政宗さんたちも北の農村に行っていたことを知って、驚いた。
いつきが心配していたから会いに行かせるからな、と言った政宗さんはもう怒ってはいなかった。
部屋に荷物を置いたから確認しろと言われ、夕食前に部屋に来たんですが。
回れ右をして来た道を戻る。
「小太郎ちゃん」
天井裏から現れ、すぐ後ろに着地した。
「見た?」
こくり
「幻覚じゃないよね?」
こくり
調理場に来ると、急いで政宗の姿を探した。
「政宗さん」
料理の指示をして、自らも作っていた。
初めて見た、料理姿。
エプロンをしていないのが残念だ。
割烹着姿見たいな…じゃなくて
「早いな、ちゃんと確認したのか?」
「部屋にとても生活感があった」
こくり
「ha?」
「何してやがる…竹中半兵衛…」
と小太郎に手を引っ張られるままの部屋に来ると、そこには半兵衛と部下が荷物を広げてくつろぐ姿があった。
「まだやることがあるんで泊まらせてくれと成実君に言ったら、いいんじゃないの?と言ったが?」
「成実―!!!」
「慶次君と一戦交えてるよ」
「…」
慶次と戦うことに気を取られてるとこを話しかけられたのか?
政宗さんに柱の裏に隠れておくように言われたので、小太郎ちゃんに気配の消し方を簡単に教えてもらって大人しく会話を聞く。
「慶次君も泊まるらしいね…慶次君の部屋とは真逆の部屋はと聞いたらここだと言われてね。距離を置きたいんだ」
「前田慶次をあんまり近づけたくない奴がこの部屋の主なんでね!もうこの際宿泊は許してやるから、遠慮して他の客間に行けや」
え?なんで?
……(貞操…)
「誰だい?」
「あんたのやることってのはなんだ?」
互いに質問。
小太郎ちゃん…また空気重いね
こくり
「…でてこい」
そういわれたのでが急いで飛び出した。
「はいっ!いぃぃぃ!?」
袖を捕まれて強引に引き寄せられた。
政宗が屈んで、の肩に腕を回し顔を近づける。
「俺の女だ」
小太郎も半兵衛もも目を丸くした。
小太郎が四つ足歩行での足下に行き、足にしがみついていやいや首を振った。
「こ…小太郎てめぇ…」
誤魔化すために言っているとなぜ思ってくれねぇんだ…
は固まっている。
こいつらに演技というものを教えるべきだった…
「…君の女なのに、床は共にしないのかい?」
…そうだよな。
なんかもうこれで通すの嫌になってきた。
「…聞きましたかみなさん」
やっと口を開いた。
「女だって…犬でも猫でもメスでもなく!!しょ…しょ…」
昇格だあぁぁぁぁぁ!!
そう叫んで政宗に一度しがみつき、離れて小十郎の名を呼びだす。
報告しなくていい!!
その雰囲気から何かを察したのか、半兵衛がにやりと笑った。
「こんにちは、さん。まさかこんな所でまた会えるとはね」
「…また?」
「あっ!ど、どうも、騒がしくしてしまってすいません。政宗さん、ここ来る途中で会ってね、親切にして頂いたの」
小太郎を足から引き剥がして、半兵衛に向けて正座する。
「わたし他の部屋で大丈夫です。ここを使ってどうぞ。ただ私の荷物を…」
政宗さんがあれだと指さした。
バッグが風呂敷に包まれてて何か笑えた。
半兵衛の部下がそれを取り、渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
そんなの姿を見て、政宗は目を細めた。
この顔。
何で相手が誰でも笑顔を向けられんだよ。
外を歩いて少しは社会勉強できたかと思ったが。
もっと警戒したって誰も咎めないのに。
「僕のやることと言うのは、君と会うことだよ」
「へ」
が目をまた丸くした。
「君のことが気になる」
ふわりと笑って、ふっくらとした唇からそんな言葉を優しく言われれば、誰でも口説かれてると思うが
「そそそそれは気のせいです」
には怪しまれているとしか思えないようだ。
「政宗君、彼女と話がしてみたい」
「だめだ」
を立たせて引き寄せる。
「すいません、部屋を確保して、小太郎ちゃんを休ませてあげたいので…お話は夕食のときにでも…」
「ばっ…」
「それは素敵なお誘いだね…楽しみにしているよ」
お辞儀をして部屋を後にした。
「何であんなこと言ったんだ」
「え?小太郎ちゃんは白石城からずっと走ってきて疲れてるだろうし…夕食の時は半兵衛さんもいるから私の話しする訳にはいかないでしょう?説明は夜じゃダメ?」
「だからって夕食…ah〜このマヌケ」
「え!?」
俺が近くにいたいと思ってんのに、てめえのためにいつもより気合入れて調理してるってーのに、
良い度胸だ。
■■■■■■■■
政宗がヲトメ化した・・・
ごめんね、政宗、人多すぎて君との時間が少ないよ・・・