「……。」
髪を手櫛で整えながら部屋に戻ると

寝そべって携帯電話をいじる幸村さんと

壁により掛かって座って、長い足を組んでiPodを聞く佐助さんがいた。

見たことあります私が住んでる時代で。

こんな格好の若者たち。

馴染みすぎですけど。


殿、良い香りがしますな。」

むくりと顔を起こして幸村さんが言った。

「石鹸の香りだよ」
「……石鹸てシャボン玉に……。」
いつの間にやらiPodをしまっている佐助さんにそう問われるが、すでに学習済みだ。

「体の汚れを落としてくれるんだよ。泡立てて、体を擦って、垢を落とすの。」
「へぇーそうなんだ。良いこと聞いた。」

お館様にもお教えしたい!と幸村さんがそわそわしだした。
明日になれば言えるから大人しくしなさい、と佐助がなだめる。
親子のようだと感じてしまっても仕方がないだろう。










「政宗様、如何いたしましたか?」
「……のぼせた。」

政宗は廊下に寝そべったまま動かない。
煙管も吸わずにずっと。

「大丈夫ですか?」

小十郎がぱたぱたと小さい扇であおぐ。

「人の気も知らねぇであのやろ……。」

と風呂に入るのが平気だった訳じゃなかった。
ただ武田の奴らが一緒だなんて、風呂場以外で邪魔されずに話せる場が思いつかなかった。
さすがに覗くような真似はしないだろうから。

特に猿飛佐助……。
命令が無くともどこに潜んで情報収集し出すかわかりゃしねぇからな……。


「伝えたいこと伝えましたか?」
「……。」
「政宗様?」
「ah〜……。言ったつもりだ……が……。」

何か足りねぇ気がする。

何かが喉につっかえてる。

「まぁ……満足だぜ俺は。」

「そうですか。」

政宗の視界の隅で、小十郎が微かに笑う。

「んだよ。」
「いいえ、お疲れ様でした。」
「本当にお疲れだぜ……。俺今日はもう仕事しねぇぞ!」

机に乗っている、今日追加されたであろう書類を見てげんなりした顔になる。

「承知しております。」

小言を言わず、穏やかなまま小十郎は返事をする。
それを確認した政宗は、むくりと起き上がり、四つ足歩行をして布団に向かう。

「明日の朝餉はいかがいたしますか?」
「もう言ってある。」

本当に食に関してはしっかりしていると、小十郎は感心してしまう。

政宗は布団にたどり着くとそのまま潜り込んですぐに眠りについた。
寝顔を見ながら小十郎はため息をついた。

「気付かなかったか……。政宗様」

あんなに

あんなに政宗様はといると良い顔をなさっていたのに。

恋でなくとも、一緒に居たい、位は感じてるのではないかと思ったが。

未知なるものとの出会いという好奇の視線だけでなく、遠慮なく接してくる彼女への居心地の良さが。

「仕方の無いお方だ…別れの言葉を口にしたんですか…?」


別れの時に気付いてしまうかも知れない。

もしそうなったら政宗様はどうするのだろう?

欲に素直な方だから、でもにはの生活があるから……

「……痒い」
……こういうのは苦手だ。











街に連れて行ってもらえて、久々に歩き回って疲れてたようだ。
出ていく武田主従を見送って、一人になるとどっと疲労が押し寄せる。
布団に入って瞼を閉じる。


ごろ


「……?」

ごろごろ

「なに……?」

ごろごろごろごろ

隣の部屋は

「……何してんの幸村さん」
殿……。」

立ち上がって襖を開けて隣の部屋を覗けば畳の上をごろごろする幸村さん……。
眠れないのですか……?


「枕が変わると……なかなか……。」

幸村が上半身を起こして胡坐をかく。気づかれていたとは思わなかったのか、少し恥ずかしそうにしながら。

「……じゃあ一緒に寝よう……。人肌は……落ち着くと聞く……。」
「なぬ?」

ほとんどうわ言のようには呟く。
瞼が今にも閉じそうだ。

「いや、しかし……。」
「……真田幸村ァ」
殿!?政宗殿に似てきてますぞ!?」

よろよろと、頼りない足取りでが幸村に近づいた。
眠りを妨げられ、不機嫌なには逆らわない方が良いと幸村の本能が警告を鳴らす。


しかし、殿はほとんど意識がないのでは……!
いやそれ以前に一緒に寝るなど不謹慎なっ……!

悩みに悩んでいたらが布団に潜り込んでくる。


「なっ……!!」
顔が赤くなる。
叫び出したくなる。
だが

すうすうと寝息をたてて幸せそうに眠るを起こすのは……!


「うぅ……。」

こんな時に佐助はどこに行っているのだ!?

やはり某は畳の上で寝よう。

一緒になど寝れぬ……!!


そう思って布団から出ようとして気付く。

「……殿ぉ……。」

幸村の着物の袖をが掴んでいた。


殿は某を殺す気でござるか!?

いや、しかし殿は眠れぬ某のために添い寝してくださって……

そそそそ添い寝!

なんて破廉恥!



しかし実際はというと、それほど性的なものは感じていなかった。
に魅力がないわけではない。
あまりに純粋だから。

「……し、失礼するっ……!!殿……。」

心臓がばくばくするが、隣で寝てみる。
いい匂いがして、暖かい。
触れたい衝動に駆られて、思わず腕を回す。

……華奢でござる……

乱暴にすれば壊れてしまいそうな不安定感。
でもそれ以上に

「柔らかいでござるな……。」

客観的に見たら破廉恥極まり無い。

でも、今はそんなことどうだっていい。

目の前の温もりが、愛しく感じて仕方なかった。

「……我ら武人とはやはり体のつくりが違うな……。弱き者は守るべき対象でござる……女、子供ならなおさら……。某、再確認致した……。」


感じ方のベクトルは大きくずれていたが。
















■■■■■■■■
展開早いな!
ごめんねっっ!!