「は、恥ずかしいところを見せてしまいましたな……。」
「んーん。かっこ良かったよ。」

先ほどまで信玄様に未来はどういうところかと質問され、興味ありそうな政治について判る範囲で話していた。
佐助はまだ仕事があると出て行き、信玄は寝床につくというので、幸村の部屋にお邪魔してお茶を頂いてくつろいでいた。
部屋に戻るのは、まだ戦の話をしていそうなので嫌だった。


殿の住む未来は平和なのだな……。」
「ん~、世界を見れば戦争や紛争はあるけどね。犯罪だってあるし、いろんな問題があるけどね……。」
「それでも殿は幸せそうでござる。」
「え?マジで?能天気じゃなくて?」
「そうとも言うかもしれぬな!」
「ゆ……幸村さん……言うじゃないか‼」
楽しそうに笑いながらそう言われては、悪い気はしないのだが。

「幸村さんだって幸せそうだよ。」
「うむ、某は幸せでござる。お館様に仕えることが出来て……。」

幸村が天井を見上げる。
少し沈黙の時間が流れる。


「……明日、無事帰れると良いでござるな」
「……うん。」
「この真田幸村、殿のこと忘れぬでござる。」
「ありがとう!私も幸村さんのこと忘れないよ!……って言っといて帰れなかったら笑えるな……。」
「暗くなってはいけないでござるよ!」
「お、おお!」
「それに、今日はもう寝た方が良いでござる。」
「うん、じゃあまた明日ね。明日はよろしくお願いします。」
「うむ!」

とてもゆっくり過ごしてしまったので、さすがに政宗たちの話し合いももう終わっただろう。
幸村にお礼を言い、立ち上がった。









襖が閉まり、が去っていった。

「だーんな―」

カタリと天井の板が外される。

「佐助。」
「居るの知ってたでしょう?」
「うむ……。」

スタッっと畳の上に佐助が降り立つ。

「こんな時間に女の子とふたりきりなんて破廉恥~じゃないの?」

にやにやしながら腕を組む佐助に、幸村はあぐらをかきながら口をとがらせて答える。

殿は某の妹のようでござる!」
「……ちゃんに聞いたら旦那は自分の弟だって言いそうだけどね……。」
「な、なんと!?」
譲れぬぞ!と気合いを入れる幸村が可笑しくて笑ってしまう。
佐助にとっては団栗の背比べすぎる。

「明日、どうなるかねえ?」
「きっと、大丈夫。何かは動く。」
「そうだねえ……。」










暗い気持ちでいてもしょうがないな、と、幸村と話していて思った。
明るく振舞おうと気合を入れ、ばん!と襖をあける。

「政宗さん!小十郎さん!おやすみまん!」

あ、いけね、それオムツの商品名だ。

「……なかなか斬新な挨拶だなぁ……おぉ、早く寝ようぜ。」

「あのう」

一つの部屋に布団がみっつ。

両サイドの布団には政宗さんと小十郎さんが座っていて

幸村さんはさっきの部屋で

佐助さんは天井裏あたりで

「真ん中に信玄様でも来るの?」
「……やだよ、むさ苦しい。」
、ここは嫌か?」

小十郎が中央の布団をぽんぽんと叩く。

……ということは……

「私、そこ?」
「ばらばらで寝るのはちと不安だからな。」

信玄公とはいえ、敵地だし、家臣が勝手な行動する可能性だってある。

政宗さんと小十郎さんはやられることはないと思うんだが……

……私のために?


「ひえぇぇぇ!小十郎父さんと政宗母さんだ!」
「なんで俺が母親だ!?」
「……料理するからですかね?」

川の字で寝るとは照れくさいが、心配してくれるのが嬉しい。
真ん中の布団にさっそく横になり、まだ布団の上であぐらをしている二人におやすみなさいと声をかけた。


異変が起きたのは、深夜だった。


「政宗さ、ん……。痛いよ……。」
、我慢してくれ……政宗様は、稀にそうなるんだ。」
「で、でも、小十郎さ……ひゃっ‼」
がびくっと一瞬、体を震わせる。

「政宗さん!お願いだから眠らせて……!」
「仕方ない。、俺が代わろう。」
「そ……そんな……。でもそしたら小十郎さんが……。」



元凶となっている政宗はというと




「……すぅすぅ。」
爆睡していた。

「……いっ……てぇってば!もー!何でこんなに寝相悪いの!?」
!!政宗様が起きる!」

先ほどからずっとげしげしと蹴られていた。
何度か小十郎と協力して、起こさないように体勢を戻して布団をかけるが、引っぺがして横のに向けて脚を投げ出す。

「ちょ……あの、顔の方近づけられてドキ!!とか無いんですか!?」
「政宗様にそのようなことを期待するのか?」
「無理そうですかね!?」










日の光が部屋に差し込み、外からコケーっと鶏の鳴き声が聞こえる。
「……。」

「おふぁようございまふ……ましゃむねさん……。」
「政宗様、おはようございます……。」


と小十郎がげっそりしている。

「……おい、寝てねぇのかおまえ等。」
「寝ましたよ?……少しは。」

何かあったのか?といったように問いかけるが返答はそれだけで、小十郎が視線を合わせない。

は黙って背を向けたままだ。


まさか
……まさか

「小十郎!!まさかお前ら俺が寝た後で」

「……なんでしょうか?」

ゆらりとが振り返る。

背後に修羅が見えた。


「……何でもねぇ。」


小十郎に何事か聞いた後、

悪かった、と、大人しく二人に謝罪した。

















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真夜中に書いた話