は俺の前に乗り、姉上にお別れを言う。

「また会う機会があると思うわ。」
「そうですよね!では、その時まで!」
「梵天丸様によろしくね」
「姉上、あまりの前で梵天丸と呼ぶと…」
「ふへへへ…はい、梵天丸様ですね…可愛い…梵ちゃん…梵たん…ボンタン?」
、訳判らなくなってるぞ」

あぁ、絶対に政宗様を梵と呼びだすぞ…


手を振って白石城を後にした。


小太郎が消えたが近くにはいるだろう。
慶次は後ろからゆっくりついてくる。
思いの外体制維持が難しいようだ。

…詰めすぎたか?


「…、大丈夫なのか、腰は」
「大丈夫だよ!よく効く薬塗ってもらったの!」


と一緒に馬に乗るのは初めてだが…
…近い
……良い香りがするな


「…」
いや、それは当たり前として


「悩んでいるか?」
「え?」
「何となくな…」


うつむいて黙ってしまった。


どうしてこう正直なのだろうか。


「…何が起きたかは俺にはまだ判らないが…」
「ごめんなさい…」
「忍の一部を探しにあてたしな」
「!!」

顔は見ずとも驚いて戸惑っているのが判る。

「どう思った?真実は話さず嘘をついた方が俺たちに迷惑かからないんじゃないかとか思ったか?」
「…えと…あの…」

俺の口から言っていいものかどうか判らないが・・・

「…なぜ、政宗様がを城に連れてきたか判るか?」
「政宗さんは…私に傷ついたからだって…」

あぁ、やはり。

「…違う。が、あの日、政宗様を突き飛ばしたからだ」

「…そう、な、NOー!?えぇ!?マジですかー!?痛ぇなこいついつか見てろよ10倍返ししてやるぜ!って!?そんな理由かよ!」

少し調子が戻ってきたようだ。
素直に言葉の意味を受け止めすぎだ。


「違う…よく考えるんだ、…」
「え?」

「こんなに細い腕で、あの政宗様を突き飛ばしたんだぞ?」

しかも戦中の政宗様を。


「火事場の馬鹿力だって限界があるし、そう出るもんじゃない。政宗様を助けたいと本気で思わねば不可能だったろう。
政宗様は、の行動を信じたんだ。はあの時、政宗様のために、立派な働きをした…まあ、連れて帰れば楽しそうだという気持ちもあったかもしれないけどな」
「…そっちのがでかいような…」

「俺はもちろん捨て置けと言ったし、町に置いておけば誰かが拾うだろうと言ったがな」
「ブラック小十郎…でも普通はそっちだよね…」


今でも思い出せる、政宗様の、こいつを連れていくと言ったときの顔。

子供がおもちゃを見つけたような、楽しそうな、嬉しそうな顔。





―なあ、小十郎、きっとこいつは嫌な奴だ
置いて行っちまえばここであった事をべらべら喋っちまう
独眼竜は女に庇われる軟弱者だと噂を流す
それはお前も困るだろう?
だから連れて行こう
俺がこいつを躾けてやるから





・・・そんな事微塵も思っていなかったでしょう?政宗様・・・
子供の言い訳じゃないですか。

素直に嬉しかったと言えば俺だって・・・


横から木の葉のガサッという音がした。
小太郎だろう。


「小太郎…お前だって・・・を傷つけた後に追撃しなかったのは、の行動に驚いたんだろ?なぜ庇うのか判らなかっただろう?」


またガサッっと音。
肯定の意味なのか


「俺は・・・できることならには嘘偽り無く起こったことを言って欲しいと思う…も、政宗様を信じて欲しい」
「小十郎さん…」
「政宗様もきっとそれを望んでいる…」
「う、うん。めんどくさいとか言われそうだけど、話してみる!」


吹っ切れたようだ。
は元気があった方が良い。



「そういえば豊臣とのいざこざはどうなってるの?大丈夫なの?」
ふと思い出したようで、が出来る限り体を回旋させて後ろを向いた。

「知っているのか。大丈夫だぞ?」
「は?」

呆気なく答えすぎた。


「戦にまではなるまい。政宗様に直接聞いたほうが安心するか?…しかし、政宗様とすぐに会話は出来ないだろうな。今日、竹中半兵衛という者が来るんだ。だが長居はしないだろう」

「…」


慶次の様子を見ようとしたら思いの外近かった。

「なんだい?俺が恋しくなった?」


聞こえてただろうが。
…慶次なりに気を使っているのか?

「夢吉が恋しくて」
「またそういう事言う!!」
「キッ!」

夢吉はやはり馬の頭の上で可愛らしく指をしゃぶっている。





門をくぐり、案内されるまま道を進む。

「半兵衛様!ごきげんですね!」
「そうだね…」
「何か策がおありで!?」

半兵衛が手を握ったり開いたりしている

かと思えばじっと見つめたりしている。

「…帰りは、同じ道を辿ろう」
「…へ?は、はぁ…」


もしかしたら面白いお土産が手にはいるかもしれない。








「見えた見えた!城ー!!」
「思いの外早く着いたな」

途中ではもっと飛ばして平気!と言い出した。

怪我は本当に大丈夫なようだ。


「へー!結構栄えてんじゃん!早く行こうぜ!」

荷の重みにも慣れてきた慶次が小十郎とを抜いた。


「あぁ!慶次何してんの!」


小十郎さんも飛ばした。
後ろにいた小十郎さんの部下が、えぇ!?と驚いた。


町に入ると、人々は隅によって道を作っていた。

それをいいことに慶次はスピードを少ししか落とさない。

「子供が飛び出すかもしれないから気をつけなさい慶次ー!!」

まつさん化してきた。


「…それもそうだな」

小十郎さんがいきなりスピードを落としたため前のめりになった。

小十郎さんが支えてくれたが。








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今頃城へつれてこられた理由
いや、小十郎さんに言って欲しくて
ここまで伸ばしました
それにしても半兵衛様・・・むむむ難しい・・・