「はぁっはぁっはぁっ……。」

全速力で走った。
右も左も前も後ろもどうでも良い。
とにかく逃げた。

「あっはっは……ブーツの鳩尾蹴りは……痛いだろ―……。」

組み敷かれて押さえつけられて
怖かったけど抵抗しないでおとなしくして力が緩むのを待って
一人には蹴りを
もう一人には

手が震えている
持っているのは短刀

「まさむねさん……。」
躊躇わずに振ったよ
怖かったよ

急所は外した

切ったのは静脈だ

刃からは血が滴っていて、皮膚を裂く感覚は残っているが

殺してはいない……。
大丈夫……大丈夫だ……。
ひたすら自分に言い聞かせる

「……っ慶次……。」
はぐれてしまった。
とにかく森を抜けなければ。








「……これで最後だと思ったのだが」
人の気配。
佐助ではない。

「一人……だが絶対に逃がさぬ」

こんなところをうろうろしているのだ。
お館様への恨みを持って逃げれぬ者かもしれない。








「忍!はどこだ!」
「急かすな!気配はあるんだ!……けど的確な位置までは……ちゃんのは感じ取りにくいんだ。」
「未来の奴だからか?」
「……そこまで知ってんのかよ。」








「う〜」

どんどん迷ってる気がする。
周りがさっきよりも暗い。
しかしわずかだが日の差し込む方向からこっちが東のはず……。
お腹が空いた。
「まつさんのお弁当……食べたい」








近い。
殺気はない。
油断している。
いつでも仕留められる。
どんどんこちらへ寄ってくる。

「……。」

息を潜めて木の影で待つ。






―今だ。





身を屈めて地を蹴り一気に間合いを詰め
槍を突き刺す
腰を狙う

「ゆき……」
「!!」


忘れもしない声。
躊躇うには遅すぎた。

突き出された槍の先に血が滴る。

……殿?」
「いた……」

ドサッという音を立てて、倒れる。


どうしてこんなところに?
どうして判らなかった?


殿ぉ!!」
「だいじょぶ……掠った……。」

急いでそばまでいき、身体を支えた。
右の腰を手で押さえているが血の流れは止まらない。

「なぜ……なぜ……!」
「骨はイってない……多分いや絶対……。……あ〜……すいません、どこか医療機関に連れてって下さい……。」
「申し訳ない!!」

背と膝に手を回して抱えあげる。

「少し我慢して下され!」
「うん……。」


全速力で走り出す。
揺さぶらないように気をつけながら。


「旦那!何してんの!?」

佐助が走る幸村の後ろに現れた。
ぴゅうっと口笛を吹くと横から慶次が現れた。
事情を聞く暇はない。

「真田幸村!?何事だよ!?」
「それちゃん!?ちょっと……血……!」
「某がっ……!殿を……傷つけてしまった……!!」
「真田幸村!!てめぇ後で殴らせろ!」
「存分に殴られよ!某は……なんて事を……!」
「幸村さんは悪くないよ……。」
「旦那!貸して!俺が飛んで運ぶ!走ってちゃ時間かかるし振動が……!」
「すまぬ!」


振り返って佐助にを渡す。

「お先!」

シュッと一気に空へ。

は高さに目がくらんだ。









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痛い目に遭わせてすいません!
そんな話が大好きなのです!
管理人自身の問題!