すように話題を変えた
「あ、あの、あと…刀を返そうと思って」
「やるよ」
「え」
「お前が持っていた方が良い」
「でも小さい頃の」
「俺のことが知りたいんだろ?…持ってな。損はしねぇよ」

銃刀法違反ですがね

「ありがとう!じゃあお手入れの仕方教えて?」
「ああ、貸してみろ」

取り出して政宗さんに渡す。

あ、
やべ、

「待って待って!やっぱり後で」
「なんでだ・・・よ・・・」

刃先が

若干錆びて

政宗さんのチョークスリーパーをくらった。






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どうもシリアスには終われない管理人の病気。

治療法は無いのか

…ないな。(こら)