宴の前に医者のおじいさんが部屋に来てくれた。

包帯をほどいて傷の様子を見る。


「…なんと治りの早いことか。持ってくる薬を間違うてしもうたわ」
「…そうなんですか?」
「もう塞がりかけておる。そのまましばし待っておれ」

おじいさんが出ていってしまった。
傷口はわき腹の方にも少し及んでたため、仕方なく下着姿だ。

下は袴を借りた。(←気に入ったようだ

「治りが早いか・・・ふーん」

私が存在できるのは第六感のおかげとか爺さんが言っていた。

関係あるのだろうか?

「いやでも腕の傷は・・・あれ!?」

消えてる。
瘢痕化していたのにきれいさっぱり
な、なんで?



!」
「慶次このやろう」
「こわっ!あれ、ゴメン!じいさん出てったから終わったのかと思った!」
慶次が障子を開けて、ごめんと言いながら入って来やがった。

「…ちょっと!遠慮しろ!」

すでに敷かれていた布団をたぐり寄せて頭からかぶった。

「うーん、でももうすぐ着いちゃうし、顔見れなくなるの寂しいからさ…」
「それは…嬉しいけどさ〜…」
「…、肌白いのな…触りたくなる…」
「!!」

いきなり優しい声でそんなこと言うから顔が赤くなった。

慶次が調子に乗って手を伸ばしてきた。

「おじーさーん!早く薬っ…!変態がいます―!」
どうすればいいか判らず、思い切り叫んだら障子が開いて

「変態!?大丈夫でござる某が守っ破廉恥でござる―!!」
「ゆっきむっらさーん!守ってくれよ!」
スパァンと障子が開いたかと思ったら速攻で閉められた。

「相変わらずだな真田幸村!おもしろっ」
「そう言ってやるなよ…」

「おや、若いもんはええのぅ…しかし今はわしに遠慮してくだされ」

気がつくとおじいさんが部屋をのぞいていた。

「あぁ、わりぃ、俺にかまわずやってくれ」
「そう言うわけにもいかんなぁ…」
「そうだ!出てけ!」

慶次が仕方なく立ち上がる。

「…、しっかり治せよ」
そう言った慶次の顔はにやりと笑っていた。
…何だ?







伊達の宴をバカ騒ぎというなら武田は和気あいあい。
ゆっくりと時間の流れる楽しい宴だ。

一部分を除いて

「ちょっと!前田の風来坊!それ俺の!」
「おかわりすりゃいーじゃん!」
殿ぉ…飲んでらっしゃるか?某が酌をするでござる…」
「幸村さん酔ってる?」
「はっはっは!今宵は無礼講じゃ!」

幸村さんに少し酒をついでもらっていただく。

幸村さんは私の隣にべったりついて、今にも寄りかかってきそうだ。

お酒自体はそんなに強くはないようだが、幸村さんがこんなになってるんだ。

気をつけねば。


「…殿に食べさせてもらうと…いつもよりもおいしく感じるでござる」
「昼間の団子?」

幸村の目がトロンとしている。

「某…殿の心の広さに感服したでござる…殿…」

「……」


やばくないか。

幸村さん、頬を紅潮させて、下から私の顔をのぞき込むようにして…

完全に酔っている…


「幸村さん、お酒はほどほどに…」

今でさえそんな状態なのにさらに飲もうとしている。

殿と飲む酒はうまい…某…殿の事…」
「キー!!」

夢吉が幸村さんに飛びついてきた。

「何でござるかぁ!殿ぉ!続き…某は…某はぐはっ!

皿が飛んで幸村さんのうなじに当たった。

「旦那!滑った!わりぃ!」
「佐助さん…」
手裏剣投げるみたいなフォームでしたが?





その夜は勢いでお館様の部屋にお邪魔した。

幸村さんは酔いのせいですぐに寝てしまったが、私が審判で、慶次と佐助さんと信玄様の三つ巴全力枕投げ大会をした後で寝た。
(屋敷が結構壊れた)


朝になると言わなければいいのに慶次が昨夜は楽しかったとか大声で言うから、いじけた幸村さんを慰めるはめになった。

「幸村さん寝ちゃってたんだから仕方ないよ」
「うぅ…しかし某も枕投げしたかった…」
「また今度!ね?(枕硬いからあまりやりたくないが)」
「うむ…楽しみにしている」
幸村さんが立ち直った。

殿!某達は用あって奥州まで送れぬ!気をつけて行くでござるよ!」

「うん!豊臣の人がいるんだよね…もし会っても変な事しないように気をつけるよ!」

「うむ!」


「お〜い!準備できたぞ!」

佐助さんが普通に歩いてきた。

ちゃん、気をつけて。またな!」
「はい!」
私の右手を幸村さんが、左手を佐助さんが握って引かれた。
あぁ、武田のこの二人は凄まじく癒し系だ…
三人並んで門まで向かう。






門の前に行くと信玄と慶次が話していた。


「お、来たか!」

、伊達に文を送ろうかとも思ったのだが、今からでは遅い…眠っている間にできれば良かったのだが、すまんのう」

「お気持ちだけで嬉しいです!ありがとうございました!」

「いきなり行った方が楽しいって!よし!乗れ!」

慶次に引っ張ってもらって乗る。


手を振ってお互いにバイバイの挨拶。




「さぁて!行くぞ!」

「お―!」


待ってて下さい小十郎さん!






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幸村は何か事件が起こらないと恋愛感情もたなそうだなあと個人的な意見でこんな話に。
今までは一緒に居て楽しい人、守ってあげたい人といった感じで、これからはずっと一緒にいたい人といった感情に変化・・・するといいなあ(え?希望?)
あ、一旦お別れですが、また出ますよ〜
ひとまず奥州へ向かいます。
次は小十郎さん!!
(あれなんか珍しく長い文だ)