「うーん、帰ってきたって感じだなぁ…」
朝、庭で背伸びをする。

昨夜は結局、政宗さんと小太郎ちゃんと小十郎さんで並んで寝た。
小十郎さんが、何で俺まで…と言っていたが、大人しく布団に潜り込んでくれた。

「…」
ぐちぐち考えるのはしたくないが、政宗さんには何か言わなきゃいけないだろう。
「うーん…」
あの日の夜は、泣いてしまった理由を何か勘違いされて…
お前には俺の全部見せれるぜ的な言葉を言われて

「…見せてくれ!ってか?今まで以上にいじめっ子になったらどうしよう…」

腕を組んで考える。

「なんとなくごめんなさいって言ったら怒るよなぁ…」
「独り言が激しいね」
びく―!!っとして振り返った。

「半兵衛さん…お早うございます」
「お早う」
にっこりと笑顔全開。

「昨日はなかなかおもしろかった…また君と話がしたい…文を送っても良いかな」
「私で良ければぜひっ…!」

半兵衛が目を細めた。
「…君が語るのは理想論だ」
「知っています。成し得る人の方が少ない…けれど理想は追い求めるものですよ。無ければ未来に進めません。」
「そうだね。だからこそ美しいんだ…夢を見るために…あぁ、やはり僕は君が気に入ったよ」
「どうも…」
半兵衛が落ち葉を踏みしめ近づく。
距離が縮まる。

「政宗君に交渉は出来なかったけど、なかなか面白いものが見れた」
「こ、交渉?」
疑問には答えない。
深く話す気は無いらしい。

半兵衛がの目の前に立った。
「次に会うときは君のことを聞く。何を聞かれても答えられるようにしておきなさい」
半兵衛が髪を一束指に絡めとる。
「大変な課題を出しますね…半兵衛さん」
「君が僕を忘れないように…ね」
髪に口付けを落とす。
「うわ!」
驚いて一歩下がった。
行動を先読みしていたのか、半兵衛は動じない。

「じゃあ僕は帰るよ。秀吉にいい土産話が出来たことだし。」
「はい…お気をつけてお帰りください」
「ありがとう」

そうは言ったものの、その場でさよならは気が引けたので城の門まで見送った。
時折、半兵衛さんが振り向くので、そのたびに手を振った。

「やっと帰ったな」
「慶次」
後ろから慶次がやってきてぽんとの肩に手を置いた。
「慶次も今日帰るの?」
「今日戻るよ」
「?そっか、ありがとね、慶次!楽しかった!」
表現を変えたことが気になったが意味は同じだろう。
「また会いに来るって!…悪いな、守るって言ったのに怪我させた」
「いつまで引きずってんの!大丈夫だったんだから気にしないでよ!」
「…ん、ありがとな」
「キッ」
夢吉がの肩に乗った。
お別れだと判っているようだ。
「夢吉も、またね」
「キィ!」
夢吉のほっぺたをつついた。

小十郎さんが馬を引いてきた。
もう野菜はもらったようだ。

「大した馬だ。もう回復している。」
「虎のおっさんとこの馬だもんな!独眼竜!世話んなった!」
いつの間にか政宗さんも外に出ていた。
「あぁ」

慶次の手が私の頭の上に乗った。

「またな!」
「うん!」

ひらりと慶次が馬に乗って、すぐに走り出した。

手を振って見送った。


「…知らぬ顔があそこまで笑うとはな」
政宗さんが頭をがしがしとかいた。
「知らぬ顔?」
「竹中半兵衛のことだ」
城の中に入る政宗さんと小十郎さんのあとを追う。
さ、さっきの見られてないよね・・・?
「腹の内を決してみせねぇ…」
「…いつもしらんぷりしてるってこと?」
「間違っちゃいない」
「え―…意外―…」
「それはお前だけだ」
政宗さんと小十郎さんは執務室に入っていってしまった。



昼になっても政宗さんと小十郎さんは離れず一緒。

私は小太郎ちゃんと一緒に落ち葉のお掃除。

「小太郎ちゃ〜ん」
「?」
箒をざかざか動かしながら小太郎ちゃんが首を傾げる。

「人に気持ち伝えるって難しいね〜」

何を伝えたいのか判らないときはなおさら。

「…」

小太郎ちゃんは困ったことないのかな。

…爺さんは一方的に喋りそうだから首が前後左右に動けば問題なさそうだ。

「…」

ひらひらと、掃除したそばから木の葉は落ちる。

それを小太郎ちゃんが片手で空中で掴む。

もう一枚落ちる。

同じ手で掴む。

それを繰り返して

ある程度掴みとったら、手を広げて集まった葉を見せてくれた。

また握って、その手を心臓の位置に持ってきた。

「…あ、そっか」

何も、一度で全て伝える必要はない

そう言ってるのだろう

時間はあるから
少しずつでも思ったことを紡いでいけばいい

きっと伝わるから


「小太郎…良い奴だなあんたは…」
少し照れくさそうに下を向いて、手の中の葉を地面に落として再び掃き始めた。

「♪いっぱいあっつめって焼っきいも大会〜」
テキトーなリズムをつけて歌ってみる。

ちゃん!これをこっそり落ち葉の中に入れといて、火をつけたらあらびっくり作戦はどうよ!?」
成実さんが栗を腕いっぱい持ってきた。
「却下」
「え―!?すりるがあっておもしろそうじゃん!」

怖いわ!!



