「農民が、いきがってんじゃねぇぞ!」

分かっていたのに、このどうしようもない気持ちはどうしたらいいんだろう。

農民みんなで、怖い武将に挑む戦だと思いこんでたんだ。
現れた敵が、小さい子供だったから、動揺してしまって動けなくなった。



どうしてだろう

どうして子供達が戦わなきゃいけないんだろう。

「お前さん達の好きにはさせねぇ!」

森蘭丸と名乗った子が矢を射れば、いつきがハンマーを盾にする。
蘭丸が新たな矢を取り出す動作をすれば、いつきができるだけ間合いをつめてハンマーを振る。

二人の戦いは激しくて、周りのみんなは近づけない。
下手に加勢すれば巻き込まれる。
いつきに当たってしまうかもしれない。

「いつき……。」

私は見てるだけしかできないなんて

「……いつき……。」
ふらっと、一歩前に出た。

戦うなんて、もうやめよう。
明るい一揆なんてなかったよ。
もっと違う方法があるはずだよ。
止めたい。

「どうしたらいい?」

いつきがよろける。
蘭丸が横に飛び上がる。

蘭丸の後方に、鉄砲を構えた兵がいた。

「……いつき!!」

本能的に飛び出して、夢中で駆け寄った。

ドン


一瞬、周りが静まり返る。
「……?」
「いて……。」
背中に衝撃。
間に合った……なんとか間に合った……もうそれだけで嬉しかった。
「大丈夫?いつき……。」
っ……!!」
防弾ベスト役に立ったよ。
あぁ、でもすげぇ痛い……。

心配かけたくないからにっこり笑って
いつきの頭撫でて


ザァッ

逃げよう、と言おうとした瞬間、竜巻のように雪が舞い上がる。

誰かに襟を捕まれた。いつきから引き剥がされて、脚が宙に浮く。
!」

いつきの声がどんどん小さくなる。

誰かに捕らえられたと気づいた。

「誰だ!離せっ……!!」
「私だ!」

その声。
この金髪。

「かすが!?」
「何をしているんだお前は!馬鹿か!」
「かすがこそ……?」
「今川と武田の戦を見ていたんだが、魔王の子がここに来ると聞いて急いでこっちへ来たんだ!……なぜ、あんなところで……!」

かすがの声は動揺していた。心配してくれたんだろうか。
「出血は!?」
「大丈夫!防具つけてた!」

戦線離脱、というにはあまりに長い距離をびゅんびゅん進み、どこかへ向かう。

「かすが……?もしかして越後向かって……?」
「治療せねば!大丈夫だ、謙信様はお優しいから……!!」

……荷物おいてきちった。

いや、そうじゃないか……ええと……いつきたち大丈夫かな……?

「……わ、私生きてるからね〜いつき……。」
死んだと思われてたらどうしよう……。









「……農民が戦意喪失?」
「はい、織田に降伏したようなのですが、しかし……織田は拒否してるようで。」
「訳分かんねえな。せっかく来たんだ、行ってみるか。」
「ひー!!」

徐々に悲鳴が近づいてくる。
すたっと、小太郎が政宗の前に現れる。
恐怖に顔を歪めた人を抱えて。

「お?どうした小太郎?誰だそれ。」
「……。」

ずいっと、政宗の前に押し出す。

「あんた……農民だな?」
「ひー!お侍さんだ―!天罰だ―!許してけろ―!」

じたばたと暴れ出すが、小太郎が逃げるのを許さない。

「落ち着けって。別にとって食いやしねぇから。」
「浮気したからだ―!すまねぇだ―!いつき親衛隊でありながら……」

いつきちゃんのくるぶしも可愛くて好きだけんども、ちゃんの腰のくびれも大好きなんだ―!!

「……殿。」
「政宗様!」
「……。」
一斉に政宗に視線が向けられる。
全員が、その情報に喜ぶと思っていた。

「……あいつにそんなにくびれはねぇよ!!」

そこじゃねぇ―!!










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小太郎一歩遅かった
政宗氏の叫びは喜びあまってということで
蘭丸と交流なくてすいません・・・
織田ファミリーとはそのうち・・・