政宗さんのお隣の部屋が空いてるんだって。
「遠慮します」
「遠慮することが図々しいぞ」
広そうだ…というかそこは客間じゃないよね?

問答無用で引きずられているんだけどね。

たどり着くとぽいと投げられるしね。
「あぁほら、私にはもったいないくらい広い…じゃあ小太郎ちゃん、布団並べて寝ようね!」
こくこく
「…ha?なんだそりゃ」
「疲れてるのに天井裏で寝かせるわけにはいかないよ」
「なんで隣で寝る必要がある」
「折角だから?」
こくこく

小太郎はいつもより早めに頷いている。
そんなに嬉しいか畜生。

「…小太郎にも部屋をやる」
ふるふる
「…ah―…の護衛のためにって理由か?」

そりゃ職権乱用っつーんだよおぉぉ!

「政宗様―!味見をお願いできますか!?」
大声で呼ばれる。
「たりめぇだ!…この話はまた後で…用が済んだら調理場に来い」
「はい!」

政宗さんが居なくなってから、小太郎ちゃんと向かい合って座る。

「ねえ、爺さんは元気だった?」
こくり
「そっか、よかった・・・私もそのうち会いに行きたいな」
「・・・」
小太郎が、思い出したように懐に手を入れた。
紙を取り出し、差し出した。
「あ・・・お手紙」
受け取って、広げると
前より見やすい字。
小太郎ちゃんが言ってくれたのだろうか
嬉しい

「・・・このような事になってしまったが、風魔は、お主に任せる。ご先祖様と、未来のワシの、戯れを許して欲しい・・・」

馬鹿だな
また私の心配して

「お手紙、返したいな。字、綺麗じゃないけど、いいかな」
こくり

「筆じゃなくていいかな・・・ペンと・・・ルーズリーフで・・・申し訳ないけど」

風呂敷を広げてバッグを取り出す。
小太郎ちゃんが興味を示す。
「そういえば初めて見せるね。面白いものあったかな―…」
前来たときと同じバッグに代えの下着、本少々、非常食に…
「化粧水入れてたんだっけ」
一応女の子ですから。
取り出して、見せてみる。
「?」
「顔を洗った後にこれを顔につけるとね、お肌つるつるになるんだよ。」
「…」
ぷに

小太郎がの頬を人差し指で押した。

ぷにぷにぷに

「…こら、今は荒れてるから…」

ふるふる!

「小太郎ちゃん・・・」
何かあまりにぷにぷに突かれるから

「私にもぷにぷにさせろー!!!」
「!!」
うっかり襲い掛かってみました。

「あははは!!お返し!!うりゃ!!」
「〜!!!」
「安心して!フェイスペイントには触らないよ!!お肌つるつ・・る?」
「・・・」
思いのほか荒れてる・・・
しかも目の下にくま出来てるし・・・
それに、少しやせた・・・?

「小太郎・・・ちゃん・・・。寝てないの?」
・・・ふるふる
「私の居ない間、ちゃんと食べてた?」
・・・こくこく

嘘つくなよ・・・
「ご・・・ごめんねえ・・・」
「!!!!」
小太郎ちゃんがおろおろしてしまった
涙ぐんでごめん
だって・・・だって・・・
「ごめんね小太郎ちゃんー!!」
「!!」
がばあ!と抱きついてしまった
そういえば白石城ではふらふらしていた
それなのにここまで自分の足で・・・

