「少しはあるわ!」
「何がだ?」
「あれ?さぁ?」

何かムカつくことを言われた気がしたが。

はい、現在私は上杉謙信の居る館にお邪魔しています。

「しかし……本当に丈夫な防具だな。軽量であるし、さぞかし高価なのであろう。」
「えへへ、ま―ね(貧乏学生にはマジで高かった……)。私戦えないから、せめて守りはちゃんとしないとって、思って。」
かすががじっと防弾ベストを眺める。
なかなか返してくれません。

「少し、見直した。」
「え?」
「伊達政宗にもらったのだろう?あの男は気にくわなかったが、大切な者のためにこのようなものを渡すのだな。」

「えっ、い、いや……あ……ま、まぁうん、優しい所、あるよ……。」
すごく恥ずかしいし違うが、政宗さんの評価が上がるなら良しとしよう。

「小太郎とはどうだ?うまくやっているか?」
「うん、でも今離れちゃってるから、奥州でうまくやっているか不安だな……。」
「なぜあんなところにいたのだ?情報が欲しいと言っていたな。あんなところに情報収集か?小太郎も連れずに?」
「はは……農民のみなさんが困ってたからさあ、無理言って協力させてもらってたんだ。」
無理があるだろうが、嘘はついていない、と思う。
かすがはふうん、というだけで、それ以上追求することはなかった。

「私はこれから偵察に行かねばならない。、すまないがしばらく越後に居てくれないか?奥州に向かうには、今は危険すぎる。織田軍の後続部隊が来るかもしれないし、敗れた今川軍の兵がこっちまで逃げてきているという情報もある。」
「今川……。」
「あぁ。武田に討ち取られた。」
戦したんだ……!
武田信玄様おめでとう!

って素直に思えないな〜……。
戦ってやっぱり嫌だ……。
いやいや、信玄様だって平和目指して頑張ってんだし……
いやそれより
「今、織田軍の後続部隊とか言った?」
「ああ。」
「そんな……また襲われるの!?」
「もしもだ。念のために構えていた方が良い。それにしても、面白い戦だったな……。」
「本当!?ありがとう!」

あ〜……何で私はこう……口を滑らせる……

の提案か?」
「う、うん。ちょっとでもお役に立てるならって……。」
「しかしそもそも伊達軍が一揆衆に加担してるなど聞いたことがないが、お前の単独行動か?」
「うん。」

かすががじっと私を見る。
う、疑われているんのだろうか。

「そうだ!ねぇかすが、私たちが初めて会ったのって、どのくらい前だったっけ?」
「……忘れたのか?確か九日位前だったか。」

そのくらい
ということは
こっちに来たときは私が未来に戻った次の日だ。
すぐ戻ってこれたんだ。

安堵していたら急にかすがが姿勢を正した。

部屋の襖が静かに開けられた。

「謙信様!」

現れた姿に息を呑む。
中性的な美しさに視線を逸らせなかった。

「わたくしのつるぎよ……らいきゃくにあいさつさせてくれませんか。」
「こちらから伺うべきでした。申し訳ありません、謙信様。と申します。」

かすがが突然礼儀正しくなった私に驚いて、
謙信様に無礼がなくて安心して、
もしや美しさに惚れてしまったのでは!?と、怒りを露わにしている。

……忙しいな、かすがは……。

「かわいらしいおじょうさんですね。わたしはうえすぎけんしん……あたまをあげなさい。」
「はい。」

威圧感があるけど、睫毛が長くて肌の透明感凄くって、不思議なオーラがある。
上杉謙信の話なら結構知っていると思っていたが、この謎多い姿を目にしたら頭から飛んでしまう。

「謙信様、この者は敵ではありません。このかすがが戻るまで、こちらに置いていただけませんか。」
「かまいませんよ。わたくしのつるぎのごゆうじん、かんげいします。」
「ゆっ……友人!?」
「あ!何その反応!傷つくわ!かすがと私友達です!」
かすがの瞳が揺れて、顔が少し赤くなる。
……あ、それは嬉しいな。

