玄関先でまつと向き合い挨拶をする。

「お世話になりました!」
「娘が出来たようでしたわ。またおいでなさいませ。 慶次、さんをしっかり護衛するのですよ。」
「判ってるよ!行ってくる」
「お弁当を作りましたので、途中で召し上がってくださいませ。」
「ありがとうございます!」
「ありがとな!まつ姉ちゃん!」

大きなお弁当箱を慶次がひょいと持ってくれて、家を出る。 庭では、利家さんが熊と戦っていた。

……熊!?

「利ぃ!行ってくるぜ!」
「おお慶次!も!気をつけてな!」
「なんで普通だ!?熊!熊だぜ!?」
「あいつは五郎丸。まつ姉ちゃんに懐いてるから大丈夫」
「まつ姉ちゃんすごおおおお!!」

ただの鍛錬でしたか!?
















「秀吉。そろそろ行ってくるよ。」
「半兵衛、本当に大丈夫か?我も」
「そんな大事じゃないさ。秀吉はどっしり構えてればいいんだよ。」
「半兵衛……。任せたぞ。」

秀吉にだけ見せる、優しい笑みを浮かべる。

「それに……斬りかかってくるならそうすればいい。戦の理由になるからね。」

武器の刃先を指で撫でる。
弁明するなど簡単だ。
半兵衛の頭は、相手をどう翻弄するか。
しかも相手はあの独眼竜だ。

「むしろ、楽しみだよ。」












「旦那!どこまで突っ走んの!?」

前を走る紅蓮の炎に、佐助は必死に声をかける。
昨日からほぼ休みなく戦う上司にさすがに不安を抱いてしまう。

「佐助は西の方角を頼む!」
「ちょ、旦那ぁ!離ればなれって事!?」
「何かあれば行く!」
「……無茶すんなよ!」

戦は終わったものの、思ったよりも今川の生き残りは多い。

しかし、これほど殺すことはないのではないか。

「……暴れ足りなかったか?」
仕方ない上司だよ、全く……。










政宗が部屋で煙草をふかしている。
隣で成実はその姿を眺める。

「殿〜、豊臣の奴ら出迎えする〜?」
「いらね。」
「……ねぇ、殿、そんなに怒ってないよね?」
「ああ。」

噂は自ら広めた。
わざわざ小十郎を南に送ってまで。

「豊臣の奴と話ができる機会だ。ブチ切れてると思われといて探ってやるよ。」
「ふうーん。ところで客人は何者だったの?」
「ただの業者だ。南にザビー教とやらがあるらしくてなぁ、そいつらのご贔屓さんだ。」
「確かにそーゆー人らに聞きゃどんな奴らか結構判るけどな〜。」

成実は畳の上に寝ころんだ。

「なーんか集まっちゃうよね。ここ。」
居るのは、が居た部屋。

「居なくなってから最初に来たときは、何も残ってなくて、でも、なんとなくさあ……居心地良いね。」
「そうだな。」
「……殿、ちゃんと会えたらどうすんの。」
「とりあえず殴る。」

……どこまでちゃんには厳しいんだ。
一番会いたがってるくせに。



「殿、文が届いていますが……。」

綱元が不思議な顔をして文を眺めながらやってきた。
「あ?誰だ?」
「差出人までは中を見ないと……ただ丹波国からと……。」
「明智か?なぜ……。」
「あ、あ、申し訳ございません……私でございます。」

篠が慌てた様子で早足で近づいてきた。

「君、丹波出身だっけ?」
「ええ、両親の死後に親類のいるこちらに。幼少の頃に城に使えていた頃の友からにてございます。」

怪しまれていると思ったのか、説明を始めた。
「もし、さんが明智につかまれば何をされるか……。さんのような女性を見なかったか文を出しました。勝手な事をして申し訳ありません。」
「へえ、有り得ないことじゃないね。」
「それで、どうだ?」

