そろそろ夕食の時間だ。
サンマが食いたい。
今日の分に追加させようか。
、あいつ魚の骨取るの下手だったな……今日こそ綺麗に出来るようしごいてやろう。

そんなことを思っていたら、前方から来る成実に気づくのが遅れた。

「殿、ちゃんは一緒じゃないの?」
「は?昼に別れた。どっかでちょろちょろしてんだろ?」
「いや、女の子たちがちゃんが居ないって言ってるんだ。いつも手伝いに来てくれるのにって。」
「部屋には?」
「片倉殿が見に行ったんだけど居ないって……。」
「何してんだあいつ……めんどくせぇな。」
「殿……。」
成実のひどく心配そうな顔。
他の奴らもこんな顔してんだろうな……。

「飯は全員そろってからな。」
「うん!」
草履を履いて庭におり、真っ暗な闇の中を二人別々の方向へ歩く。

「……まさか。」
ふと、思いついて、足を向けた。



「……目、腫れ引いたかな。」
泣き出してしまって、涙が止まらなくて、ずっと動けずにいた。
やだよ、こんな理由で泣いてたなんて。
みんな忙しそうだもん。心配かけたくな……
「心配かけてんじゃねぇよ。」

ジャリジャリと近づく足音に、肩ごしに振り返る。
「すいませ……。」
「飯だ。さっさと来い。」
「うん。」
うつむいたまま立ち上がる。

政宗さんが屈んで、私の手を取って、握った。
そのまま引っ張られ、歩き出す。

「どうしたんだ。」
「自分が、情けなくて。」
「今に始まった事じゃねぇだろ。」
「ひっ、ひどいなぁ……。」
笑ってみたんだけど
政宗さんの手が暖かくて

「……ホントだよね……私……。」

また泣き出してしまった。
ごめんなさい。
政宗さんからみたら大したことじゃないのかもしれない。
でもそれでも

政宗さんの存在を知ろうとしなかった過去の自分が

仕方ないのかもしれないけど

政宗さんを拒んだようで

「ごめんなさい……。」
「どうしたんだよ……。」




の部屋に二人で並ぶ。
障子は開けられていて、少し寒い。

「落ち着いたか。」
「……うん。」

皆には見つかったことを告げて、体調が悪いから先に食べるようにと伝えてもらった。

「ごめんね、付き合わせて。」
「馬鹿か。最後まで付き合うって決めてる。」

そんなことサラリと言うなよ……。
誤解するぞ?

「政宗さんはさ、何で私をここに置いてくれたの?」
返答によっちゃ誤解してやるぞ?

「俺のせいでお前に傷が付いた。」
腕のことか。
「……私が、勝手に飛び出したんだ。政宗さんのせいじゃない。政宗さんなら……避けれたよ……。」
政宗さんが黙ってしまった。
……黙って欲しくなかった。
そう言われりゃそうかって
そう思われたらどうしよう。

「……俺が嫌か。」
「!?」
「俺から離れたいか?武田に行きたいか?」
「なんで……?」
「俺のせいで泣いてるんだろが!!」


殿を裏切らないで


「違う……。」

成実さんの言葉の意味が

「歴史を知らない自分が」

政宗さんの傷が

「政宗さんのことを知らない自分が嫌だった。」

「俺はここにいる!知りてぇならなんでも教えてやる!だから、ふざけんな!」

「政宗さん……?」

「お前になら俺の全部見せたって構わねぇ!だから近くにいろよ!笑ってろよ!」

暗くて見えない。
どんな顔をして、政宗さんはそんな言葉を

「飯、持ってくる。ここで食おう。」
「政宗さん!私ご飯大盛り!」
「あぁ!?」
「泣いたら腹減った!」
「……贅沢言ってんじゃねーぞ!」
「だっていい匂いするじゃん!」

政宗さんが、少しだけふっと笑って部屋を出る。

私が泣けば政宗さんも辛そうで
私が笑えば政宗さんも笑って

なんだこれは

なんだこの関係は

落ち着け

「深呼吸~……。」
す~……
は~……

「ふう……。」

どきどきした胸の鼓動はまだ収まらないけど、頭は冷静になってきた。
なにかを、政宗さんは恐れてる。誰かに裏切られたのだろうか。だから成実さんはあんなことを?
全部見せてくれるんだ。
じゃあ私は、聞いてみようかな。何があったの?って。
私は、拒まないって思ってくれたのかな。
拒まないよ。受け入れたいよ。



外を向けば綺麗な星空が見える。

「あ、今日は新月じゃん!」

満月もいいけど新月も趣がある。暗い夜空を仰いで、目を細めた。

ずっ……

「政宗さん?」
視線を屋敷に戻しても周りには誰もいない。

「あれ?」

ずずっ……

「何の音……。」

振り向けば、闇の中から
さらに深く暗い闇

これは

見たことがある

何で今……

「おい、飯!冷めちまって」

「政宗さっ……」

飲み込まれる。
知っている。
逃げられない。



「……?」


まるで最初から居なかったように

気配も匂いも消えていた。









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何でこう一日一日の出来事をちまちま書いてだらだら進んでたかって、戻れるから!!
戻れるトリップ夢でいいですか!?
そして飯は夕方に食べるもんだと思います。無理やり夜に引っ張った。