まつがすぐに食事を作り、食卓を囲んでのどかな夕食の時間となった。
いただきます、と手を合わせ、ほかほかのご飯と味噌汁を堪能する。

「へ〜、越後から来たのか。確かに女性一人であの辺りは今は危ないなあ。慶次!偉いぞ!」
「まあな!」

すごい勢いでご飯を口の中に放り込みながら二人が喋る。
その気持ちも分かるくらい美味しいお米だったが、行儀が悪くて呆れてしまう。

さん、ご飯が進んでないようですがお口に合いませぬか?」
「いや、まつさん、二人と比べないでくれ。」
「「おかわり!」」

二人同時に空の茶碗を勢いよく出してきてびくりと驚いてしまうが、まつは穏やかに茶碗を受け取る。
慣れなのか!?それとも私が家庭的でないということか!?

さん、よろしければ慶次によそって下さいませんか?」
「あ、はい!すみません気づきませんで!」
「いいえ。こちらこそ申し訳ございません。慶次がさんにして欲しそうな顔をしておりまして。」
「さすがまつねえちゃん!のよそったメシ食いたい!」
「炊いたのはまつさんなんだから……。」
「そ。まつねえちゃんが炊いた米をがよそってくれる!!最高だねえ!!」
「ちょ、調子がいい……!!」

満面の笑みで素直に言われると悪い気はしない。
茶碗を渡して、また自分の食事を始めた。

おかずには今日取った松茸が香ばしく焼いてあり、越後で食べたものとはまた違った味付けで美味しい。
こんなに松茸を食べられる日がくるなんて、幸せでゆっくり噛み締める。

「明日すぐに行ってしまわれるようなのですから、たくさん食べてゆくのですよ?」
「はい!ありがとうございます!」
「ん?どこへ向かうのだ?」
「奥州の青葉城のほうに。」

それを聞いた利家が箸を止めて目を丸くした。

「……今行くのか?」
「えっ、なぜですか?」

利家は真剣な顔つきになった。
箸は動かし始めて食べながらだったが。


「昨日、独眼竜が呼んだ南方からの客人が、向かう道中で豊臣軍にやられたらしい。なんでも、鉄砲を誤射したらしい。それで伊達はいきり立ってると聞く。」

慶次が豊臣という言葉に反応した気がしたが、それどころではなかった。

「え!それって、戦するってことですか?」
「いや、とりあえず豊臣が謝罪しに行くと聞いたが……。それが竹中半兵衛自ら出向くという話だ。独眼竜はそれを受け入れたようだが、警戒はしてるだろうな。片倉殿も今は南の警備強化のため独眼竜のそばを離れているらしい。」
「小十郎さん!?南の方にいるの!?」

越後から南に来たんだ。
小十郎さんだけにならすぐ会えるかもしれない、と期待を込めて利家に詰め寄った。

「片倉殿とお知り合いか?」
「はい!」
「そうか、なら慶次、まず片倉殿の元に行って状況を確かめた方が良い。」
「……あぁ、判った。」

ひと目で分かるくらい慶次の元気がなくなって、声から明るさも消えていた。

「慶次……?」

背に手をおいて顔をのぞき込んだ。
「ん?あぁいや、大丈夫、守るから。」
「……?あ、ありがとう。」

豊臣と何かあるのかな?








小さめの部屋と寝間着を貸していただき、自分で着ていた服をインナーだけ洗濯して、部屋干しした。
明日までに乾くことを祈る。

バッグの中に少しの着替えは入れていたのだが今は手元にないから仕方ない。

いつきの事が少し心配になったが、彼女は強いし、大丈夫だろう。

そんなことを考えていたら、目的地を通り過ぎた。
アホだと思いつつも引き返す。



「慶次、入って良い?」

障子の奥に人の気配を感じて言葉を発した。

「夜這い!?ちょっと待って俺、心の準備が」
「そんなことないから安心して。」

あっさり否定した。




部屋に入ると夢吉が飛びついてきた。
それを抱っこしながら慶次に近寄る。
彼は長い髪を下ろして布団の上にあぐらをかいていた。
昼間はずっと軽い態度をしていた彼だったが、今はこの状況からか緊張しているようで可愛らしく感じる。

「ど、どうした?」
「今日のお礼しにきた!リフレクソロジー!」
「りふれくそろじぃ?」
「凝りをほぐしましょう。いや、そんな凝ってなさそうだけど。足ツボやったげる。」
「出来んの!?」
「うん!任せて!」

向かい合って座って慶次に足を出させる。
自分の膝に乗せてツボ押し開始。

「おお……!」
慶次、良い反応してくれます。

「明日は、小十郎さんのとこまでよろしくお願いします。」
「青葉城まで行くって。」
「でも、豊臣の人と会いたくないんじゃない?」

慶次が苦笑いした。

「……俺そんなに顔に出てた?」
「結構……ごめんね、ふれられたくなかった?」

慶次が一度天井を見上げ、すぐにまたに笑顔を向ける。

「へーき。女の子に気を使わせてごめんな。まあ確かに会いたくねーな。でもまつ姉ちゃんに野菜分けてもらってこいっていわれたし、会うとは限らないし。」
「小十郎さんの野菜?」
「へー、そいつが作ってんの?美味い?」
「すんごいおいしい!!私からも分けてもらえるようにお願いするね!」
「おう!ありがとなっいてぇ!!そこ痛い!」
「……肝臓のツボ。」
「肝臓?」
「お酒飲み過ぎではない?」
「……へへ。」

慶次が頬をポリポリ掻く。

「ほどほどにね……。」
「もうすぐ京で祭りあるから無理……かな。」
「……祭り?」

京の祭り……なんて惹かれる言葉だろう。

「行きたいか!?」
「えっ、見てみたいけど……いつなの?」
「満月の日さ!綺麗なお月様の下で祭り!最高だね!あと一週間ってとこだな!前夜にもいろいろやるからさ〜来ない!?迎えに行くよ!」
「満月!?」

一気に表情が曇る。
まだまだ先だと思っていたのに、もう帰る日の話を聞くことになるとは。
なにも成し遂げてないこの状況で、祭に行けるかどうかの話ができるほどに余裕はない。


「どうした?無理?」
「……うん。満月の夜は家に帰らなきゃならないんだ。」
?」
「誘ってくれてありがとう。でも行けないや……。ごめんね。」


慶次がじいっと私を見る。
質問されるのを覚悟したが


、俺あんたともうすぐお別れで、もう会えないとか考えてねぇからな。」
「慶次?」
「だから、話したくなったら教えてくれ。あんたのこと。」


私、お世話になってるのに隠し事してんのに
なんでそんな優しい事言うかな……。
理由も言わずに誘いを断るなんて、不信がったらいいのに。


「ありがと、慶次……。」


言ったって信じないだろ?
……慶次




「……私ね〜この時代の人じゃないんだ……。」


秋の夜長に暴露大会も良いだろう








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慶次に暴露。
まだ慶次のキャラつかめておりませぬ・・・