失礼いたします、と一言言い、文に目を通す。

「いえ、明智殿は城で大人しくしていたようです。森蘭丸をからかいに尾張へ向かうようですが。」
お役に立てずすいません、と頭を下げて、去っていった。

「……殴るだけじゃ済まねぇか?」
「愛されてるねえ……。」









「慶次!本当にこんなとこが近道なの!?」
と慶次が歩いているのは森。

秋でも枯れることを知らない常緑樹が所狭しと並び、昼間のはずなのに届く光はわずか。

「こんなとこって、歩ける道はあるだろ!?未来にはこんなところはないのかい!?」

慶次は見事にの話を信じた。
それどころか満月の夜に帰ってしまうなら、京の祭りを見てから帰りなよとも言ってきた。
単純なのかとも思ったが
信用してくれるということがすごく嬉しい。


「暗いよ!獣とかでない!?」
「出てきたら夕食だ!」
「ひー!頼もしい!」

途中で蜘蛛の巣に引っかかったり、小枝がぶつかったりする。
地味にダメージです。


「ここ抜けりゃすぐなんだよ。武田。」
「……武田?」
「そ。寄ってさぁ、武田騎馬隊の馬一頭借りようぜ!一番速い奴!」
「一番速い奴は無理だと思います!……武田かぁ……。ねぇ、慶次は幸村さんと佐助さんと仲良し?」
「ん?まぁそんな感じ」

どこかで佐助が寒気を覚えた。

「幸村さんとお茶したいなぁ……。そんな時間無いかな?」
「……あんた顔広いな!すげぇ!そうだな!真田幸村に奇襲かけるか!」

いたずら大好きの二人。
反対の声無くにやりと笑う。

しかしその直後、空気が変わる。

「なんか聞こえたな……。なんか居るなぁ……。」
「えっえっ、こ、声だったよね……?人?」
、ここで待ってな。」

慶次が茂みの中に入っていく。
は道の隅により、身を屈めて、慶次の背を見送った。

「……ついていけば良かったかな?」

一人になると、怖さが倍増する。

「慶次……はやく……。」
どうか、ただの動物の鳴き声でありますように。
手を合わせて、目を閉じる。
背後から手が伸びてきたことに気付くのが遅れてしまった。

「!!」
口をふさがれ、慶次が進んだ方向とは逆の方へ引っ張られる。
「だ……れ!?」
一人じゃない。
まさか、今川の

「こんなところに女だ……。」
下衆な声が降り注いだ。







「ちっ……。なんだこりゃ。」

思ったよりも多い無惨な死体。

「この家紋……今川か……。」
戦はもう終わったはずなのに。
ずいぶんと新しい死体。

「やべぇ、何か居るなぁ…………。」

一人にするんじゃなかった。
薄々気づいていたんだ。
わざわざ確認しなくてもよかった。

ガサガサと音を立てて進む。
見つかるなら俺が良い。
―来い……。

「あれ?前田の風来坊?何してんの?」

「……。」


期待していたものとは違った。

猿飛佐助が頭上から涼しい顔で降りてきた。

「なぁ、ここいらで今川を殺しまくってんのはあんたか?」
「だいたいは旦那だねぇ……。それよりこの辺にまだちょいと残ってんだけど、あんたも掃除してく?」
「……残ってるだぁ!?」


先ほどよりも音を荒立てて茂みを素早く進む。
佐助は興味がわいたのかそれについていく。

小道に出れば、誰もいない。


「どこだ!!」
「え?」
「あんたも知り合いだろ!?上から探してくれ!」
「……何であんたと?ってのは後で聞く」

佐助は一気に杉の木を上る。











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皆さんの様子をちょこちょこ
なんでザビー教セレクトかって
・・・ギャグだから?(大して考えてないのかい!!
ちかちゃんとこかと思った方、すいませんです!
主人公ちゃんピンチ!
半兵衛のキャラ勉強せねば!