は小太郎におんぶしてもらい、南へ向かった。

「最初は島津さんだね!!何がいいかな?」
「……」

小太郎は近くの町に降りることにした。

「小太郎ちゃん?」
「……」
懐から先ほどがっつり稼いだお金が入った袋を取り出した。
そして酒屋を指差した。

「使って買っていいの?」
こくこく
「小太郎ちゃん…お金…私のために稼いでいてくれたんだね…!!」
「…………」
とくにそういうわけでも無いが、とりあえず小太郎は頷くことにした。

「そうだね…!!島津さん、何が欲しいか判んないしね…!!聞いて探す時間はないし、買って行っちゃお!!無難でいいよね!!お酒、何がいいかな…?あ、でも元親も元就さんもお酒好きそうだし、一緒でいいか!!」
こくり

小太郎に酒は選んでもらい、また南へ向かった。









と小太郎は到着するとすぐに島津の寝室の前に忍び込んだ。
「小太郎ちゃん、サンタさんってのは、こっそり贈り物するの。お礼が欲しいとかじゃないの。贈り物貰った人が笑ってくれることを望むんだよ。」
こくこく

そんなことは言わなくても小太郎は物音を立てないだろうとは思うが、念のために言ってみた。

「…………」
はよし、行こう!!と言おうと思い、いびきをかく島津を見つめたが

「……よし、小太郎ちゃん、ゴー!!」
自分が行ったら気配を察知されそうで、怖くて、小太郎に頼る事にした。

小太郎が消え、姿を現すことなく酒を枕元に置き、すぐに戻ってきた。

「すごーい!!透明人間みたいだった!!」
は小さく拍手をした。
小太郎はこんなの当然!!というように胸を張った。


すぐに外に出て、次向かう場所を決めようとすると、歌声が聞こえてきた。

「♪ザビザビザビザビ〜今日は〜ザビーの日だよ〜」
「ザビーだ!!」
「おや?レディ何してるの〜?」

ザビーはサンタの格好をして、大きな白い袋を担いでいた。

「ザビーもサンタさん?」
「ザビーがサンタさんだよ〜?アレ?もしかしてレディもサンタさんやってるの〜?」
「うん!!」
「それはイイね!!サンタさんはいっぱいのほうが、幸せになれる人いっぱいネ!!」

ザビーはの頭を撫でてくれた。

「島津さんにはお酒渡したよ!!」
「じゃあザビー、北に行かなきゃ?」
「元就さんと元親にも…用意してきちゃった…」
「じゃあモチョット北に行くネ!!それじゃ…」
ザビーはごそごそと袋の中を漁った。

「これ、アゲルよ」
ザビーは赤い三角帽子をに被せてくれた。

「ありがとう」
「頑張るネ!!」

ザビーは今度は、今川〜本願寺〜潰すネ〜と歌いながら行ってしまった。

「…潰す気だね…」
「……」
まあいいか…と小太郎とは元親のところへ行く事にした。







停泊している船の明りは消えることなく、中では宴会をする陽気な声が聞こえていた。

「寝るまで待てないねぇー…」
こくり

仕方なく、堂々と入ることにした。









小太郎と一緒に忍び込むと、元親は家臣と一緒に飲んでいた。

「今日は大漁だったなぁ〜!!ははは!!どうしたもっと飲め〜!!」
完全に酔っていた。

「アニキ〜!!そんな勢いじゃすぐ酒無くなっちまうよ〜!!」

「「……」」
一本じゃ足りなかったかな…とは落ちこんだ。

「…」
小太郎は立上がり、ズカズカと元親に迫っていった。
「あ…小太郎ちゃ…」
「あ!!アニキ…!!侵入者…!!」
「あん?お前…」

元親に近付くと、べシイ!!と小太郎が元親の頭を叩いた。

「な…なんだよ!!」
「……」
「小太郎ちゃん!!」
は慌てて小太郎を止めに入った。

「!!…!!どうした!?なんだその帽子…!?か、可愛いな…!!」
「あ…あの…元親…、今日はこれあげようと思ったんだけど…」

は一升瓶を重そうに運んだ。

…!!」
「足りないか…」
「足りる!!十分だ!!!ありがとな!!」

元親はに駆け寄って、酒を受け取った。

に会えるとは思わなかった…!!嬉しいぜ…!!…!!」
「わっ…!!」
元親は酒を家臣に渡して、ぎゅっとを抱き締めた。

後ろで小太郎が元親の後頭部をペシペシ休むこと無く叩いていた。










元就は部屋で政務を行っていた。

「…誰だ」
「あ、あははは〜…」
元就はすぐにの気配に気付いた。

「忍も一緒に…どうした?」
「サンタクロースです」
「サンタクロース…あぁ…ザビーに聞いたことがあるな…」

はまた一升瓶を運んだ。

「プレゼント、か」
「はい!!」
「……」

元就は酒をじっと見つめた。

「しばし待っていろ」
「はい?」

酒を持って、元就はどこかへ行ってしまった。

「待ってようね、小太郎ちゃん」
こくり

キョロキョロと部屋を見回した。

「元就さん…この部屋にいつも一人でいるのかな…」
「…?」
さぁ?と小太郎は首を傾げた。

襖が開き、元就が戻って来た。

「あれ?」
「こういうのも良かろう」
元就は徳利とお猪口を3人分持ってきた。

「さっきの…?」
「付き合え」
「は、はい!!」

お猪口を受け取ると、元就はお酒を注いでくれた。

「ありがとうございます」
「…ふん」
小太郎は自分で酒を注いで勢い良く飲んでいた。
どうやら自分の好きな酒を選んでいた様だ。

「政務のお邪魔ではなかったですか?」
「…急ぐものではない」
「そうですか…よかった」

今日の元就は雰囲気が柔らかい。

「…」
はなんだか、元就が自分に甘えているようにも思えて嬉しかった。

ずっと一人でいて、少し寂しかったんじゃないかとも思った。

「なかなか美味いではないか…」
「小太郎ちゃんが選んでくれたんです」
「そうか…」
表情は変わらないが、元就は嬉しそうだ。

「へへ…」
「なんだ」
「何でもないです」
はにこにこ笑った。

「サンタクロースは…皆に配らねばならぬのだろう?」
「はい」
「ならば飲み過ぎるな」
「うん!!ありがとう、元就さん!!」
「……」

もうそろそろ行かないと間に合わないと思った小太郎は、お猪口を置いての肩を叩いた。

「元就さん、じゃあ…ありがとうございました」
「気をつけて行け。男の部屋に忍び込むのだろう…?夜這いと勘違いされぬようにな」
「う、あ、はい…」
そのようには考えていなかったので、は少し恥ずかしくなった。

「心配してくださりありがとうございます…」
「別に…思ったことを言っただけだ…」

それでも、と、はペコリと頭を下げて、消えていった。

「…また、来い」
元就は呟いた。














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サンタさんはむしろ今川じゃないかって!?
いやその…ザビーが…好きなんだ…!!