翌朝、早起きをして小太郎に持たせるおにぎりを作った。
気分はまるでお母さんだ。

「小太郎ちゃん、いってらっしゃい。気を付けてね。」
「……。」(こくり)

見送りの際に小太郎に風呂敷に包んで渡すと、腰の防具のすぐ上の腹の部分に巻いてきゅっと縛るのでおかしな格好になってしまったが。

「爺さんによろしくね。いろいろありがとうって伝えてね。」
こくり

頷くと、すぐにバシュ!と音を立てて消えていった。

「……さてと。」

今日もお手伝いをしよう、と振り返り、城に向かう。
毎日これの繰り返しでいいのかと、疑問を持ちながら。
何もしないで戻る手がかりが見つかるとは思えなかった。
人に甘えてばかりもいられない。戻れるように、手掛かりを探す旅にでも出たほうがいいのかもしれない。


―!!」
「え、はい!?」
政宗の声が聞こえ、考えを中断する。
すぐに声のした政宗の自室に向かうと、一人で机に向かい書類に囲まれていた。

「なんでしょう?」
「それやっといてくれ。」
「え?」

部屋に入り、政宗が指をさす場所を見ると、書類がばらばらに崩れて散乱していた。

「落としたらばらけちまった。日付順に、新しいものを上に綴じてくれ。」
「うん、わかった。」

物品名と漢数字がいっぱい記されているが、日付は全てわかりやすい場所に記されていた。
……会計報告書……ってとこかな?と思いながら、ひたすら拾って並べていると、違和感を感じて止まる。

「……あれ?」

辺りをせわしなく見渡して、何かを探し始める。その姿が視界に入り、政宗は声をかけた。

「どうした?」
「一枚足りない気がする。」
「さっきまでは揃ってたぞ?」

初めて見た書類に、そのように何かを言われるということが意外だった。
ほかの場所に飛んでいったようには見えなかった。
「多分合計合わないよ。一覧とかある?」
「それはまだ作ってねえ。ねえなら、外に飛んだか?」
「探してくる。」

並べ終わったものを俺のすぐ横に置いてが外に出た。

少し気になってそれを覗き見る。

一目見て判ったのか?
こんな文字だらけの書類。
俺が見てもうんざりするのに。

「……。」
「あったよ、政宗さん!ちょっとこれ全部食費!?かけすぎじゃない!?」
「うっせぇよ!食事は大切だぜ!?」
「そりゃそうかもしんないけど!だって過去の軍事費と比べて……。」
「覚えたのか?」
「え?大体の額だけど、まあ……。」

そうかもしれない
そうかもしれないが…

「た、他言はしません!」
「当然だ。信じてる。」
「はぁ……どうも。」

信じるという言葉に素直に喜んで照れているをしばし見つめる。

「政宗さん?」
机に書類はたまっているのに、手の動きが止まってしまっていて、今度はが首を傾げてしまう。

「何でもねぇ。じゃ、それ綴じろ。次は」
「え!?まだあるの!?」
「まだっつーほどやってねぇだろ!」
「だって殿の仕事手伝うなんてプレッシャーだよ―!」
「光栄です、っつって大人しくやれ!」
「うわー!無理やりじゃんか!」


腕を引かれて隣に座らせられる。
嫌そうな顔をするが、役に立てるというのが嬉しくて。

行動しなきゃいけないと判っているのに、今が楽しい。


そんなやりとりして気がたるんでる時に

「戦中は何してたんだ?」

そんな質問されるから

「え……。」

露骨に怪しい反応してしまった。


「……何してたんだよ。」
「家事手伝い!」
「何で今どもったんだよ。」

あぁほらこの人敏感……。
でもそれは本当だし……。

「いや、言ってもオチも面白味もないので……。ま、政宗様の期待にそえないと……。」
「んなもん期待してねぇ!」

みんなで温泉入っちゃいました~。
お団子作りました~。
小太郎ちゃんと山行って夕日見て、
かすがと会って……。
小太郎ちゃんに剣術教えてもらって……。


遊びすぎ。


「……おぅい?」
「怖っ!こ、小太郎ちゃんに稽古してもらってました!」

一番無難そうなのセレクト……したつもりだけど……。あぁ!団子のが良かった!?でも作ってみろとか言われそう……。

「ふ―ん、じゃあこれ終わったら成果見せてもらおうかね。」
あぁこっちのが嫌―!!





「しかも!vs政宗ときたもんだ!」

仕事が一段落して庭に出ると政宗さんが木刀持ち出して
(いやあの木刀って危ないから長ネギとかにしてくれないかな)

私にも子供用らしい木刀持たせて
(そういえば小太郎ちゃんとは短刀対クナイだったんだよな今思うとあぶねぇ!)

手加減するためだろう、木刀を片手で、体の正面で構えている。

「さぁ、かかってきな。」
「いやあの……。」
「俺からいくか?」
「コワイヨ―!!」

もう腹くくって踏み込んだ。

「いきます!」

体格差が有りすぎるから、それをどうにか利用できないか本気で考えながら。

……あれ?私本気になってる?

ひとまず木刀を右方向から水平に振る。
政宗さんが受け止める

「へぇ……。」

む、余裕そう……。
そりゃそうか……。

「あ!」

政宗さんの剣先が円を描く。
私から見て時計回り……
となると……

剣弾かれ

てたまるかぁぁぁぁ!!

政宗さんの力のベクトル利用したらぁ!

って何か頭では思いつくんだけど

体ついていかね―……。

体に左回りの回旋力がかかったから、不安定になる前に右足を軸に体反転させて政宗さんの横に回り込んだんだけど


「ぎゃん!!」


足がもつれて転けた。


「大丈夫か?」
「かっこ悪い!!」

がばっと起きあがると、政宗さんがしゃがみこんで手を差し伸ばしてくれていた。
さっきまでの意地の悪そうな笑いではなく、優しく微笑んでいた。
「んなこたねぇよ。俺がなめすぎてたぜ。雰囲気はあるなぁ…」
「え。」

予想してなかった言葉に目を丸くしてしまう。

「よし!Let's do again!」
「ぅえ!?」

政宗さんにとっちゃ準備体操にもならないだろぉ!?

気晴らしにはなる。

マジかよ!?








■■■■■■■■
主人公ちゃんは数字に強いらしい。
漢数字だけど。
頭良さそうな子に書けないわ・・・