伊達軍強化の為、新たに兵を募ると多くの志願者が現れた。
それに喜びを感じるだったが、政宗と小十郎は、厳しい訓練に何人耐えられるか分からないとシビアな考えを持っていた。

「…そうか…難しいですね…」
「やる気は十分に御座います故、今この冬のうちに伊達の流儀を叩きこみたく思います。」
「小十郎に任せるぜ。俺は呑気に歓迎partyの準備でもするかねえ…」

庭は今朝から降り出した雪で白く染まり、最初ははしゃいでいた家臣達も城内で大人しくしている。

「……静かだねえ…」
「冬ですので。」

真田幸村の暑苦しい決闘の申込も春になったら宜しくお願い致しまする!という文で途切れている。

「…なんかこう…派手なpartyにしてえんだが…なんかねえかな…」

小十郎がに耳打ちをする。
「…暴れたりないのだな…」
も小十郎の耳にぼそぼそと話し掛ける。
「出陣も無いですしねぇ…この前は道場で若い家臣相手に柔道してぶん投げてましたし…」
「政宗様に投げられるのなら兵も本望だろう…」
「そ、そうですか…」
「??おい、何こそこそ話してんだよ。何か案があったら言え。」

とりあえず政宗の柔道の相手は兵士にとってご褒美でしかないなんてことは伝えられなかったので、黙って腕を組んで考える。

「歓迎パーティーってことでいいの?」
「ああ。」
「じゃあ私が中学校でやったやつでいいんじゃ…」
「…?ちゅう…?なんだって?」
「うん!任せて!!」

が笑顔で立ち上がり、すぐさま廊下を走っていってしまう。
双竜は大人しく見送り、彼女が何をしようとしているのか予測する。

「…厄介ごとに20両。」
「では小十郎は良きものに50両賭けましょう。」











数日後、中庭の雪が綺麗に無くなり、木片で四角い囲いが作られた。
家臣も皆集まり、食事が廊下に並べられる。
政宗はから、木片の前で挨拶をしてくれとだけ言われていた。

「挨拶っていってもなあ…」

がしがしと頭を掻きながら前に出るが、それだけで家臣は皆大興奮であった。

「筆頭――――――――!!!!!!!!!!!」
「どこまでもついていきます!!!!!!!!!!!!!!!」
その叫びに政宗もニヤリと口の端を上げ、大声で叫ぶ。

「Are you ready,guys!?」
「イエ―――――――――!!!!」

気が付くとも楽しそうに家臣の輪の中に入っているのが見えた。
背伸びをして大きく手を上げて存在を主張しているのが可愛らしい。

「新入りも、お馴染みの奴らも!!全員可愛がってやるから覚悟しろよ!!!!!!!!!」
「筆頭――――――――!!!!!」
「Partyの始まりだ!!!!!!!!!!!!」

そこまで言ったところで、が飛び跳ねて指ぱっちんを繰り返している。
隣にいる小十郎も笑いながら指を鳴らす真似をしているので、やれという事だろうか。

「いくぜえええええ!!!!!!!!!」

何が起こるかさっぱりわからないのに派手に盛り上げていいのか分からなかったが、こういうノリでは仕方がない。
大きく手をあげて、パチン、と指を鳴らせた。

すると背後の木片から

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!
「うおおおおおお!!?」

爆発音とともに火柱が立った。

政宗は爆風で飛ばされたが、持ち前の運動能力で上手く着地する。

「………。」
「成功成功!!さすが政宗さん!!キャンプファイヤー!!!」
「親睦を深める意の炎か…そう考えると熱さとはまた違ったもんを感じるなあ…」

横で小十郎とはのんびりと会話をしていた。

「…今のなんだ…?」
「松永さんに指ぱっちん爆破のトリックを教えて頂いて適用してみました。」
「あれトリックあったのか!!というかお前仲良しなのか!?仲良しになってるのか!?」
「まあまあ政宗様…皆は政宗様が用意して下さった演出と考えているのか…盛り上がってますよ。」

