国境をすぎてやっと村が見えてきた。
この村を破滅させれば、甘い甘いご褒美が待っていると思うとご機嫌になってしまう。

「ちっちゃい村だな―!警備もいないし、所詮は農民だよなあ!」

小柄な体とは不釣り合いな大きな馬から、一人の少年が降り立った。

「この蘭丸様がぶっ潰してやる!」

弓を構えて、走り出した。



、その格好、かわええな。」
「いつきの服のが可愛いよ?」

現代の服を可愛いか……。
あんた見る目あるよ(何様?)

「始まるだよ……。」
「うん。」

いつきがハンマーを握りしめる。

は短刀を握りしめ、空を仰ぎ、願った

無事を
成功を
平和を








忍が政宗の傍らに現れる。
「報告致します、政宗様。」
「おお、寒いなおい〜。雪降りそうじゃねぇか……。」

もうすぐ国境、ということで伊達軍は休憩をしていた。
寒さに一部の薄着の野郎がgive upしやがった。

ごめ……殿……

なら着ろやあああ!成実!

肉体労働派の変な意地が……筋肉出したくて……

撃たれたらどうすんだ―!!



ぱちぱちと大きく瞬きをし、身体を丸めて酒を持った格好のまま政宗を見上げる。
「え?偵察じゃないの?」
「農民が負けんだろ。助けるぞ。」

さも当然といわんばかりに政宗は腰に手を当てた。

「それが……織田側の不利です。」


沈黙。


「無駄足〜。」
「うるせ―!どういうことだ!?」

呆れ顔の成実を放って、忍に今にも掴みかかりそうな勢いで問う。
農民の怒りとはそこまでのものかと思えず、何とも言えない嫌な予感がしてくる。
「数々の罠にかかり、兵が壊滅状態のようです。まあ、農民と侮り、数も少なかったようですが。」
「罠?」
「なるほど、地の利を生かしてるのだな。それでどのような?」

小十郎も関心を持ち、興味深そうに近づいてくる。

「まず、村に入る門が狭かったそうです。一気に進入させずに、時間差を付けるためかと。」
「ほう……建て直したぁ、ご苦労なことだな。万全に備えて迎え撃ってるわけか。」

政宗が腕を組んでにやりと笑った。
あの織田軍が農民の作った罠にはまっている、それだけでおもしろい。

「いえ、門の周りに石を積んでそれを雪で固めて、狭めていました。ただの積雪に見えるよう、形も工夫されて……最初は私も分かりませんでした」
「……経済的だな。」
「殿とは大違いだね〜。」
「うるせえ。」

政宗と成実のやりとりに少し頷きつつ、小十郎が報告の続きを促す。

「その先には坂があり雪玉が転がってきて、絶妙に美しくひらりと避けたら避けた先に落とし穴が」
「待て。なんだその主観的な報告は。」
「聞いたんです」
「聞いた?」

落とし穴にはまってた人に。

聞くだけ聞いて放置してきたな!?助けてやれよ可哀想だろ!

「その後、猪など獣にかける罠多数。障害物も多数で鉄砲が使えない模様。 民家からいい匂いがしたので入ったら食べかけの食事があったため、ついてるぜ!と疑いなく食べたら腹痛。」

……腹痛の奴に聞いてきたな……。

はい。

「食べかけだから気が緩んだんでしょうか。」
小十郎がはは、と笑う。
単純だが、数打てば当たる罠だ。
しかしその中に、相手方が主に使う武器が飛び道具と分かっているような罠が含まれているのは気になる。

「その先なのですが、いつき門と呼ばれる門の横に、橋が架かってる地点があり、先行部隊が足を踏み込むと橋が壊れました。」
「強度弱めたのか?……そりゃ思い切ったことを……橋が無くなりゃこの先困るだろが。」
「いえ、ですから門の横……門は閉じられていたので大多数がその橋に足を踏み込み……氷の技を使える者が居たのでしょう。崩壊した様を見た感じですが、ある程度の厚さのある氷に昨夜の雪が積り、それなりの道に見えました。吹雪で視界も悪かったので、それもあるでしょうね。」

ふーん、と政宗が腕を組む。
何かを考え込むように、視線を空に向けた。

「あと坂が凍ってる所があって、兵がツルツル滑ってましたよぷぷぷ……。転けた兵を農民が捕らえ」
「待て!農民までツルツルだろうが!」
「政宗様……まるで農民がハゲみたいな表現は……。」
「これ見て下さいよ!あ、気をつけて持ってください。」
忍が背に手を回し、藁でできた長靴を取り出して差し出す。

「いて!」
「政宗様!?」
「なんか仕込んであんぞ!?釘か?」

足底に無数の棘が突き出ている。
政宗は指先でつんつんと触れたり摘んでみるがなかなか強く固定されている。
「薄い木の板に先端が貫通する長さの釘打ちつけて、それを靴の裏に仕込んでるんです。それが滑り止めの役割をしていたようですね。」

で、これ誰の?

そこら辺にいた人の。

可哀相!!



「……ふーん、それで今は。」
「森蘭丸が残りの兵に守られながら侵攻中です。」
「これは全て農民の知恵か……?」
「誰か手を貸してるかもって?でも武士はこんなことするかね?」
「……。」

木の上にいた小太郎が動く。















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明るく一揆!!
・・・撃沈!!
こんな罠ひっかかるかな!?
長い長い説明ですいません・・・