「でっ、では謙信様……。このかすが……引き続き任務の方に向かいます……。」
「たのみますよ。」
「はっ。」

シュッとかすがが消えて、部屋に謙信様と二人になる。

「ここで何か私にできることございませんか?」
「きゃくじんなのですから、ゆっくりしているとよい。」
「いえ、でも申し訳ないです……。お手伝いしかできませんが、何かさせて下さい。」
「……うつくしい。」
謙信様が近づいてきて手を伸ばした。
うっ……美しい……!?
そんなかすがの方が圧倒的美人なのにかすがに比べたら断然芋な私になんという言葉を謙信様!?

頭が混乱していると、首元に手が触れた。

「これはなんですか?」
ネックレスの話でした―!!
はい!ベタだなー!!

「お気に召しましたか?よ……よろしければ……。」
「よろしいのか?」
「謙信様に付けられた方がこれも幸せでしょう。」
それほど高価ではないのが申し訳ないが。
あ、確か似たデザインのブレスレットがバッグに入ってるかも……。
かすがにあげたいなぁ……お揃いになるよ!!

「では、ありがたくいただきます。」
付け方を教えると即座にマスターしてしまった。
器用なようです。

「謙信様―!!」
部屋の外から、男の声がする。
叫び声でも伊達軍の兵たちの声とは違い気品が感じられて、兵にも主君の特色が出るのかな……?と考えてしまった。
「いままいります!、ではここにたいざいさせるかわりにこれをいただきます。それでよろしいですね。」
「はい!ありがとうございます!」

去る謙信様の背を見送ると、部屋の戸をしっかり閉めて、張り詰めた緊張を解いた。
「結構……疲れた……。」
思い返すと自分は大したことしてないのに、この怒涛の展開に体が重い。
少し休憩しようと、ごろんと横になった。








「うあああああ〜ん!〜!!」
「泣くなよ!蘭丸様と戦えよ!……勝たなきゃ……信長様に怒られ……う、ひく……!!」

うあああああん
あーん
びえぇぇぇぇぇぇ


「うるせー!ガキ―!」

全く話が聞けない。
「だからは大丈夫だっていってんだろ!あいつは簡単に死なねぇから!」
「しっ、死んじゃいやだ―!うあああああ!!」
「聞けって!ああもう!成実!お前ガキ好きだろ!?」
「そんなことないよ。」
「好きになれ!行け!」
「無理やりだな!仕方ないな〜……ね、大丈夫だよ、絶対ちゃんはぴんぴんしてるから。だから泣きやんで?ちゃん、何か言ってなかった?」
「……辛いときこそ笑えて……う、そだな……おら……もう泣かねぇ……!!」
ぐしゃぐしゃになった顔を平手でパンパンと叩いて、いつきが前を向く。

「お侍さんたちは、何しに来ただ!?」
「……やるな、成実……。」
ちゃんは良い仕事するよね……ほら、織田の君も!男の子だろ!?負けを負けだと認めるのも立派なことだぞ?」
「だって……信長さま……。」
「よしよし、大丈夫。」
成実が蘭丸の頭を撫でる。
大丈夫そうだな、と確認し、政宗はいつきに向きなおす。
「ah〜……ここにが居るって聞いてな……あいつは俺たちの仲間なんだが。」

助けに来たとは決して言わないところが政宗様らしいです……。
小十郎が密かに拍手を送る。

「何があったんだ?」
いつきが政宗をまじまじと見る。
「?」
「青いお侍さん……おめえさんか……から聞いたべ……!」
「っ……!あいつ俺の事なんて……?」

あぁ政宗様、顔がにやけてますそんなに期待しない方が……

「……強くて優しい」
おや!?、素直じゃないか!
これは政宗様も喜ぶ……!