小十郎が指さす方向を見ると、確かに火を囲んで兵たちが酒を酌み交わしている。
新入りが注いだかと思えば古参の者が注ぎ返したりと良い雰囲気だ。

「後は任せて!!ザビーさんのところから蓄音機借りてきた!」
…」
「なんか今は大友さんって人がトップだったけど、まあザビーさんの知り合いってことで手厚く歓迎を受けて…」

歓迎を受けた後どうなったのかはの口から出なかったが、随分と顔が広くなったものだと感心する。

「…主に変態の知り合いが多いな。」
の人望は変態に厚いのか…。」
政宗と小十郎は複雑な心境だ。

「こうして…こうすると…?」
ぶつぶつ呟きながら蓄音機を弄り、手を離すと音が流れる。

チャーラチャララチャーララララ ラララ―ララーララー…

何の曲だ?と首を傾げる政宗に、マイムマイム!!とは答えてすぐに家臣の輪の中へ走っていく。

「マイムマイムって言われても答えになってねえー…」
小十郎が酒を持ってきて政宗に一口ほど注ぐ。

「政宗様に酒を注ぎたい者が沢山居ますので、本日は頑張ってくださいね。」
「そんなに酒弱くねえよ…」

廊下の座布団に坐して、皆の様子を見渡す。

は家臣と手を繋いで、賑やかに踊りを踊っていた。

「マイムマイムとはあの踊りだそうですよ。きゃんぷふぁいやー、では定番だそうです。」
「ふーん…」

筆頭、と呼ばれ振り向くと、家臣が列を成していた。
盃を向け、酒を注ぎ、一気に飲み干し一言声を掛ける、その行為の繰り返しを行う。
小十郎に駆け寄ってくる者も多くいた。



が踊り疲れて政宗たちの元に戻るころには、家臣の挨拶ももう少しで終わるところまできていた。

「楽しい楽しい!!」
はあはあと息を上げるには、女中がお茶を差し出した。
ありがとう、と笑顔で受け取る。

「皆一回しか練習してないのに上手だな!」
「むしろ練習したのかよ?」

政宗が問うと、にっこりと笑顔を向けられる。
「うん、でも古参の方だけ!新入りさんにはこの場で踊りを教えるの!!」
「なるほどなあ、通りですげえ騒いで盛り上がってるわけだ。」

こうやるんだよ!こうですか?俺にも教えてください!などという声が沢山聞こえて、話のネタには事欠かないようだった。

徐々に火の勢いが衰えている。
もうすぐ宴も終わりが近づいていることを教えてくれる。

「…終わったら部屋で暖とろうぜ…」
「そうですね。雲が厚くなっててまた雪が降りそう。今日じゃなくてよかった…」

が、コト、と小さな音を立てて湯飲みを置いたのを視界の端にとらえ、そっとその手を握る。

「…?政宗さん?」
「冷てェ…」
「う、うん、冷たいから触れない方が…」
「いや…」

両手で包み込んで、はあ、と息をかけて温める。

「ありがとう政宗さん、へへ、なんか照れくさいけど暖かい。」
「そっちの手も出せよ。」
「お願いします。」

今度はの両手を握って息をかけ、握る。

「…あ、蓄音機…止まっちゃった…」

音楽が終わったため、家臣も踊りを止め、イエ―!!と言いあいながら皆でハイタッチをしている。

「とりあえず一区切りだな。飲み足りねえ奴らは各々集まるだろうよ。」
「うん、じゃあ私片づけしてくるね!!」

政宗が手を離すと、タタタと囲いに近づき、集めて用意していた雪をかけて僅かに残っていた火を消す。


「…政宗様…」
「何だよ小十郎。」
「何か気に入らない様でしたのは、が踊りの最中家臣と手を繋ぐのに嫉妬でしたか…」
「……」

自分のもののように扱う光景を見て、小十郎はそう判断したらしい。

「う、うるせえ…」

そして反論できない政宗であった。

「ということで50両」「では20両下さいませ」

同時に催促の手を出した双竜は互いに目を見合わせた。














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伊達軍で「マイムマイム」戦のない冬、皆で輪になって踊ってみようというお題とほのぼのというお題頂きましたのでまとめさせて頂きましたほのぼの?
リクありがとうございましたー!!!!