荷物を馬に積むのを手伝って

いざ出陣らしいが

……もう夜だ……。

すでに政宗は馬に乗ってを見下ろして話している。

……うん、兜にたくあんくっついてる
というのは置いといて。

「暗くない?道とか間違えたりしないの?」
「夜道なんて慣れてるよ。十分確認したしな。」

城下まで見送りたかったけど、危ないからと城の門の前までしか許してくれなかった。

「じゃあな。行ってくるぜ。」
「うん、いってらっしゃい。」

政宗が背を向けて歩きだす。
その後ろを、小十郎が追う。

「小十郎さんも、お気をつけて。」
「ああ。もな。城はまあ、安全かもしれねえが、残っている兵もいるから、何かあったらそいつらを頼れ。」
「分かりました。ありがとうございます。」

一礼すると、小十郎も馬を歩かせる。
すでに進軍していた兵を抜き、先頭を政宗が走っていく。

「……え?政宗さんが先頭いくんだ?守られながらじゃないんだ?」

しかも手放しで走っているように見える。
いつもああなのだろうか、戻ってきたら聞いてみようと思った。


すぅーっと大きく息を吸って

いってらっしゃああああい!!

幸村さんには勝てないけど、精一杯の大声を出した。
ついでに両手で大きく手を振って。

お―!!
と、兵の皆も反応を返してくれた。

ノリがよくて嬉しくなってしまう。

「さて、いつまでもここにいてもな……。」
城の中に戻ろうと振り向く。
何かお手伝いできないかと、人がいる場所を探す。


「あの~、すみません……。」
ひょこっと、声が聞こえた部屋を覗き込むと、女中の人たちがぐったりとしていた。
これは早速仕事が見つかった。
みなさんを介抱しよう。

「篠さん、お疲れさまです。」
さんもお疲れさま。手伝ってくれてありがとう……。」
「え?い、いえいえ!!当然ですから!!」

様からさんづけなったのが嬉しく感じる。
少し、親近感を持ってくれたのだろう。

「あの、みなさん。」
へとへとの女中さん達の首がに向く。

「みんなで温泉入りませんか?きっと、疲れなんて吹っ飛ぶよ!!」
「……え?」
「そんなこと……。」

え?

「みんなは……おんせん……。」
「あちらは殿や、戦終わりの兵達を労る場です。私たちは自分の家で済ませたり……。」

その話を聞き、いくら分からず政宗に言われたからといっても、居候の身で入ってしまったことが申し訳なく思ってしまう。
けれども、こんなに疲れている人達を目の前に、それはおかしい、と思ってしまった。
戦のために必死に働いているんだから、みんなだって労ってもらうべきだ。

「みんなだって頑張ってました!!入る権利は、あると思います!!」
「え……でも……。」

こんな事を言われるとは思わなかったのか、困惑している。

政宗は何も言わないのだろうか、と思ったが、顔を思い出すと言わなそうだなと感じてしまった。
そこら辺は放置で自由にしろといったスタンスで、自然と出来てしまった習慣かもしれない。

「入ったって、皆が戻る前にきれいに掃除したらいいじゃないですか!今くらい皆でゆっくりしよ!!それとも入りたくない?」

それを聞くと、周囲がざわざわしてきた。

「……私……一度で良いから入ってみたくて……。」
「で、でも殿方が入る湯船に私たちが入るなんて……。」

意見に耳を傾ければ、賛否両論のようだ。

「男達が戦してるって時に……私たちが休んでいいの?」
「でも、今回はさほど大きな戦ではないと聞いたわ……。食の補給も必要ないんじゃ……?」

けれど、入りたそうにしている人の方が多い。
ここは、トップである政宗と話ができる自分がしっかりするしかない。

「男達が何か言ってきたら、私が返り討ちにしたらぁ!!」
ぐっと拳を握り、任せて!!とアピールする。
それを見た女中達の目が輝いた。

「そうよね!さんが言えば、きっと大丈夫よ!」
「お……おうよ!」

頼りにされてしまうと、少しプレッシャーを感じたが、皆が楽しそうにしてくれているので何かあったら自分が守ろうと意気込む。



そうと決まれば話は早い。
入口に立ち入り禁止の札を貼り、女中全員で風呂に入る。
修学旅行のようだ。

しかし、周りを見渡し、武田軍に行ったときの光景を思い出し、改めて思った。
女中の人数が、少ない気がする。
それを聞いてみると、苦笑いで返される。
「ほら、伊達軍はその、変わってるでしょう?政宗様のようにくーるになるために、恋愛禁止とか……。気まぐれにいろいろ始まって……ついていけなくなると言うか……。」
「まぁ、もともと少なかったですしね~。政宗様は良い主なのですが、募集自体少ないし……。」
「そうなんですか。」

