武田信玄の元にを運んだ後、3人は庭に出た。
「…旦那、本気で殺しにいったんだよな?」
「…そうでござる」
「あれだけで済むとは…ちゃん、やっぱり何か武術を…?」
「そんな風には見えないけどな」
幸村が庭の木に目線を移す。
「一度、槍を使ったところを見せたことがある」
「おいおい、旦那、まさかそれで避けれたってか?」
「とっさに体を傾けて、斜め前に踏み込んできた。…この武器の形状と某の動作を覚えていたのだろう…」
「…旦那の殺気にあてられながら、前に踏み込んだ?だったらすげえな」
「逆に殺気なんか感じ取れないんじゃねぇか?」
3人は吹き出した。
「ありえる…鈍そっ!」
「最大の武器であり最大の弱点ってか?」
「しかし二度とあのような目に遭わせたくない…もっと精進せねば!慶次殿!手合わせ願う!」
「っしゃあ!そのために外に出たんだろが!」
ガキィ!と、刃の交わる音が館にまで響く。
武田信玄と向かい合って座る。
怪我を案じてくれて、無事でよかったと言ってくれた。
「先の戦にての勝利、噂にてお聞きしております。おめでとうございました。」
「うむ。幸村も気が立っていたのだろう…主としてわしからもお詫び申す。」
武田信玄が小さく頭を下げた。
いそいでやめて下さいと言った。
「いえ、戦後であるにも関わらず、こちらでこのような扱いをして頂いて…感謝しております。不用意に森をさまよった私にも非が御座いました。」
「広いお心を持っておられるな…治るまでゆっくりしていくと良い。安全は保障しよう。」
「その様に言っていただけて、とても有り難いのですが…私は奥州に向かわねばなりません。もしよろしければ馬を一頭貸していただけないでしょうか?」
「そのような怪我でか?」
…信玄あんた傷口見たんか?
医者がやってくれたのよね?
着替えは女中さんよね?
「…そのような目を向けるな。見ておらん。あやつらもな。医者に聞いただけじゃ」
さすが武田信玄。すぐ察してくれた。
「安心しました。怪我は大した事ありません。大丈夫です。南方に片倉小十郎殿がいらっしゃると聞いたので、彼と合流したいのです。」
「確かに居るのう…しかしそろそろ独眼竜の元へ戻るはず…ならば仕方ない。明日、ここを発つと良い。」
「ありがとうございます」
出来る限りお辞儀をした。
退室しようと右腰をかばって立ち上がる。
信玄様が手を貸そうと立ち上がろうとしたので手で制した。
それほど重傷ではない。
庭から金属音がするのは3人の誰かだろう。
障子を開けると佐助さんが立っていた。
手にお茶の乗ったお盆を持って。
「話終わった?」
「うん。明日奥州に向かうよ」
幸村さんを説得してとりあえず今日中に団子食おう
「やっぱり?そう言うと思った…こっちおいで」
佐助さんの後ろをついていくと、戦ってる幸村さんと慶次。
二人とも楽しそうだ。
「旦那、すごいよね」
「うん、かっくい―」
「ちゃんはあれを避けたんだよ?」
「あっ…あんなに凄まじくなかったよ」
「それでも誇って良いことだ」
「…そぅかなぁ?」
縁側に山ほどの団子が置いてあった。
「これ…」
「旦那とお茶したいんだろ?急いで買ってきたよ…ただし俺と風来坊の分もあるけど。二人きりにはさせないよ?」
「ありがとう佐助さん―!!団子代は…」
「ああ、旦那の財布スって買ってきたから心配いらないよ」
「やるなぁ…」
佐助さんが大声を出して呼ぶと二人はマッハで飛んできた。
「佐助でかしたぞ!」
「腹減ってたんだ!」
幸村さんと慶次が縁側に腰掛け、佐助さんはあぐら。
私は足を伸ばして座る。
「「「「いただきます!」」」」
みんなで両手に一本ずつ持って食べ始める。
「おいしい!」
「殿、いっぱい食べて怪我を治すでござる」
「はー!?怪我には米だろ!」
「…肉じゃない?」
「…ど、どれも大事!喧嘩しない!」
色とりどりの団子がどんどん減る。
桜色の団子をとろうとしたら、幸村さんも狙っていたようで、取る寸前で手が触れた。
「!!すまぬ!」
幸村さんがばっと手を引っ込めた。
串を取って幸村さんに差し出す。
「はい、あーん」
「まっ…また…殿…」
「ずるいよ旦那!」
「またって何!?!」
幸村さんが少し顔を赤くして、ぱくっと食べた。
噛むたびに顔の赤みが増す。
「おいしい?」
「う…うむ」
「ちゃん〜」
「〜」
あーと佐助さんと慶次が口開けた。
「迫るなよ!怖いよ二人!」
「だっ…駄目でござる駄目でござる!某にだけじゃなきゃ嫌でござる!」
「ぐばぁ!!」
幸村さんが飛びついてきた…
「そこはアカーン!いってええええ!」
「わ―!すまぬ殿―!」
「何気に独占欲丸出しじゃん旦那!!」
「はっはっは!賑やかじゃのう!」
どすんどすんと、貫禄たっぷりな歩き方で武田信玄がやってきた。
「お館様!」
すぐに幸村さんが私から離れた。
「どうしました?大将」
「、前田の風来坊!望みどおり、駿馬を用意したぞ!!なに、期待は裏切らんわ!!」
「さっすがぁ!ありがとな!」
「…いつここを発つのでござるか?」
慶次がの腰を見る。
「…ちょっと今乗ってみて様子見るか?」
「うん!」
「そう言うと思ったわ!!」
信玄が合図をすると、家臣の方が大きな馬を連れてきた。
「乗るが良い」
庭に出て乗せてもらう。
後ろに慶次が乗る。
最初はゆっくり歩かせる。
「へぇ、風来坊、あんたそんな丁寧な乗り方できんだ」
「おいおい!人をなんだと思ってやがる!」
「…某も…殿と乗りたいでござる…」
「ゆきむるぁあ!ならば男らしく誘うが良い!」
「さっ…誘う!?」
少し馬が歩みを早める。
夢吉が馬の頭に乗って楽しそうにしている。
「どうだ?」
「あれれ!?いける!!大丈夫!もっと振動きても平気だと思う!」
「本当か!?じゃあ…」
今すぐ行っちまうか、と言おうとしたが、空が赤く染まっていた。
「早朝に出よう。いいよな!?おっさん!」
「うむ!せっかくじゃから宴を開こう!」
やったぁ!と4人と1匹が万歳して喜んだ。
夢吉言葉判るんか!?
夢吉はノリがいいんだよ!
すげぇ猿だ!
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主人公ちゃん、根性で避けました。
そんな大事ではなかったよ良かったね幸村