奥州に戻ったらさっそく戦の準備……と政宗は張り切っていたのだが、流石に疲労がたまりつつあったため、成実に後のことは頼んでひとまず休むことにした。

「俺の体力なめんなよ。」
「そんなこと言わずに……。すぐに戦が始まるんでしょ?今は休みましょうよ。」
「小十郎はどこ行ったよ?」

政宗の部屋で二人で大の字になって寝ころんでいる。

「……畑かな?」
「あぁ、そうか……。戦だもんな。」
「みっちり食べないとね……。」

手伝ってこようかなとも思ったが、体がだるくて動きたくない。
初めての馬に長距離移動、慣れない場所に泊まりと、たくさんのことが続いたのだからそれも仕方がないと思い、体力回復に努める。

「政宗さんは、別に休まなくても大丈夫なの?」
「大丈夫だが?」
「そっか……。」

ここで生きるなら、もっと体力をつけないといけないだろうな、と思う。
政宗には敵わなくても、周りに迷惑をかけない程度にトレーニングしようと考えた。

「……。」

居候させてもらう身なのだから、何かは仕事をしなければ。
そういえば調理場にはまだ行っていないことを思い出した。
兵糧の用意をするのだから、もちろん忙しくなるだろう。

「私、お料理出来ますかね?」
「そんなのてめぇの腕次第で」
「ち、違うよ、えと、未来と器具の使い方が違うだろうからさ……。何か手伝いたくて。」
「ふうん。まあ、出来なくはないと思うがな。」
「教えてくれる余裕とかあるかな?」

どんな雰囲気か見てくる、と言って上半身を思い切り起こしたら

「いだ―っっ!!!」

政宗の腕が伸び、寝ころんだままの髪を掴んだ。

「何ー!?」
引っ張られてまた寝ころぶ。
寝ころぶというか頭を打った。
ハゲたら責任取ってもらうぞ!!という気持ちを込めてキッと睨む。

「さすがに握り飯は作れるよな?」
「……おにぎり?うん、大丈夫。」
「じゃあそれでいい。明日手伝いしろ。今はここに居ろ。」
「……お、おお~。」

奥州筆頭がそう言うなら、お言葉に甘えてここで休ませてもらおうと思う。
もしかして、私が疲れ果てているのを知っていて、気遣ってくれているのかもしれないなと嬉しい方向に考えたので、次の政宗の問いかけに目をぱちくりさせた。

「へこんでるのか?」
「え?」
「んだよ、違ぇのかよ。静かだからよ、帰れなくてshockなのかと思ったじゃねえか。」
「帰れなくてか……。うん、帰れなかったけど……。」

正直、自分の頭の中を言葉にするのが難しかった。
でも、後ろ向きではないということだけは分かる。

「確かにこれからどうすればいいか判んなくなったけど、何とかなる気がする。焦ってないよ。」

政宗が起きあがる。
の方を向きあぐらをかいて、まだ寝ころんでるを覗き込んだ。
特に何も言ってこないので、言葉を続けた。

「政宗さんが居て良いって言うから甘えてるとかじゃなくて……。あぁ、少しあるかもだけど、なんかね、帰れる気がする、かな。」
「お前は考えなしにベラベラ喋るよな。隠し事とかねぇのかよ……。まぁ俺の好意に甘えたって良いがよ、一つ約束しろ。」
「何?」

起き上がって、正座をして政宗さんと向き合う。

「帰るときは、俺にちゃんと挨拶してから帰れ。勝手に消えるな。」
「それは、もちろん。」
「絶対な。」

先の事など分からないが、の希望でもあるから、そう返事をした。
お世話になった人たちに、信玄や幸村、佐助にもお別れを言って戻りたいくらいだ。

「約束、だね。」
「ああ。それと、あれだ、お前は俺がジイサン殺しても良いのか?」
「え?」

意外だった。
俺が戦すると決めたんだから、誰に何と言われようと勝つと、そんな風に考える人だと思っていた。

「……覚悟決めろとは言ったがなぁ、あとあと泣かれたら厄介だからなぁ」
「氏政爺さんは決めたんでしょ?なら、私には何も言えない……。」

医療職を目指す者として、この発言はいけないことだろうか?

「私、前言撤回はしないかんね。」
「ha?何がだ?」
「言ったじゃん。天下とれよ伊達政宗ぇ!って。」

場所が風呂場だったという事には決して触れないようにしようとしたが、やはり思い出してしまう。
おそらく今顔は思いっきり赤いだろう。

「え、えっと、政宗さんに助けられたから応援したわけじゃない。政宗さんが必要だと思うなら、するといい。まだそんなに会ってから時間は経ってないけど、政宗さんにはしっかりとした芯が1本通ってる人だってことくらいは分かったよ。自己利益の為とかで動く人じゃないって、そのくらいは、分かったよ。」
「……本当にてめぇはベラベラと……。」
「伝えたいんだもん。知っていてほしい。」
「誰に向かって言ってるんだか。そんなもん、初対面で分かれ。」
「ええ?じゃあ政宗さんは、私との初対面で私の何が分かった?」
「遊び甲斐がありそうな奴だってことか?」
「えー……それは無いよー……。」

政宗の口元が上がる。
はとっさに身構えてしまった。

けど何をされるでもなく

「OK、coolな奴は好きだぜ……。」

乙女ならば照れるべきなのかもしれない。

でもこれは人間としての好きでしょ?

異性としての好きを言われるより嬉しかった。

「ありがとう。」

素直にお礼を言い、笑顔を向けた。











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最後どうなんでしょう
管理人は女として好きと言われるより1人の人間としての中身を好きといわれるほうがぐっと来ます
愛より絆という言葉が好きです