小太郎ちゃんの口がパクパク動く
解読できないけど小太郎ちゃんのことだから、大丈夫だよという意味を言ってるのだろう

「ご、ごめんね!!今日はいっぱい食べて、いっぱい寝ようね!!一緒に・・・」
こくり

小太郎ちゃんが抱きしめ返してくれた。

今の自分はかなりガキくさい顔してるんだろうなあと思いながら
小太郎ちゃんの暖かさに甘えた。




半兵衛さんが居るが慶次も一緒に夕食を食べる。
約束だから私は半兵衛さんの隣に座って頂くことにした。
夕食には政宗さんの嫌みの如く骨の多い魚が出た。

私の隣は小太郎ちゃんが座る。
政宗さん、小十郎さん、慶次は向かいに座っている。
観察されているようだが、そんなに嫌な空気ではない。

「あの後別の馬に乗り換えたんですけど、嫌われずにすみました」
「それはよかった。しかしあまり気にしなくて良い…君の手は不思議だから馬も慣れていなかったんじゃないかな」
「不思議?」
「名字持ちだから、どこのお姫様かと思ったんだけど、貴族のような手でもなければ、かといって女中や農民の様に仕事をしている手でもない。」


政宗が箸を止める。
「…」
話がしたいというから何だと思えば、を探るのか。
…しかし、名字まで名乗ってしまったか…厄介な事に…

「え?ああ、名字…そんな身分でもないですよ〜。そのうち女中みたいな手になってみせます!!料理上手くなりたいですし!!」

は普通に雑談モードだ。

「ぜひ君の作った料理を食べてみたいね」
「あははは!毒盛ってないのに腹痛おこしたりしてね!」
「それは怖いな」
「冗談ですよ」

というか毒という単語を出すな。

「半兵衛さんは豊臣秀吉さんのお友達なんですよね?」

その話をここでそんな直に聞くのか!?

「そうだよ。秀吉は僕の友だ」

慶次がピクリと反応する。

「どんな方なんですか?秀吉さんて」

…いいぞ、質問攻めしてやれ

「立派な男さ…僕は秀吉に命を捧げる」
半兵衛が小声になる。
「秀吉さんも天下統一を目指してるんですよね」
「秀吉の目には天下統一はただの通過点だ」
「…天下統一もすごいことだと思います」
「そうだね、でも秀吉は世界を見ている…彼はここにとどまって良い人間じゃない。世界に目を向けるべきだ」
「…」

が何か考え込む。

「気分を害したかな?政宗君は天下統一が目標なのに」

「いえ、あの…」

小声でしゃべる二人だが、意識を集中すれば聞き取れる。
雑談する周囲に黙れとも言えないからそれで我慢する。
は何か言いたいようだが言いにくそうだ

俺が許す!言ってやれ!


…政宗様、睨みすぎです


「世界は広く、素晴らしい文化がたくさんあります。
でも、日本もそれを構成する国の一つ…貴ぶべきものがたくさんある…
それが戦により破壊されている…それは、寂しいです」
「…」
「天下を統一し、国が安定すれば、世界はより近いものになるのではないでしょうか…
自国を尊び、良きものを世界から吸収し、害は正す…侵略より共存すること…
日本を繁栄させるにはそれがいいと私は思います…
だから…通過点なんて言わないで…そのために命を落とす人だっているんですよ…?」

がまともなことを言っている。

「・・・君は何を知っている?」
「何も知りません・・・ただ、生きている事が素晴らしい事だという事は知っています」

小太郎が少し身体を強張らせる。
半兵衛を警戒する。

「・・・面白い考え方だね」
「いい加減にしろや!!」

キレたのは政宗だった。

「違うだろうが!そこは、残念だよ、君と僕は分かり合えない・・・だろうが!!どれだけに甘いんだ!!」

落ち着けと、よりによって慶次になだめられた。

「失礼だな・・・僕だって人の意見を聞く耳は持っている。この子の言う事はどこか説得力がある。」

「・・・共感する気はないくせにな」

「それが残念なんだよね」

「判ってますから大丈夫です。みんな強い思いがあるから天下を目指せる・・・私の気持ちを判ってくれなどと言いません」
「・・・」
小太郎が元気をだしてとの頭を撫でた。
その姿を見つめる。
「・・・
「何ですか・・・政宗さん・・・」

「シリアスモード引きずって隠してる気かも知れねえが、魚の骨がひでえぞ」
「・・・気付かれたか・・・」

無残なバラバラ焼き魚を手で隠した。







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日本と世界の事について管理人は詳しくありません
ドンマイ、自分・・・