え、マジで?
戦国時代って一日二食なの?
腹ぐぅぐぅ鳴って仕方ないんですけど。
「……へぇ、そんな違いもあるのか。どんな利があるんだ?」
「……利?ああ、やっぱり健康には一日三食ってことで。脳を動かすのってかなりブドウ糖を使うのよ。ブドウ糖って栄養ね。それに、えと、朝ご飯は血糖値をあげるでしょ、昼は日中の活動のエネルギーになって……夜は寝てる間に成長ホルモンが出るし……これじゃわかんないか、ええと……。」
「あぁ、聞いた俺が馬鹿だった。単語がわからねぇよ。説明しろよ。小十郎、文出来た。」
「了解しました。至急届けさせます。」
「私、退室します?」
暇になってしまい政宗の部屋を訪れると、仕事をしながらも雑談の相手をしてくれた。
器用だなあと思いつつも、仕事が終わってから話をした方が良いのではと感じてしまう。
「相手してやれなくて悪いな。城の内部はだいたい判ったか?」
「えぇ、大体は」
「ならこれ終わったら城下案内してやる。これは絶対俺が案内する。いいな!?誰かに誘われても断れよ!?明日になるかも明後日になるかもわからねぇが」
……なんの意地だ。
しかし殿自らが率先して案内したいと言ってくれるなど嬉しくて仕方がない。
「うん!楽しみにしてます!私、女中さんの手伝いしてきますね!タダ飯も悪いですし!」
「おぉ。」
政宗は一人になって開け放たれた障子に目を留めた。
空は晴れ渡り、部屋に入る風は少し冷たい。
秋になったのだと感じ、頬杖をついて静かに想像する。
「―……栗拾いも良いかもなぁ」
馬に乗って山まで行って、毬栗を投げつけていじめてやろうか。
毛虫が多くいるところに行き、助けて政宗さんとすがりつくを見るのも良いかもしれない。
「未来……未来か。おもしれえ。どんな女なんだよ、はよ……。」
まぁ、その前に城下だ。
朝もらったお菓子のchocolateとやらは甘かったから甘いものは好きなのだろう。
城下に行ったら団子を食わせてやろう。
金平糖も買ってこようか。
そう思っていたら、ふと、今の自分の感情にぴったり合う言葉が脳裏に浮かび、ククッと小さく笑った。
「……petの世話するご主人様、だな」
こんなこと言ったら、はどんな反応をするだろうか。
「仲良くしてやるよ。お前は俺に何をもたらしてくれるんだよ……。」
また笑ってしまう。
自分は戦況を読む才はある。
その人間の本質を見抜く能力だってあるつもりだ。
この出会いの先は見えない。
それが楽しみでどうしようもないのだ。
洗濯物を片づけるお手伝いをすることになった。
褌に触るのは少し抵抗があったが、お世話になる身分でそれは申し訳ない。
丁寧に取り込み、縁側へ運ぶ作業を繰り返した。
……たまに変な刺繍が入った着物があったりしたが、気にしないこととした。
もうすぐ終わるというところで、庭先から いってぇ! という声が聞こえた気がした。
兵がいるのだしそんなことは日常茶飯事なのかもしれないとも思ったが、気になってしまい篠に断りを入れて、その方角へ歩いていった。
「ばか!何してんだよ!!」
「るせぇよ!てめーが言い出したんだろ!……やべぇ……痛ぇ……。」
鍛錬場のようなところに出ると、二人の人影があった。
「どうし……?」
真っ赤な血が見えて、の言葉が途切れる。
一人が下腿を押さえてうずくまり、もう一人はおろおろしていた。
二人の足下には刀がばらばら落ちていてそれで斬ってしまったことは一目瞭然だったが。
「どうしたんですか大丈夫ですか!?」
「切っちまって……筆頭のマネなんかしたから……!」
切った後に転びでもしたのか、傷口が随分汚れている。
「あなた!おろおろしない!あれ井戸よね?水持ってきて!」
「あ……あぁ……!」
「あなたは寝て!」
「おお…」
足に触れると抵抗しようと男が手を伸ばしたが思い切り睨んで問答無用で袴をまくり上げ、彼の怪我した足を自分の膝に乗せて浮かせた。
止血をする前に、心の中で呟く。
ごめんなさい、政宗さん。
落ちてた刀を気をつけて使い、着物の袖に切れ目をいれ、びりっとやぶった。
「水持ってきた!」
「早いですね、Thank you!じゃ、医者居る?連れてくから、呼んで下さい!!」
英語を発したところで、井戸水を持ってきた男は少し驚いているようだった。
政宗の影響で浸透してるものなのかと思っていたがそうでもないらしい。
いけなかったかな、と一瞬眉を顰めるが、その眼差しはすぐに憧れのような、尊敬のような輝きを発し始める。
「判った!」
素直に言う事を聞いてくれて、走り出す。
良かったと安心し、傷口を改めて見る。
少し知識のある場面で役に立てなければ、小十郎に認めてもらうなど到底無理だろう。
「傷口洗うよ〜。」
水がかかった瞬間、彼の足がびくっと一度反応した。
「大丈夫だから!死にそうな顔してんじゃないわよ!」
汚れを落としたら布を傷口に当てて、圧迫止血を試みるが、止まらない。
着物をさらに裂いて大腿部に止血帯を行う。
「すまねぇ……女に助けてもらうなんて……!」
「……やっぱこの時代は女性の身分は低いの?男も女も差別反対!」
感じていたことではあったが、気づかないようにしてた。
改革したいなどというつもりは無いが、一人の人間としてみて欲しいと思ってしまうのは当然だろう。
男が上半身を起こし、の姿を見る。
「あんた……着物……汚れてるぜ?」
「まぁね!」
「……ありがとな」
「いいえ!」
突然、目の前が陰った。
上を見るとこんな状況にも関わらず男性がにこにこと人懐こそうな笑みを浮かべ、腰を曲げてのぞき込んで居た。
「なにしてんのぉ?」
「あっ……成実様!」
「なにって……止血……。」
成実様って誰……?
日本史最低限の知識しかなくてすいません……。
「へぇ、見ない顔だね。新入り?」
「あの……?」
「おっと、失礼。いつまでここにいるの?怪我人だ。屋敷まで運ぼうか?うん、手伝うよ!」
「そんな、成実様……!」
先程まで痛みと戦うので精一杯だった男が手と首をぶんぶん振って遠慮している。
……偉い人だという事は判った。
「ちょっと、こんなか弱い女の子がここまでしてんだよ?俺が傍観しててどうするよ?」
成実と呼ばれた人の両手が伸びてきて、の襟の合わせ目を直す仕草をした。
えっ!?まさか見えてなかったよね!?
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応急処置・・・
着物じゃダメかしら・・・
おそるおそる書く・・・
成実は短髪可愛い系男の子を 妄想 しちゃったよ!!