「けど高飛車で高慢知己な猫ちゃんだっていってただ。」

―!!!

「おら、猫ちゃん好きだ!ネズミとってくれるからな!ネズミに米食われたらたまんねぇからな!」

話逸れてきた―!
政宗様は微妙な顔して固まってるし!

「……は、四日位前に村に来ただ。」

あぁ話し出しちゃった!
政宗様!聞こえてますか!?

政宗の体を揺すって、しっかりしてください、と声をかけた。

「小十郎……が、俺が強くて優しいって……。」

あぁよかった!自分に都合の良いところしか耳に入ってないようだ!
さすが政宗様!
さっきの表情は照れていたのですね!

「ガキ!四日前だと……?」
あっ!?聞いてらしたんですね!
さすがです!
「四日前とは……が消えた翌日ですね。誰かに攫われたのでしょうか?そのようなことは言っていなかったか?」
「さっ……さらわれ……うあああああ!」
地雷踏んだ―!

「なんなんだ!」
はっ……!おらをかばって……鉄砲に……背中……撃たれただ……。」

全員が目を見開く。
「いてぇはずなのに……おらの心配してくれただ……。大丈夫?って、頭撫でてくれて……。」
「……遺体……は……?」
「言うんじゃねぇ!まだ話は終わってねぇ!」
「雪がぶわって舞い上がって……誰かがを連れてっちまった……。」

誰だ?

「姿は見たか?」
「わからねえ。見えないくらい速くて……。」
「……OK、十分だ。そんな事ができるのは忍だ。」
「猿飛佐助……でしょうか?」
「いや、やつらは戦が終わったばかりだろ。考えにくいな。」
「……。」
屋根裏に潜む小太郎が表情を変えた。
誰も気づかなかったが。

「お侍さん……は大丈夫だべか……。」
「……俺が探すんだぜ?見つからないわけがねぇ。大丈夫だ。」

いつきが必死な顔をして政宗のすぐ前まで来る。

「おら…に言ってねぇだ……一番言わなきゃなんねぇこと……お礼しなきゃなんねえ。
こんなに、死人が出なかった戦初めてだ……。のおかげで……。」
「罠は、の提案か。」
「そうだ……。が、いっぱい、悩んで、考えてくれて……!!」
「よくやるよなぁ、あいつ。」

負けてられない、と政宗が勢いよく立ち上がる。

「おい、ガキ……いつきと言ったか?」
「あ、あぁ。」
「俺はに負けねぇ。」
「え?」
「負けねぇくらい、平和を目指す。」

いつきは政宗を凝視したまま動かない。
「事の原因は一揆を起こそうとしたこと……忘れてねぇよな?」
「……うん。」
「だからもう、んなことやめて大人しくしてろ。俺がをここに連れてきてやる。俺が一揆なんて必要ない世にしてやっから!待ってろ!」
「……本当だべか?」
「ああ!よっしゃ!奥州に戻るぞ!……成実?」
「あちらで雪合戦を始めようとしています。」
蘭丸がいつの間にか泣き止んで、成実ときゃっきゃと雪玉を作っている。
「成実がガキか!」
「いえ、雪玉に石仕込んでるあたり大人かと。」
「汚ねぇ!ってゆーか大人げねぇ!」

急いで止めに外へ向かう。

「待つだ!」

それをいつきが止め、屋敷のほうに行き、何かを取り出す。
伊達軍の者なら大体知っている。
“ばっぐ”だ。

の忘れ物だ。」
「あぁ、預かるぜ。」
受け取って、中身を見る。
iPodを見つけて作動させてみる。
……動く。

……?」

戻れたのか?

そう考える暇もなく
ざくざくざくと雪を踏みしめる音と、大声。
「政宗様!至急城へお戻りください!」









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政宗氏も小十郎殿もはっちゃけてしまった
そしてどんどんストーリーモードと関係ない話が……