「…いい匂いしてきたな」
「ええ、焼き始めて結構経ちましたしね」
急な来客で仕事の予定が少しずれ込んでいた。
早く終わらせて、の相手をしてやりたい。

「・・・・げほっ」
「・・・・こほっ」

「・・・小十郎、障子、開けろ」
「はい」

すぱああああん!!

「はっ!?」
と成実様がでかいうちわで思い切り匂いと煙を送っていた。


何してやがるてめえらあああああああ!!

いい香りを送ろうと・・・

ものすごい煙い!!


「焼けたよ!」
「持って来いよ」
「熱い!」
「じゃあ冷ましてから呼べ」
政宗様が机に視線を戻す。
「なんだよー、つれないなあ、殿!」

俺から見れば、政宗様が早く仕事を終わらせたくてそんな態度をとっていると判るが・・・

は邪険に扱われてると思ってしまうのでは・・・

「判った!!」
「・・・」
くるりとあっけなく回れ右。
成実様と一緒に走って去っていく。
よくできた子だ・・・

だだだだだ
「・・・、戻るの早い・・・」

やな予感する・・・

「冷めるまでー!!ロシアーン茶巾しぼりー!!」

「茶巾しぼり作ったのか・・・ろしあん?」
「はずれがあるよ!中に何かが!」

皿に載っているものは綺麗に丸められている。

は結構器用だ。

「どれがいいー?」

「どれでもいい」

「では、俺はこれを」

三人一緒に食べようと言われた。
一向に政宗様が目線をあげないため、俺とは政宗様が食べるのにあわせて食す。

ぱくり

「・・・」
「・・・」
「・・・」

「〜〜〜〜〜NO!!What・・・What is it!!?」
政宗様が筆を投げ出して両手を喉に当てた。
「政宗さんはずれ〜。えっと、イチジクとアケビと、薬味もちょっと、人参と鰯の目玉と鮭の・・・」
「まずい!まずっ・・・水!!」

小太郎が泣きそうな目で水を持ってきた。
・・・お前も当たったのか・・・

政宗様が無理やり飲み込む。
・・・残念でしたね、普通のならすごくおいしいのに・・・
、うまいぞ。」
「ありがとう、小十郎さん!」
「俺にもそっちをくれ!!」
「あー!」

政宗様がの食べかけに食らいついた。

「指まで食うなー!ばかー!!私の分!!」
「うるせえ!!」
「ぎゃあー!!キモい!」

政宗様がの指を舐めている・・・
・・・台詞を聞かなければ恋人同士のようなのだが。

離れ離れになって、お互いの大切さに気付くとか・・・そんな展開はないのですか



政宗様はやる気が失せたと言って庭に出た。
はごめんなさいと謝り続けた。

ふと、机の上の書類を見ると
…政宗様、終わってるじゃないですか。
なぜそんなにいじめるんですか。


立ち上る煙の元へ行くと、すでに騒がしくなっている。
綱元が芋を灰の中から取り出す。
家臣が取り囲んで配られるのを待っている。
「あちっ!あちち!あち!」
成実様が二つに分けた芋を持って手をせわしなく動かしている。
「成実さん!何先に食べようとしてるんですか!」
「げっ!いや!ちゃんのために冷ましてんだよ!」
「げって言ってますよ!」
「細かいこと気にしないの!あいよ!殿!片倉殿!」
成実が良く焼けている芋を二つ投げた。
「おう」
「成実様、食物を投げるのはやめましょう…」

「…」
小太郎がに半分に割った芋を差し出す。
「ありがとう」
が受け取ろうとすると一度引っ込め、その後口の近くに持っていった。
熱いから食べさせてやろうとしているのだろう。
「…小太郎ちゃん、手熱くないの?」
こくり

「でも…大丈夫だよ…あ、ほら平気…あっつう!!」
試しに触っていると徐々に熱くなり手を引っ込めた。

「〜!」
「大丈夫!いや、ごめん!侮っていた!」
「忍に甘えちゃいな!さ―!殿!食いましょう!」

「…おう!」

政宗様はと小太郎に向けていた目線を成実様に移した。
全員で食べ始める。
は芋を持った小太郎の手を両手で包んで食べている。

政宗様、嫉妬しませんか?

小太郎目線のは絶対かわいいですよ

小動物ですよ!?

栗鼠みたいに違いない!

「小十郎、口に出てる」
「はっ!?すみませ…」
政宗様が腰に手を当てた。

「俺は小太郎みてぇにはなれねぇ」
「判ってます…すみません、余計なことを(というか小太郎みたいな政宗様は嫌だ・・あっ!想像してしまった!嫌だ!!)」
「…なんか今考えたか?」
「いえ、なにも」
「…あぁそう」

しばらく政宗様に睨まれた。








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とりあえずお別れ。
半兵衛・・・キャラ活かせなくてごめん・・・

そして夢の中はまだ秋だぜ…
現実の季節に追いついていない…

小太郎の『時間はあるから』の言葉に
『絶対見つけて、ここに連れてきてあげるから』
の意味を込めて