いや、それcoolか?というつっこみは無しにする。


最初は城のことや伊達軍の話をして、もこの場所の理解を深めていた。
だが、こんなに女が集まってるのだ。
恋の話が始まらないわけがなかった。
そしても、この時代の恋愛にとても興味を持っていたので、聞けるのが嬉しかった。

城下に恋人が居る人、
婚約者を戦で亡くした人、
兵の中に好きな人が居る人、

十人十色だったが、同じ女中の人でも、あなたそうだったの?という反応を示す人がいた。
あまりこういう話はしないのだろう。
これがきっかけで、もっと皆が仲良くなってくれたらいいなと思う。

そして話題は上層部へ向かう。

「成実様素敵よね!いつも笑顔で癒されるわ!」
「わ、私もそう思います!!」
は手を上げて、皆もそう思っているんですね!!と、嬉しさをアピールした。

「小十郎様だって、少々怖いけれど、強くて頭が良くて……!」
「庭で稽古してるの見ました!!すごく刀の扱いが上手いというか!!頭もいいんですね!!やっぱり!!」
そしてぱっと見怖いですよね!!私だけじゃなくてよかった!!とは頭で考えるだけにした。

「私は綱元様が憧れで……。」
「あの……。」

「先日来た、武田の方々も素敵じゃありませんでした?武田信玄の直属の部下とお聞きしましたので、文武に優れたお方なのでしょう……。」
「その……。」

は聞きたいことがあった。
でも、こうなると聞かない方がいいのかなとも思った。
でも

「政宗さんは……?」

全く名前がでてこなかったのでどうしても気になった。
嫌われてはいないと思うが、なぜだろう。

そう思っていると、女中が皆にやにやと笑いだした。

「え!!ええ!?なんですか……あの……。」
「やきもち妬かれたら嫌だもの。」
「は……?」

篠さんに視線で助けを求める。
篠さんはにこ―っと笑って
「皆は一番、さんの恋の話が聞きたいのですよ?」

優雅に言い放たれ、動きを止めてしまった。
初恋はいつだったかなぁと思いだす。

「ねぇ、そんなに細くて、政宗様のお相手は大丈夫なの?」

顔が青くなった。

「ちょっと!政宗様がこんなに大切にしてる方よ?優しくされてるに決まってるじゃない!」

顔が赤くなった。

「婚約はいつなの?私たちあなたなら大歓迎だわ!こんなに親しみやすい方が奥方になるなんて想像してなかったわ!嬉しい!!」

顔が黄色く……なるかぁ!!
あぁ!脳内混乱してきた!!

「ち、ちちち違います!!私本当に、あの、迷子で……行くとこなくて政宗さんに拾って貰って……。」

みんながきょとんとして顔を見合わせる。

「そうなの?そう言えば詳しい事情知らなかったわね」
さすが伊達軍女中。













「おい……このたくあんなんだ?」
「お、いいなぁ、当たりだ!様が作ったそうだぜ。政宗様の兜の三日月を形どったらしい。」
「なっ……本当かそれ!?様が……政宗様のことを思って……それってもしかして……。」
「あぁ……そういう事じゃないか?」



顔を見合わせて騒ぎ出す。
様、すごい『せんす』良いぜ!戻ったら様の髪型や服装も注目しないと!」
「やっぱりそう思うよな!」


そんな話で盛り上がる兵達を成実が遠い目をして眺めている。


「戦場で不謹慎だけどさぁ、もうちょっと……色気有る思考回路無いのかね……。ちゃんが殿の嫁とか……せっかく女の子増えたのに……。」
「……そんなもの望むな。さぁ、政宗様を追うぞ。」

そんな会話も知らずに殿はyeah!と叫んで楽しそうに戦場を駆け回る。



















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戦国の女性がいまいち判りません
どれほどの身分だったのでしょうか・・・
伊達軍恋愛禁止はネット回ってたときに見かけたネタです
こんなのほほんとしてていいのか!?