夜寝る前に携帯電話を起動してみようとするが、真っ暗な画面は全く光る気配がない。

「ぐ……充電ついに切れた……。」

日にちは来たときからずっと二十四時間周期で現代の日付を刻んでいた。
時間は大いに狂っていて役に立たなかったが、意味があるのかもしれないとそのままにしていたが、変化があったとしても知ることができなくなった。
できるだけ電源オフにしていたが、ついに限界が来たようだ。

「大学……。どうなんだろ……。」

帰ることばっかり考えて、帰った後のは考えてなかったな……。
いや、帰れなきゃ意味無いんだし……。


。」
「おや、政宗さんの方から来るとは珍しい。」

携帯電話を握りしめて布団の上でごろごろしているところを見られた。
しかしお互い気にした様子もない。

「お前が俺のとこ来すぎなんだよ。これ動かなくなったんだが。」

政宗の手の中には、同じく真っ暗な画面のiPodが握られていた。

「iPod!!あんたいつの間に!?こっちも充電切れかぁ……。」

受け取って、起動させようとしてみるが、こちらも動きそうになかった。

「じゅうでんぎれだ?壊れたのか?」
「エネルギー源がなくなったの。」

政宗の目線が、布団の上に置かれた携帯電話に移る。

「そっちもじゅうでんぎれ、か?」
「うん。」
拾い上げて、真っ黒な画面を向けて見せる。

「じゃあくれよ。」
「やだよ!使い捨てじゃないの!未来に戻ればまた使えるようになるんだから!」
「ケチだな……。」

万単位のものをぽんぽんあげられるわけ無いだろ!!と思うが金銭感覚も異なるだろうし、黙り込む。

「三番目のが好きだ」
「三番目?上から?ええ!?ちょっとバラードじゃない?意外!ロック好きかと思ってた。でも私も好き!」
「歌詞が良かった。」
「ははあなるほど、確かに言葉綺麗な曲だよね!」
「……もう、聞けねぇのな。」
「う。」

しょんぼりしてる!?
そうだね……未来に行かないとだし……。
次起動できるなら、私が帰ってしまった時だし……。

「…政宗さん!曲覚えてる!?歌おうぜ!レッツカラオケ!」

「空桶?」
「NO!カラオケっていうのはね、歌うの!」
「ah~…la~lalala…出だしこんなだったか。」
「巧いじゃないか!一緒に歌おう!」

せーので合わせて
ハモリとか気にしないで歌いだす。

たくさん聞いていたのか、才能か、悔しいくらい政宗さんは音程を外さない。

それで調子に乗ってしまった。











静かになった部屋。
小十郎が二人を見下ろす。

「……歌い疲れて寝るとは……。」

体を使うのと喉を使うのはまた違う。

「仕方ないな……。」

寄り添うように倒れて眠る二人に布団を掛ける。
政宗様の雰囲気が少し丸くなった気がする。

……良いことなのかどうかは別だが。


「……今の政宗様も、俺は好きですよ。」

口にしてしまい、ふと気づく。
好きだなんて言葉を。

「丸くなったのは俺もか……。」

俺は大丈夫。
どんなに丸くなろうが
政宗様の為に汚れることは幸せだから。


「守りますよ。二人とも。」

二人の頬に触れ、すぐに離れる。

「おやすみなさい。」
今は、良い夢を。








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美しいもの好き政宗氏はクラシックも好きだと思う。
いまさらですが、MP3プレーヤーにしようかとも思ったのですが・・・MDでもいいですよね!?